理論セミナー

日時: 2009-01-23 16:00 - 17:00
場所: 本館321号室
会議名: Recent Progress of Studies on the Short-Range Correlations
連絡先: 安井繁宏
講演者: 森田彦  (札幌学院大学)
アブストラクト: 短距離相関は、現実的核力が引き起こす最も特徴的な相関の一つである。その効果が現れるのは運動量空間で見ると高運動量領域であると考えられるので、これまで核子の高運動量成分の解析に実験、理論の両面から注目が注がれて来た。実験面では、(p,pp)および(e,e’p)反応実験による核子の運動量分布の測定が行われ、それに対応する運動量分布の計算が理論面から行われた。これらの研究によって一定の理解が得られたものの、核子の高運動量成分に反映される短距離相関の効果は間接的なものに留まるので、そのメカニズムを捉えるためには、相関している核子対を直接つかまえることが必要であるとの認識が高まって行った。  その観点から、最近、(p,ppn)および(e,e’pn)などの3重相関実験がBNLおよびJLabで相次いで行われた。いずれも、核内で相関している核子対を直接つかまえ、その核子対間の運動量分布を測定することを企図したものであるが、これにより、以下の点が実験的に確かめられるに至った。  1. 高運動量成分の大半は2核子対の(短距離)相関によって生み出されている。  2. 高運動量領域におけるpn対成分の割合は、pp対のそれよりも遙かに大きい。 1によって、二核子相関モデルという理論モデルによって以前から提唱されていた高運動量生成のメカニズムが検証されたことになり、2の点については、理論解析によってテンソル相関の効果によって説明できることが示された。これにより、短距離相関の理解は大きく進み、現在は核内の2核子運動量分布の解析から(短距離相関に関する)いかなる情報が引き出されるか、という点に関心が移りつつある。  本セミナーでは、これら短距離相関に関する研究の進展を概観し、今後の展望について簡単にふれることにする。

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