放射光セミナー

日時: 2003-11-19 15:00 - 16:00
場所: 放射光実験準備棟2階輪講室
会議名: 放射光セミナー「誘電応答関数、振動子強度スペクトル、散乱因子など━物性の一つの見方」
講演者: 井口道生氏  (アルゴンヌ国立研究所名)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: ある決まった物質について、あらゆる振動数の光、すなわちあらゆるエネルギ−の光子との相互作用を総合的に論じるのは、物性の一つの見方である。ただし、光の強度は充分に弱いとし、双極子相互作用を最低次の摂動で扱えばよいとする。単位の外部電場によって物質のなかに誘起される電気分極を含む電束密度を誘電応答という。電磁波の角振動数ωの関数としてε(ω)と書く。あるいは対応する光子のエネルギ− E = hw の関数と見てもよい。この関数は、実のωの値に対してでも、複素数値をとる。実部は光の分散、屈折を表わす。虚部は光の吸収の強さを表すもので、基底状態にある物質では正のωの値に対して正の値をとり、光吸収断面積、あるいは振動子強度スペクトル、散乱因子などと本質的に同じ量である。  上のような基礎理論は古くから知れている。しかし、個々の物質に関するデ−タの検討と解釈は、30年位前に始まり、現在の問題でもある。放射光を利用して、赤外から可視、紫外、遠紫外、そしてx 線に亙る全領域のスペクトル、そのほか様々の物理量をを測ることができるようになった。さらに高速の電子のエネルギ−損失の分析も密接に関連した情報を与える。こうして得られたデ−タの検討と解釈には、分散式、総和則、その他の一般的な理論的な結果を利用するのが、有効である。  デ−タ分析の例としては、金属アルミニウム、固体ケイ素、液体の水などがある。物質の密度の低い極限では、個々の原子、分子の性質をを考えることになる。さらに、固体の中の色中心、不純物などの点欠陥や液体のなかの溶媒和電子などについても、同じような取り扱いができる。

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