アブストラクト: |
相転移点近傍で見られるスケーリング則とそ
の普遍性の理解は、20世紀の統計力学の中心
課題であったが、非平衡系においてもスケー
ル不変な現象は数多く存在する。実際、非平
衡系においては、様々の自己相似なパターン
が現れるが、ここではその中でも普遍性を持
つことが知られている、2つの非平衡ダイナ
ミクスを取り上げる。そのどちらも実は
20~30年前から様々の数値シミュレーショ
ンや理論的研究が行われてきたものの、対応
する実験がこれまで存在しなかった現象であ
る。その一つは、非平衡相転移のユニバーサ
リティークラスの一つである、Directed
Percolation (DP)であり、他の一つは成長す
るランダムな界面の問題である。どちらも、
単純な緩和ダイナミクスではなく、持続的に
発展し続ける一見ランダムな時空間構造にス
ケール普遍性が存在する。これら2つの非平
衡系における実験が存在しないという長年の
問題が、実は液晶を用いた乱流ー乱流転移を
観測するという、一つの実験系でわずかにパ
ラメータと初期条件を変えることで、両方と
も実験可能であり、しかも平衡系の臨界現象
と同じかそれ以上の精度で臨界指数の実験検
証ができることを解説する。また、後者のランダムに成長する界面の問題では、通常のス
ケーリング指数の普遍性にとどまらず、ゆら
ぎの確率分布そのものが、普遍的な分布に従
うという新しい側面を提供する結果となって
いることを解説する。
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