日時: |
2004-09-27 14:00 - 15:00 |
場所: |
4号館2F輪講室1 |
会議名: |
「分子軌道トモグラフィー」〜高強度超短パルスレーザーによる気相分子の動的イメージング〜 |
講演者: |
板谷 治郎氏 (科学技術振興機構 腰原非平衡ダイナミクスプロジェクト 研究員) |
講演言語: |
日本語 |
URL: |
http://pfwww.kek.jp/pf-seminar/ |
アブストラクト: |
近年の高強度超短パルスレーザー技術の進展により、高次高調波と呼ばれる真空紫外から軟X線領域にわたる広帯域でコヒーレントな超短パルス光を発生できるようになっています。高次高調波は、可視域のレーザー光では到達できないアト秒領域の超短パルス光源として、近年目覚ましい進歩を遂げています。その一方で、高次高調波は豊富な測定可能な物理量(スペクトル分解された強度・位相・偏光)をもっており、そのスペクトルを精密に測定することにより、原子や分子の電子状態に関して多くの知見を得ることが期待できます。
今回の講演では、高次高調波のスペクトルから分子軌道を再構築する手法「分子軌道トモグラフィー」についてお話しします。高次高調波は、自由電子と束縛電子の波動関数のコヒーレントな重ね合わせによって、振動する双極子が誘起される過程によって発生します。興味深いことに、この振動双極子のスペクトルは、束縛電子の波動関数を空間的に射影したものと等価な情報を持っています。したがって、少しずつ異なった角度に配向した分子から高次高調波を発生させると、束縛状態の電子の波動関数の任意方向への射影が得られます。これは実は、断層画像撮影(Computed Tomography, CT)で行われている測定と数学的に等価であり、CTで用いられているアルゴリズムを適用することによって、分子内電子の波動関数の三次元形状を再構築できます。この手法の特徴は、分子軌道の形状をサブ・オングストロームの空間分解能かつサブ・フェムト秒の時間分解能で測定できることにあります。また、電子と光とのコヒーレントな関係に基づいているため、波動関数内の相対的な位相も原理的には測定可能であり、将来的には分子内での波動関数の流れを可視化する道を拓くことも期待できます。講演者らがカナダNRCにおいてN2分子を用いて行った実験の結果を交えて、強光子場中での光と電子とのコヒーレンスに関する最新の話題を提供したいと思います。 |