宇宙の謎の解明
私達の身の回りにある物、そして私達自身をも形作る原子核、その種類は6000〜8000種類にも及ぶと言われています。その中で私達人類がこれまでに発見した原子核は3000種類程度、半分以上の原子核が未だ発見されておりません。さらに発見された原子核のうち、地球上に安定に存在するものはわずか300種類程度に過ぎず、存在し得る原子核の大部分が短時間で崩壊してしまう寿命を持った原子核なのです。私達の研究室では、これらの寿命の短い原子核、すなわち短寿命核の研究を行っております。
地球上に存在しない短寿命核を研究するためには、まず短寿命核を創らなくてはいけません。そして短寿命核はわずかな時間で崩壊してしまいますので、創ったらすぐに研究に用いる必要があります。高エネルギー加速器研究機構(KEK)では短寿命核を生成して実験するための施設を日本原子力研究所(JAERI)との共同研究で建設しています。
この施設は、タンデム型加速器、オンライン同位体分離装置、価数増倍用ECRイオン源、および短寿命核加速用線形加速器から構成されています。タンデム型加速器で安定核を加速し、標的となる原子核に衝突させます。原子核同士の反応により生成されるさまざまな原子核の中から研究の目的とする短寿命核をオンライン同位体分離装置により選び出します。この時取り出される短寿命核には電子がたくさんまとわりついており、原子に比べて電子が1個だけ少ない状態になっています。これを1価の陽イオンと呼びます。短寿命核を研究で用いる際には、それを再び加速して他の原子核にぶつけたり、物質の中に撃ち込んだりします。加速器は電気の力を利用して原子核を加速していますので、加速したい原子核の周りに電子があまり付いていない状態、つまり多価の陽イオンの方がより速く加速することができます。1価の陽イオンを多価の陽イオンに変換する装置が価数増倍用ECRイオン源です。この装置はプラズマを利用して1価の陽イオンから電子を剥ぎ取って多価の陽イオンにします。そしてこの多価の短寿命核を短寿命核加速用線形加速器によって加速して研究に用います。
→ 短寿命原子核実験(TRIAC)のwebページ (研究者向け情報も含まれています)