放射光セミナー

日時: 2009-05-18 13:30 - 14:30
場所: PF研究棟2階会議室
会議名: 放射光セミナー「Pt(111) 表面上 Fe, Co単原子の磁気異方性」
講演者: 宮町俊生  (阪大基礎工・カールスルーエ大)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: 近年における情報産業の発展、パソコン需要の拡大等により、外部記憶媒体である磁気記録装置のさらなる高密度化が必要とされている。高密度化のためには磁気記録素子のナノメートルスケールでの微細化が必要不可欠であるが、その際に問題となる超常磁性限界に打ち勝つための高い磁気異方性エネルギーを備えた磁気記録素子の開発が求められている。本研究では次世代超高密度磁気記録媒体実現につながるナノ〜サブナノメートル磁性の基礎的研究として、高い磁気異方性エネルギーを示すことで知られているPt(111)表面上Fe, Coの単原子の高磁気異方性の発生機構を非弾性トンネル分光(ITS)測定により明らかにすることを目的としている。 実験は超高真空、低温(4K)環境下で行い、試料はMBE法にて低温成長(4K)させ、表面偏析を抑えることによりPt(111)上に孤立したFe,Co単原子を作製した。ITS測定では試料探針間のトンネル電流の二階微分スペクトルをロックイン検出により測定した。二回微分スペクトルにおいて非弾性励起エネルギーはフェルミエネルギー相当の原点に対して反対称な正のピークと負のディップとしてスペクトル中に現れる。Co単原子の場合、10.2 meVに鋭い非弾性ピークとディップが観測された。非弾性励起の起源としてはプラズモン、フォノン、スピン-フリップ励起等が考えられるが、金属におけるプラズモンの固有エネルギーはeVのオーダーであることからプラズモンの可能性は排除される。フォノンに関しても我々が行った第一原理計算の結果(〜24 meV)より排除される。結果としてスピン-フリップ励起が非弾性ピークの起源であることが明らかとなり、この励起エネルギーがCo単原子では磁気異方性エネルギーに直接対応する。得られた磁気異方性エネルギーは磁気円二色性(XMCD)測定から見積もられた値[1]とよく一致していることから、我々のITSの結果の解釈の妥当性は十分であると考える。Fe単原子についても同様の測定を行い、磁気異方性エネルギーが6.5 meVであることを明らかにした。Fe, Co単原子の磁気異方性エネルギーの差は、Fe, CoのPtとの混成強度の違いを作によってFe, Co二量体、三 量体を作製した場合の磁気異方性エネルギーの変化についても議論する。 Referrence [1] P. Gambardella et al., “Giant Magnetic Anisotropy of Single Cobalt Atoms and Nanoparticles”, Science 300, 1130 (2003)

[index]