講演会・公開施設案内

1. 公開施設

 陽子加速器   陽子加速器、北カウンターホール  トリスタン   トリスタン加速器、富士実験室、筑波実験室  ブースター利用施設   中性子散乱実験施設、筑波大学陽子線医学利用研究センター  放射光実験施設   放射光光源棟、実験ホール、AR放射光実験棟、MR放射光ビームライン  センター   データ処理センター、放射線安全管理センター、工作センター、低温センター  アッセンブリホール   大強度陽子加速器試験装置、リニアコライダー試験装置  研究本館   Bファクトリー展示   特別講演「トリスタン−素粒子研究の最前線」   おもしろ物理教室「まさつ」  3号館   科学おもちゃ、屋上展望台

2. 特別講演 「トリスタン −素粒子研究の最前線−」

 電子と陽電子が高速で衝突すると、瞬間的にエネルギーの塊だけになって、 そこから粒子と反粒子が対になって発生します。トリスタンでは、このプロセスを数多 く発生させ、でてきた粒子の振る舞いが詳しく観測されてきました。実験がどのように 行われてきたのか、どのような結果が得られたのかについて紹介します。   講師: 阿部 和雄 (物理研究部物理第一研究系教授)   場所: 研究本館   時間: 13:30〜14:30

3. おもしろ物理教室 「まさつ」

 まさつの原因は何だろうか? 身近な物理現象である「まさつ」の実験を行い、 固体と表面の科学の初歩を学びます。対象は中学生以上です。   講師: 波戸 芳仁 (放射線安全管理センター助手)   場所: 研究本館   時間: 10:00〜12:00

4. KEKB(Bファクトリー)

  場所: 研究本館  B中間子が解き明かす素粒子物理学の研究計画が、トリスタンIIとして昨年度からス タートしました。パネル展示とともに「B」に関する質問コーナーも開設します。

5. ビデオ放映

  場所: 研究本館   時間: 9:00〜12:00   ・ ミクロコスモス −加速器科学の最前線−   ・ 陽子線治療 −クォリティ・オブ・ライフの向上を目指して− (筑波大学)   ・ その他  高エネルギー物理学研究所では、どのような研究が展開されているか等、 研究所全体の概要を知るために最適な映画です。

6. 科学おもちゃ

  場所: 3号館1階  自分でおもちゃを動かして、楽しみながら物理を学べます。  (1) ケルビンの水滴発電機   電場中に置かれたノズルから出る水滴が、落下の瞬間に帯電することを利用して   発電する。  (2) スパークエレベーター   V字型に置かれた針金の間に高電圧をかけて、放電現象を起こし放電の様子を調べ   る。  (3) 落差トロン   高低差を利用して鉄球を転がし、加速器の原理を学ぶ。  (4) ゴマスリトロン   放物面内を左右に振って鉄球を転がして、鉄球がそれと同期して加速される様子を   調べる。  (5) ビー玉トランスポート   凹凸面にビー玉を転がして、荷電粒子(ビーム)が集束される様子を調べる。  (6) 回転テーブル   回転テーブルに乗って回転中に両手を縮めると回転が速くなること   (角運動量保存則)を体験する。  (7) プラズマランプ   減圧したガラス管内の電極に高電圧をかけ、内部で放電させて、発光の様子を調べ   る。  (8) 電磁カタパルト   コンデンサーに電気をためてスイッチを入れる。電磁石の瞬間の引力で鉄球が飛び   出す。  (9) ゴムエンジン   輪ゴムを熱すると縮む性質を利用して、輪ゴムで支持されたリングの片側をランプ   で加熱して回転させる。  (10) お湯エンジン   50℃で磁石がつかなくなる特殊なフェライトを配した円盤をお湯の中に置き、   永久磁石を近づけると、空気中のフェライトだけが引かれて回転する。  (11) 熱エンジン   ニッケルが約360℃以上で磁石につかなくなる性質を利用した回転機。  (12) ジョンソンエンジン   60℃で強い張力を発生する形状記憶合金のバネを利用した回転機。  (13) 超伝導コースター   (これだけは場所が違います:低温センター)

7. 製作コーナー 「ラジオを作ろう」

 見学者参加の工作コーナーです。ごく簡単な材料だけでゲルマニュウム・ラジオを 製作します。材料とテキストを用意し、製作開始前に分かり易く説明します。小学校 高学年以上を対象にしています。   場所: 3号館1階   時間: 10:00〜、 13:00〜、 14:30〜  定員: 毎回60人

8. 以下に、公開施設を建物別に紹介します。

8.1 陽子加速器  陽子シンクロトロンは、わが国に最初に建設された大型加速器として、1977年に 実験を開始して以来、高エネルギー物理学をはじめ、中性子、中間子ビームによる物質 科学、陽子線によるがんの治療など、広い分野の研究に利用されています。 8.2 北カウンターホール  陽子加速器で最大120億電子ボルトにまで加速された陽子は、「遅い取り出しビー ムライン」を通じて、2ヶ所の実験施設(東カウンターホールと北カウンターホール) に取り出されます。その陽子を金属標的(ターゲット)に衝突させると、π中間子・ K中間子・反陽子などの二次粒子が発生します。この二次粒子を水素や偏極陽子・ 原子核に衝突させて、素粒子の反応を調べます。 8.3 トリスタン加速器・トリスタン筑波実験室  トリスタン施設は、陽電子発生用線形加速器、25億電子ボルト電子・陽電子線形 加速器、入射蓄積リング、及び一周約 3 km のリング状の巨大加速器からなる複合加速 器システムです。高いエネルギーに加速された電子と、その反粒子である陽電子の正面 衝突で起こる超高エネルギー反応を利用して、物質の根元を探求することを目的として います。 8.4 トリスタン富士実験室  トリスタンでは、電子と陽電子を最高320億電子ボルトまで加速し正面衝突させ、 その時に生成された粒子を測定器で測ることによって、どのような素粒子反応が起きて いるのかを調べてきました。  この実験は、1987年に開始され、クォーク間の強い力の本質を初めて解明し、 Z粒子やニュートリノの種類についての新しいデータ、Z粒子と光子の間の強い干渉に よって起こる素粒子生成の現象など、重要な成果を上げました。実験は1995年度を もって終了しましたが、今も活発なデータ解析が行われています。 8.5 ブースター利用施設  物質(高温超伝導体や生体・高分子)の構造と物性を原子レベルで研究している 中性子散乱実験施設、ミュオン触媒核融合・物性物理・基礎物理を研究している中間子 科学研究センター(東京大学)、陽子線を用いたがん治療の臨床研究を進めている 陽電子線医学利用研究センター(筑波大学)から構成され、物理・科学・その他の広い 分野の研究を行っています。(今回は、中間子科学研究センターは公開しません。) 8.6 放射光実験施設光源棟  線形加速器からの25億電子ボルトの電子又は陽電子を貯蔵して、大強度の放射光を 安定に発生させるリングが設置されています。  実験ホールでは、その放射光を取り出して、物質科学、生命科学その他の広範な分野 の研究が行われています。全国の大学や研究所から多くの研究者が集まってきます。 又、外国からも安定した光を求めて実験に訪れるのもこの施設の特徴の一つです。  実験ホールは、見学ツアー方式で紹介いたします。 8.7 AR放射光実験棟  「より強力なシンクロトロン放射光を求めて」、トリスタン入射蓄積リング(Accu- mulation Ring)において新しい光源が開発され、特徴ある放射光−高輝度楕円偏光 X線・準単色X線−が生み出されました。それらを用いた、物質の磁気的特性を探る 磁気コンプトン散乱実験・円偏光顕微鏡の開発・メスバウアX線源の開発・心臓血管 診断システムの開発・高温高圧下での物質の構造解析などの研究が進められています。 8.8 MR放射光ビームライン  トリスタン物理実験に使われてきた主リング(MR)は、放射光利用リングとしては 周長が世界一であるところから、加速エネルギーを 8-10 GeV で運転すると、6-20 keV 領域で世界一輝度の高い放射光が得られます。MR超高輝度放射光計画推進室では、 放射光利用にMR軌道を最適化し、アンジュレーター光源・ビームライン・実験室を 整備してきました。今秋、MR立ち上げテストと放射光利用を行う予定で整備を行って います。利用研究テーマとしては、1ミクロンを切る極小ビームを作成し、ミクロ領域 の研究を行うこと、MR放射光を利用して次世代コヒーレント光利用の先鞭となる研究 を行うことを企画しています。 8.9 データ処理センター  高エネルギー物理学の研究は、国際的な競争と協力の下に行われており、実験データ 処理能力が良い成果を生む鍵となっています。データ処理センターにある計算機群は、 加速器や測定器の設計・建設・運転のための計算や、高エネルギー実験のデータ解析や 理論物理計算、ブースター利用実験、放射光利用実験などで活躍しています。又、整備 された計算機ネットワークにより日本国内はもとより世界各国の研究機関との国際協力 実験を支えています。 8.10 放射線安全管理センター  本研究所には、世界第一級の大型加速器を始め、様々な放射線施設が設置されていま す。これらの放射線施設を用いた研究業務の円滑な遂行にとって、放射線安全及び化学 安全の確保は最も重要な業務の一つです。センターでは、これらの安全管理業務を一元 的に担当するとともに、関連する技術の開発研究も行っています。 8.11 工作センター  工作センターでは、8基のCAD、数種のNCマシンを含む90基を越える工作機器 及び各種精密測定器を有し、本研究所が必要とする機器のうち、外部で調達・製造が困 難なもの、開発に時間を要するものなどを設計・製作することや、緊急に必要となった 部材を供給しています。 8.12 低温センター  低温センターは、3基のヘリウム液化機及び広大な所内の数カ所に設置されたヘリウ ムガス回収ステーションを主要設備とし、毎週3000リットルを越える液体ヘリウム の供給と回収及び精製を行っています。また、本研究所の超伝導応用及び低温工学の研 究において基礎的な役割を果たし、将来の加速器や物理実験に必要な超伝導機器や材料 の基礎研究も行われています。 8.13 アッセンブリホール  ここには、以下の二種類の新型加速器の試験装置があります。 8.13.1 大強度陽子加速器試験装置  「大型ハドロン計画」は、高エネルギー大強度陽子加速器を応用して、多様な科学分 野の新しい地平を切り開くことを目的とする、ビッグサイエンスでありながらもスモー ルサイエンスが中心であるというユニークな計画です。ここでは、陽子円形加速器の入 射器として使われる陽子線形加速器の開発が行われています。これは、平均ビーム電流 が従来の100倍以上を目指す大強度高エネルギー陽子線形加速器です。様々の新しい 技術を駆使して開発された加速エネルギーの変化に対応する3種類の加速空洞、その励 振用大電力高周波電源及び低エネルギー領域のビームテスト装置等を詳しく見学できま す。 8.13.2 リニアコライダー試験装置  クォークから宇宙へ! ここでは、衝突型電子・陽電子線形加速器(リニアコライ ダー)の開発研究を進めています。トリスタンで築いた電子ビーム加速技術を更に高度 に発展させ、直線型の加速器を用いることによりエネルギーを10倍以上、ビームどう しの衝突率を100倍以上に増強する意欲的な計画です。これが実現するとヒッグス粒 子をはじめ、宇宙誕生の謎に迫る研究をすることが可能となります。

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