放射光セミナー

日時: 2003-11-11 13:30 - 14:30
場所: 4号館2階輪講室1
会議名: PFセミナー「MMX錯体と電荷移動錯体の光誘起相転移におけるコヒーレンス」
講演者: 米満 賢治氏  (分子科学研究所理論研究系)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: 光照射により相転移を起こし、平衡条件では実現しにくい状態を創ったり、相転移中の集団運動の様子が詳細に調べられたりするようになってきた。ここでは擬1次元電子格子系の最近の話題に関連し、コヒーレンスが転移を記述するときに重要な概念になると思われる例について、我々が行った理論研究を紹介する。  ハロゲン架橋の複核白金錯体では電荷密度分布と格子変位の異なる電子相が存在し、構成要素や圧力の変化、光照射により転移する。パイエルス・ハバードモデルを使い、電子間斥力と電子格子相互作用の競合により基底状態と光励起状態の多様性を生むことを示す。光照射により電荷密度波相から電荷分極相へは転移しやすいのに対し、逆は起こりにくい。これを光励起状態やコヒーレンス回復力の違いから説明する。交互積層型の電荷移動錯体であるTTF-CAは降温で中性相から強誘電的なイオン性相に転移する。光誘起イオン性中性相転移が以前から知られており、転移に必要な光密度に有限な値(閾値)があることや、集団的な相境界運動が実験で観測されている。これらを拡張パイエルス・ハバードモデルで再現し、光照射によるイオン性相からの転移と中性相からの転移がいかに異なるかを説明する。コヒーレンスを制御することにより、平衡条件では常温高圧下で現れる常誘電的なイオン性相を低温常圧下で実現しうることを示す。

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