放射光セミナー

日時: 2003-04-22 13:30 - 14:30
場所: 物構研 4号館2階 輪講室1
会議名: 放射光セミナー「低線量放射線生物影響研究のためのマイクロビーム細胞照射装置の開発」
講演者: 小林克己氏  (物構研 物質科学第二研究系)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/index.html
アブストラクト: 低線量放射線の生物影響の理解は社会的な要請となっている。放射線のエネルギーは荷電粒子の運動エネルギーとなって最終的には細胞中の分子に与えられる。細胞に対する線量は通過する荷電粒子の数と考えることが出来る。低線量になると細胞を通過する粒子の数が少なくなるので、個々の細胞がうける粒子トラックの数、即ち放射線量は均一ではなく、ポアソン分布の特徴を顕著に示す様になる。細胞集団の平均として細胞あたり1トラックの線量を受けたとき、全くトラックが通過していない細胞は全体の37%になる。平均線量がこれ以下になると、トラックが通過した細胞に対して通過していない細胞が圧倒的に多くなる。このような低線量状況下で細胞集団の応答を観測していたのでは、低線量放射線の生物作用のメカニズムを解明することは出来ない。放射線照射された細胞とされてない細胞を明確に区別して、それぞれの生物応答を調べる必要がある。このような動機から、米国および英国では粒子放射線を用いて、細胞を個別に認識してそれぞれに決まった線量の放射線を照射する装置(マイクロビーム照射装置)が開発され、少しずつ報告が出始めている。それによると、照射された細胞の近傍にいる、照射されていない細胞にも放射線の効果が顕れることが明らかになった(Bystander 効果)。このような現象はマイクロビーム細胞照射装置によってのみ調べられる。われわれは、通常の環境ではアルファ線よりもガンマ線などの光子放射線(それによる二次電子)にさらされる機会の方が多いということに着目し、低線量光子放射線の生物効果を調べるために放射光X線マイクロビームによる細胞照射装置の開発を提案し、一昨年には所長留置、昨年からは科研費で製作を開始した。その装置の概要と最初のデータを紹介する。

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