KEKの今年の研究活動について、コメントします。J-PARCは3GeVシンクロトロンで300kW運転に成功しました。今年はいち早くビームパワー目標を達成し、数々の研究成果を輩出することが最重点項目です。KEKBは昨年、積分ルミノシティ:1,000 fb-1と瞬間ルミノシティの両方で世界記録樹立をなし遂げました。KEKBの競争相手であったSLAC(スタンフォード線形加速器センター)の所長から心温まるメッセージをいただきました。特に、KEKとSLACが次期計画のSuper-KEKB実現に向けて共同歩調をとる機運が生まれたことは大変喜ばしいことです。来年度こそは、R&DではなくSuper-KEKBの実質予算化を実現する決意です。放射光はコミュニティとしての将来構想とKEK独自の将来構想を練る必要があると感じます。その意味でKEK-X計画をどこまで詰めるかが今年の課題でしょう。欧州CERNにおいてLHC(Large Hadron Collider)が運転を開始しました。実験結果が大いに期待されます。ILC(International Linear Collider)は今年が技術開発結果の中間報告の年です。どこまで技術開発が進展したのか、結果次第では日本の戦略の練り直しも必要になります。
加速器科学プロジェクトの大型化、グローバル化は益々必須になってきました。これに備えるべく、新たなプロジェクト組織形態、運営手法の確立が大きな課題です。ILCやCERNの次期計画等に対処すべく、CERN所長と昨年11月に意見交換しました。個人的な提案を交え、大方で意見が一致しましたが、今後はいかにしてこれを実現するかが課題です。昨年12月にアジア地区における加速器科学のグローバル化に対応すべく、加速器・測定器技術の開発と応用を主眼とした加速器科学アジア連合:JAAWS(Joint Asian Accelerator WorkShop)を立ち上げました。現時点では、インド、韓国、中国、日本、ロシアの5カ国が参加していますが、既にその他の国からの参加希望が出ています。今後のアジア経済の発展と共に、益々、JAAWSの役割が大きくなることを期待します。