アブストラクト: |
「コヒーレンス」は、通常、単色性を前提とした上で1次空間コヒーレンスにつ
いて語られることが多い。しかし「短パルス」を問題にすると、本来6次元位相空間
で定義された光子の素性が顔を出す。すなわち、空間の4次元と(周波数、時間)の
2次元がデカップルできる近似が成立しなくなる。そもそも、1電子の放射を考える
と偏向電磁石からの放射はアンジュレータ放射よりはるかに短パルスである。すなわ
ち電場の時間依存性は、正(符号は逆にもとれるが)の鋭いピークとともに、その前
後に負の長いテールを引く構造を持つ。この鋭いピークと比較するとアンジュレー
タからの1電子による光は、数100倍から数1000倍も長くなるのが普通である。
多数の電子がバンチとして集団をなす場合は、それぞれの電子がつくる場の干渉性
が問題になり、それがFELとERLの差異をもたらす。一方、光子統計は2次以上
のコヒーレンスに関するから独立な概念であり、非常に強力(ボーズ縮重度が大きい)
な光であるにもかかわらず、全くのカオス光である場合も存在する。
また原理的な問題として、種々のコヒーレンスは、観測次第で多様に見えることも
明らかにする。また、そうであるがゆえに、個々の実験的研究において、コヒーレン
スを変調する過程(分光器はそもそもコヒーレンスを変形する)が、装置だけでなく、
物性の中にも存在する事を示す。更に、どのようなコヒーレンスが有効に利用でき整
合性がとれるのか、また、逆にどのようなコヒーレンスが実験とミスマッチをおこし
て有効に利用できないかについても論ずる。 |