アブストラクト: |
「130億年余の宇宙史の中で宇宙から反物質が消滅したが、その機構は如何なるものか?最新の観測で明らかになった暗黒エネルギーや暗黒物質の正体は何か?」など宇宙には未だ残された謎がある。物質優勢の宇宙を説明する理論として、レプトジェニシスと呼ばれるシナリオが有力であるが、この理論の重要な鍵は、レプトン(電子やニュートリノなど)についてもCP対称性の破れが存在すると同時に、ニュートリノがマヨナラ型の質量を持つ必要がある。何れも現在未確認である。我々はこうした疑問に答えるべく、「原子を用いたニュートリノ質量分光」実験を開始した。原子過程を使う長所は、そのエネルギー準位が対象とするニュートリノ質量に比較的近く精密測定を可能にする点である。一方、弱い相互作用であるが故に過程そのものが起きる頻度が非常に小さいという弱点がある。我々はこの短所を克服するため、従来とは全く異なる原理(マクロコヒーランス増幅機構と呼んでいる)や手法を使う。本講演では、こうした新しい分野の魅力を紹介したい。なお「原子を用いたニュートリノ質量分光」研究は岡山大学・理学部・付属量子宇宙センターグループとの共同研究である。
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