放射光セミナー

日時: 2005-04-26 13:00 - 14:00
場所: 物構研 構造生物実験準備棟会議室
会議名: 放射光セミナー「糖転移酵素と先天性筋ジストロフィー」
講演者: 遠藤玉夫氏  (財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
講演言語: 日本語
URL: http://pfwww:kek.jp/pf-seminar/
アブストラクト: αジストログリカン(αDG)のO-マンノース(O-Man)型糖鎖(Siaア2-3Galイ1-4GlcNAcイ1-2Man)は、筋ジストロフィーや神経細胞遊走異常の病態メカニズムに深く関わる。これまで我々は、哺乳類のO-Man型糖鎖生合成経路の解明に取り組み、GlcNAcをイ1-2結合でManに転移するGlcNAc転移酵素、POMGnT1(Protein O-mannose イ-1,2-N-acetylglucosaminyltransferase 1)の性質を明らかにし、POMGnT1が先天性の筋ジストロフィーに加え、眼奇形、神経細胞移動障害を特徴とするmuscle-eye-brain disease(MEB)の原因遺伝子であることを特定した。一方、哺乳類のPOMT(Protein O-mannosyltransferase)活性を担う分子の実体は長い間不明であったが、最近我々はその実体を明らかにした。酵母のO-Man転移酵素のヒトホモローグとしてPOMT1とPOMT2があるが、POMT1とPOMT2はO-Man転移酵素であること、その活性発現にPOMT1-POMT2複合体形成が必要であることを明らかにした。Walker-Warburg syndrome (WWS)はMEBと同じように、先天性筋ジストロフィー、滑脳症と眼奇形を伴う常染色体劣性遺伝病である。我々はWWS患者のPOMT1の遺伝子変異によりPOMT活性は失われることを明らかにした。さらに我々は、ショウジョウバエでも二つのPOMTホモローグがあるが、ヒトの場合と同様にPOMT活性発現には両ホモローグの共存が必要であること、さらにRNAiによりそれぞれの発現を抑制すると筋形成がうまくできず体がねじれてしまうこと、を明らかにした。これらの結果は、脊椎動物と無脊椎動物を問わず筋形成におけるO-Man型糖鎖の重要性を示している。

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