物構研談話会

日時: 2013-12-16 10:00 - 11:00
場所: 4号館2階輪講室1/東海1号館324室
会議名: 物構研談話会(13-16) 固体光電子分光の新しい時代
連絡先: 組頭広志(5584)
講演者: 菅 滋正 先生  (大阪大学)
アブストラクト: 機能性材料となりえる固体については、その電子状態の詳細を可能な限り事前に把握しておくことが要請される。つまり、表面とバルクの電子状態についてそのエネルギー、運動量(波数)に加えてスピンをいかに完全に把握するかが重要な課題である。このことはトポロジカル絶縁体の例を見れば一目瞭然である。この目的のためにシングルチャンネルのスピン偏極・角度分解光電子分光(SP-ARPES)が用いられている。しかしスピン検出器の効率は極めて低く、ごく限られた実験データーから、その物理の全貌を議論せざるを得ないため、相互に矛盾する議論が絶えない。
これらの問題を一気に解決できる可能性を持つ高分解能の実験手法がこの1年の間にドイツMPI-Halleで開発実用化された。それは光電子顕微鏡(PEEM)レンズを試料からの光電子引き出しに使用し、静電半球型電子エネルギー分析器2台をタンデムにつないで収差無しでのエネルギー分析を行い、この出射側に二次元(2D)スピン検出器を用いて波数についての二次元同時測定を行うことで、従来より1万倍ほどの高い効率を実現できるのである。これをmomentum-microscope
SP-ARPES(MM-SP-ARPES)と呼ぶ。すでにMPIで独自設計製作の新型装置でエネルギー分解能16meV、波数分解能0.01A-1が実現されている。実験室での測定例や、Elettra放射光施設で行ったトポロジカル絶縁体の研究例さらにこの装置の驚異的なポテンシャルを紹介したい。

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