物構研コロキウム

日時: 2014-02-27 17:00 - 17:30
場所: 4号館1階セミナーホール・東海1号館317室(中継)
会議名: 物構研コロキウム 「遺伝子からエピジェネティクスへ」
連絡先: 川崎政人准教授 (6176)
講演者: 千田 俊哉 教授  (KEK 物構研)
アブストラクト:  遺伝子は、生命の基本的な設計図である。そこには何がどうかいてあるのだろうか?遺伝子の本体はDNAであり、A, T, G, Cの4文字を表す塩基がヒモ状につながっている。ヒトの場合は、全部で30億文字もの情報が書かれている。この中には生体内での触媒反応やシグナル伝達に必要なタンパク質の設計図、その設計図を読み取るために必要な情報等が書かれている。これらの遺伝情報が読み取られ、様々なタンパク質が作られる事で、細胞の個性が決まってくる。しかし、我々の体をみればわかるように、体内には様々な種類の細胞が存在する。そしてそれらの細胞は分裂してもまた同じ種類の細胞になることで、生物として生きる事が可能となる。不思議な事は、全ての細胞は同じ遺伝情報を持っているのに、細胞ごとに読み取る遺伝情報が違っていて、それが世代を超えて伝わる点である。このように考えると、遺伝情報そのものも重要ではあるが、どの遺伝子を読むのかという情報とその継承も大切であることがわかる。

 20世紀の生物学では、遺伝子に書き込まれている遺伝情報の意味、つまりその遺伝情報が生物(細胞)に与える機能や、その遺伝情報により作られるタンパク質の生物学的な機能を探る遺伝学が重要な位置を占めた。その一貫として、ヒトゲノム計画等のプロジェクトが行なわれ、様々な生物の遺伝情報が明らかにされて来た。21世紀の生物学は、これらの遺伝情報が如何に読み取られるのか、特に遺伝情報利用のための“情報”が如何に伝わって行くのかという事に生物学の興味の中心が移りつつある。このように、遺伝情報利用のための“情報”の(細胞)世代を超えた“遺伝”を扱うのがエピジェネティクスという学問分野である。

 現在、エピジェネティクスに関係する分子機構が次々と提案されている。しかし、これらの過程には多くのタンパク質が関わっており、その分子機構を理解するのは容易ではない。このような複雑な分子機構をどうやって明らかにして行くのか、このような分野と分子の立体構造の関わりはどうなっているのか、これらのポイントを我々の研究紹介も含め、専門外の研究者にも分かりやすく説明したいと思います。

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