講演会

日時: 2009-10-30 17:00 - 18:00
場所: 4号館セミナーホール
会議名: 素核研コロキウム 第35回金茶会 「非平衡定常系の熱力学にむけて」
連絡先: 内線6037 中尾(文)
講演者: 田崎晴明 氏   (学習院大学理学部・教授)
講演言語: 日本語
URL: http://kincha.kek.jp/
アブストラクト: 熱力学というのは物理学のなかでも特別な位置を占める体系である。19世紀に完成された(平衡)熱力学は、ミクロの原子・分子の存在をいっさい仮定せず、完全にマクロなスケールだけで完結する美しくかつ定量的に厳密な理論体系だった。ミクロを参照しないのだから、熱力学は、基盤となる(とナイーブに思われる)ミクロ理論がニュートン力学か、量子力学か、あるいはよりミクロな別の理論であるかといった詳細にはまったく煩わされずに成立する。熱力学が前世紀初頭の量子力学革命をなんら変更を受けずに生き延びた(というよりも、革命を先導する役割を担った)ことはよく知られている。また、ボルツマン、ギブスらが平衡統計力学を構築する際にも、熱力学の体系は本質的に重要なガイドとなった。 21世紀の今、非平衡系に適用しうる統計力学を構築することは、全く手つかずといっていい未解決問題である。われわれは、その出発点として、非平衡定常系に おける操作的な熱力学を構築することを目指して研究を進めてきた。その結果、(当然だが)非平衡の世界は平衡とは本質的に異なり、 熱力学の拡張も決して 一筋縄ではいかないことを痛感している。ここでは、われわれの試みの一端と、非平衡の世界に踏み込むと(おそらく必然的に)顔を出してくる「ねじれ」について、予備知識を仮定せずに解説したい。

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