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last update: 15/05/15  
 機構長コラム
   
鈴木 厚人 機構長
2009.01.07

年頭挨拶

明けましておめでとうございます。
 
昨年は様々な出来事がありました。戸塚洋二前機構長のご逝去はとても悲しいニュースでした。一方、小林先生、益川先生、南部先生がノーベル賞を受賞されるという、とてもうれしいニュースもありました。今年はより地道に、しかし強固で堅実な歩みの年になることを期待します。
 
KEKにとって一番大切なことは、将来計画のロードマップを実施に移すことです。なかでも、J-PARCがいよいよ完成目前となり、一部ではすでに利用が開始されました。KEKB加速器の増強も緊急の課題です。将来計画を実現するためには、KEKの運営基盤をよりしっかりしたものにする必要があります。
 
そのためにKEKが取り組むべき課題には、二つの側面があります。
一つは、国内的な観点として、国立大学や共同利用機関に課せられた基本的事業の実施。二つめは、国際的な観点で、KEKで行われる世界有数の加速器研究に特化したマネジメント力の強化です。後者に関してはこれまであまり顧みられてきませんでした。ロードマップを実施に移すためには、KEKでだけしか行えないような研究を支えるマネジメント体制をより成熟させる必要があります。現行の昇進規定では、KEKだけ固有の新しい職種を設けることは容易ではありませんが、そのような多面的な運営体制の構築に向けて全力を注ぎます。
 
国内的な観点のうち、KEKの運営体制一般について言えることとしては、研究所や施設毎の独自性を一層強調する進め方と、他と連携をして調和した進め方という相反する概念のバランスをいかにしてとっていくかということがあります。その元にKEKの各研究所と施設の活動が相互増幅しあって、KEK全体が高揚されていくことが必要です。機構長としての次の任期に就くにあたって、この観点でのKEKの組織改善についてのガイドラインをすでに表明してあります。
 
今年は、国立大学と大学共同利用機関法人(含KEK)の次期中期計画(2010〜2015年)を取りまとめ政府に提示する年です。この機会に我々はKEKのこれまでの業績について、そしてユニークな特徴について、これまで以上に前面に打ち出すことが重要です。
 
KEKは全国の大学のために開かれた共同利用機関です。KEKが成し遂げてきた成果も、このことあってのことだといえます。今後もさらに、KEKと大学の密接な連携と協力の関係を構築していくことが必要です。そのために、実行可能で詳細なアクションプランを早急に作り上げます。
 
また国際的な観点では、KEKは世界有数の先端的な粒子加速器を用いる研究所です。2007年のデータを見ると、海外の研究者が延べ24,000人・日、KEKに滞在しました。この数は増加の一途を辿っています。国際協力の研究の規模もますます拡大する傾向にあります。日本ではまだ経験したことのない大規模な国際協力のためのマネジメント体制を築き上げるべき時期に来ているのです。
 
例えばDESYのEuropean X-Ray Laser計画は、そのようなマネジメント体制の良い例です。KEKは巨大科学の国際マネジメント体制を見いだしていくことの出来る日本の中で他に類のない組織です。KEKB加速器の増強計画(Super-KEKB)もそのスタートから、このような国際的マネジメント体制のもとで進めていく必要があります。
 
KEKが世界中の研究者たちのために指導的な役割を果たすことがますます求められるようになっています。中でもアジア各国の大研究所、例えば中国IHEP研究所やインドの研究所などと一緒になって、アジアの加速器科学の新しい推進拠点(仮称:ACAS)を構築していくことが求められています。そのためにも、アジア地域将来加速器委員会(ACFA)の活動を活性化させる必要があり、ACFA議長にACAS設置のための評定を依頼する予定です。また、CERNとFermilabの代表者と定期的に円卓会議を行い、国際協力により世界規模の加速器建設をいかにして進めるかに関しての議論を始めます。
 
最後に干支の話で締めくくります。今年は丑年ですが、冒頭で「地道に、しかし強固で堅実な歩みの年」と述べたのが、私の牛のイメージです。例えば馬のような颯爽としたイメージは牛にはありませんが、その静かで地道な印象を与える一方で、ときには闘牛のような秘めた闘志を発揮します。また、牛肉や牛乳、チーズ、牛革など、人間の暮らしにもずいぶんと役立っている動物です。このような牛のイメージが、今年のKEKにはよくあっていると思います。
 
 
 

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