光の速さに近い高速で走る電子が磁場などの力を受けて急激に進行方向を変えられるとき、電子の運動エネルギーの一部が光となって放出される。この光を放射光と呼ぶ。放射光は赤外線、可視光、紫外線、さらにはX線までのすべての波長の光を含むとても強力な光である。 電子ストーレジリングは、放射光を発生するために電子の軌道を曲げる働きのある偏向電磁石を、ほぼ円形のリング状に配置したものである。電磁石の中心部には真空ダクトがはめ込まれ、大気を構成している気体分子と周回する電子とが衝突することなしにリングを多数回回れるようになっている。放射光を放出した電子はエネルギーを失うので、周回路に置かれた高周波加速空洞でエネルギーを補給する。 放射光科学研究施設では、25億電子ボルトに加速された電子を電子ストーレジリング(PFリング)に貯蔵し、その電子から放出される放射光を取り出して、物質に照射してその性質を調べている。放射光の強さは、定められた拡がりの中に含まれる光子数で評価されている。 エミッタンス(ビームサイズとビーム拡がりの積に比例)の小さい、輝度の高い光源を目指して、電子ストーレジリング(PFリング)も エミッタンスを従来の値の1/4に改善して対応している。 さらに、強力な永久磁石を並べてリングに入れて放射光を発生させる装置(挿入光源)も用いており、挿入光源からの放射光は、偏向電磁石からの放射光よりもっと強力で光子数も多く、干渉性もある優れた性質を持っている。 その上、生物の筋肉の伸び縮みなどの様子や物質の時間変化を調べるために、ストロボのようにごく短い時間だけパルスX線放射光を発生できる電子ストーレジリング(PF-ARリング)を用意しようとしている。このようなパルスX線を発生できるリングは世界的にもめずらしいものである。 |
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