国際会議・ワークショップ

日時: 2012-10-19 16:00 - 17:00
場所: MLF第一会議室/PF研究棟2階会議室
会議名: 物構研談話会(12-26)一次元フラストレート鎖の新規な磁気相
連絡先: 中尾裕則4868
講演者: 益田隆嗣先生  (東京大学物性研究所)
アブストラクト: スピンフラストレーションや量子性、低次元性などは、磁気相関の発達を阻害し、低温でも磁気秩序が発現しないスピン液体状態を誘起する。ここで、スピン変数は秩序化しないものの、高次の磁気多極子に秩序が存在するような新規磁気相の可能性が指摘され、注目を集めている。中でも で表される一次元フラストレート系は、ハルデンダイマー相、カイラル相、ネマティック(4極子)相、8極子相など多彩な相の存在が予想されており[1]、大変興味深い。実験面ではLiCuVO4[2]とRb2Cu2Mo3O12[3]の二つの銅酸化物が、強磁性J1反強磁性J2のモデル物質として注目を集めている。LiCuVO4は、比較的鎖間相互作用が強いために、ゼロ磁場では古典的スパイラル秩序が出現するが、磁場により新しい量子相が出現する。私たちのグループでは、高磁場下での中性子回折実験を行うことにより、その磁場誘起相が、ネマティック相関が発達したSDW相であることを明らかにした[4]。一方、Rb2Cu2Mo3O12はより一次元性が良く、2Kまで磁気秩序が存在しない[3]。我々は、磁化率測定、比熱測定、および中性子非弾性散乱実験により、不整合ハルデンダイマー相[5]と呼ばれる新しいスピン液体状態が低温で実現されていることを明らかにした。本講演では、これら二つの物質で得られた最新のデータを交えて、フラストレート鎖で出現する新規磁気相について議論する。
[1] T. Hikihara et al., PRB 78, 144404 (2008), M. Sato et al., PRB 79, 060406 (2009). S. Furukawa et al., arXiv:1207.1059.
[2] M. Enderle et al., EPL 70, 237 (2005).
[3] M. Hase et al., PRB 70, 104426 (2004).
[4] T. Masuda et al., JPSJ 80, 113705 (2011).
[5] 上田、小野田、第68回日本物理学会年次大会 18aCC-4.

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