講演会

日時: 2009-09-04 17:00 - 18:00
場所: 4号館セミナーホール
会議名: 素核研コロキウム「X線信号のヘテロダイン検出を提案。X線FELはタンパク質 1分子の構造解析を可能とするだろうか。」
連絡先: 内線6037 中尾文美
講演者: 新竹 積 氏  (理研播磨研究所・放射光科学総合研究センター)
講演言語: 日本語
URL: http://kincha.kek.jp/
アブストラクト: X線自由電子レーザー(以下、X線FELと呼ぶ)が世界の3箇所で建設中である。これは 従来の放射光よりも10桁以上も高い輝度のコヒーレントなX線を発生できるために、炭 素、酸素、窒素そして水素などの軽元素からなる高分子、とくに生体高分子(タンパク 質)の原子レベルの構造決定手法に飛躍的な進歩をもたらす可能性がある。これまで放 射光が大きく貢献してきたタンパク質のX線構造解析では、幾多の困難を乗り越えてタン パク質を結晶化し、Bragg反射によって弱いX線散乱を増幅し精密なるX線観測を行って きた。ここにX線FELが登場し、サンプルを結晶化をせず、すなわちBragg反射を利用せず とも軽元素からなる高分子の単分子イメージングが可能になろうとしているのである。 しかし、XFELをもってしても、あまりにタンパク質1分子からの散乱X線信号は弱く、 CCD検出器のノイズレベルよりはるかに弱い( 0.01 photon/pixel)。そこで、金粒子をタ ンパクにつけて強く散乱させ、タンパク質からの弱い信号をヘテロダイン増幅するアイ デアを提案した(Shintake, PRE-78, 041906 (2008))。これによって最大1000倍もX線 強度が高くなる。これが実現すれば生物学に多大な貢献ができるものと期待されてい る。たとえば現在ゲノム創薬において、最も重要な研究テーマであるGPCRを代表とする 薬物受容体は、いわゆる膜タンパク質であり結晶化が困難な場合が多く、X線FELによる 単分子イメージングが可能となれば、ゲノム創薬に大きな技術的進歩をもたらすであろ う。

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