物構研談話会

日時: 2012-07-19 13:30 - 15:30
場所: 4号館2階輪講室1 東海MLF第一会議室
会議名: 物構研談話会(12-16)人工多層構造における超伝導近接効果-Au層内のクーパー対はFELOの夢を見るか?
連絡先: 中尾裕則4868
講演者: 山崎展樹氏  (理化学)
アブストラクト:  超伝導近接効果は近年再び多くの研究者の興味の対象となっている。例えば、超伝導体(SC)/強磁性体(FM)接合におけるFM内でのCooper対のFFLO(Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov)振動の出現、あるいはRashba型スピン軌道 相互作用(SOC)のある2次元系へのCooper対侵入を利用したトポロジカル超伝導体の実現、等々が新たに対象となっている。我々は非磁性常 伝導体(NM)を介した超伝導と強磁性の相互作用に興味を持ち、SC/NM/FM(SC=Nb;NM=Au, Pt,Ag;FM=Fe, Co, Ni)三層膜試料の磁性・超伝導をNM層の厚さの関数として評価した[1-3]。NM層内では近接効果によって(SC由来)Cooper対と(FM由来) 伝導電子スピン偏極が共存していると考えられる。
 特に良好な結晶性・積層構造を示すNb/Au/Fe及びNb/Au/Coにおいて、超伝導転
移温度TcがAu層厚t_Auの関数として振動する 結果が得られている。振動周期は2種類観測されており、短周期(~0.76 nm)振動は伝導電子のスピン偏極 効果から説明できるが、長周期(~2.1 nm)振動は今まで知られている機構では説明が付かない。Au層内で超伝導秩序パラメーターΔ(r)が「FFLO的な」実空間内周期的変調を示している可能性が考えられる。FMを含まないNb/Au/Nb三層膜に関する実験結果もこの可能性を支持しており、t_Auの関数として2つのNb層間の超伝導位相差φが0→π→0と変化していると解釈できる結果が得られている[4]。
 本来のFFLO相が強いZeeman field下で生ずるとされているのに対して、この「FFLO的」状態はゼロ磁場下で、おそらくはSOCの影響によって、起きていると考えられる。 SC/2DEG/SC(2DEG:2次元電子ガス)接合に関しては、SOCのある2DEG領域の長さの関数として(ゼロ磁場下で)位相差φが0と πを周期的に取り得ることが理論的に示唆されている[5]。
 Au層内に侵入したCooper対が「FFLO的な」Δ(r)の変調を伴っていることを直接的に証明するために、Δ(r)のnodal plane(Δ(r)=0)を観測するための中性子を使った実験方法を提示する。

[1] H. Yamazaki, Nic Shannon, and H. Takagi, Phys. Rev. B 73, 094507 (2006).
[2] H. Yamazaki, Nic Shannon, and H. Takagi, J. Magn. Magn. Mater. 310
2217 (2007).
[3] H. Yamazaki, Nic Shannon, and H. Takagi, Phys. Rev. B 81, 094503 (2010).
[4] H. Yamazaki, Nic Shannon, and H. Takagi, in preparation.
[5] Z. H. Yang et al., J. Appl. Phys. 103, 103905 (2008).

[index]