放射光セミナー

日時: 2009-04-22 13:30 - 14:30
場所: PF研究棟2階会議室
会議名: 放射光セミナー「混合原子価CeおよびYb化合物のL吸収端における磁気円二色性の理論:強磁性体から強磁場物性への展開」
講演者: 小谷章雄氏  (現PF共同研究員、前東大物性研教授)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: 混合原子価希土類化合物に対するL吸収端磁気円二色性(XMCD)の研究は、長年、 強磁性体を対象にして進められてきたが、最近、松田ら[1]がパルス磁場を用いた40T までの強磁場下実験に成功したことにより、新しい発展を遂げようとしている。 それ以前は、2004年にJ.-P. Kapplerが7Tの磁場下でCePd3のXMCD実験に成功した のみであった。筆者はこの35年間、内殻電子分光のさまざまな理論(単行本[2]を参 照) を展開してきたが、KapplerらがCePd3の実験を行った際、これを説明する理論が 存在しないことに気づいた。そこで、外場によるCe 4f電子の磁気分極効果と混合 原子価効果の競合を取り入れたXMCDの新しい理論を作り、ごく最近公表した[3]。 この理論はCePd3の実験を説明するだけでなく、CeRu2Ge2, Ce(Pd0.75Ni0.25)3, CeFe2 などの強磁性混合原子価化合物のXMCDをも統一的に記述することができる。また、 広範囲(例えば0T〜1000T)の磁場下でのXMCDを予言する。さらに、この理論は、 4f状態の電子・正孔対称性に着目して混合原子価Yb化合物の場合に拡張することが できる[4]。Yb化合物に対する理論の一つの応用として、ここではYbInCu4のXMCD を計算し、松田らの実験結果[1]と比較する。この物質は約32Tの磁場のもとで磁場 誘起価数転移を起こすことが知られており、転移の近傍でのXMCDの振る舞いを明ら かにしたい。 [1] 松田康弘、他、日本物理学会2008年秋季大会講演. [2] F. de Groot and A. Kotani, Core Level Spectroscopy of Solids (CRC, Boca Raton,   Florida/Taylor & Francis, London, 2008). [3] A. Kotani, J. Phys. Soc. Jpn. 77 (2008) 13706; A. Kotani, Phys. Rev. B 78   (2008) 195115. [4] A. Kotani, Eur. Phys. J. Special Topics 169 (2009) 191.

[index]