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ポスター

映画「神様のパズル」では、KEKの加速器と測定器もロケに協力しました。映画の中で出てくる「宇宙を作る」ために繰り広げられている物理学上の議論について解説しましょう。
 
 
関連サイト: 映画神様のパズル公式ページ
http://www.kami-puzzle.com/
角川春樹事務所のwebページ
http://www.kadokawaharuki.co.jp/  
 
Q1:加速器で宇宙を作ることはできますか?
映画の中では、主人公の2人が加速器を使って宇宙創成に挑みます。
残念ながら、加速器を使って宇宙そのものを作り出すことはできません。でも、宇宙誕生直後の状態を作り出すことは可能です。

百数十億年昔、宇宙はビッグバンと呼ばれる爆発的膨張を経て巨大な時空と物質の世界として誕生しました。誕生直後の宇宙は超高温の世界で、現在は陽子や中性子の中に入っていて決して出てこない素粒子クォークなどが、高エネルギーを持って自由に動き回る世界だったと考えられています。映画の中にも登場するKEKの加速器「KEKB」では、電子と、電子の反粒子である陽電子を光速に近い速度で正面衝突させて高エネルギー素粒子の世界をつくり出します。宇宙誕生直後に似た状態を瞬間的に作り出して、素粒子の研究を行っているのです。

アインシュタインの相対性理論によって、物質の質量とエネルギーは等価であることがわかっています。宇宙に存在するすべての物質とエネルギーの総量と同じだけのエネルギーを一点に集中させる手段は無いため、加速器で宇宙そのものを作り出すことはできないのです。。
撮影風景
Q2:そもそも、「加速器」ってなんですか?
電子や水素の原子核である陽子など、電気を帯びた極めて小さい粒子を、電磁波を用いて光の速度近くまで加速させる装置です。その加速させた粒子を衝突させると、新しい粒子をつくることができます。「素粒子」、宇宙のすべての元となる最小単位です。そのふるまいや性質などを調べることで、宇宙全体の謎を解明しようとしているのです。

KEKにある最大の加速器はKEKB加速器で、1周3kmの円形の加速器で電子とその反粒子の陽電子を光の速度の99.9999998%まで加速させています。

KEKB加速器につきましては、詳しい説明がこちらにありますのでご覧ください。
http://www.kek.jp/ja/activity/accl/kekb.html
Q3:加速器は空中に作るものなのですか?
映画では加速器は空中に作られていましたが、建設コストや運転時の利便性、運転中に発生する放射線の遮蔽などの観点から、実際の加速器は地下や地上に建設されています。

KEKB加速器は地下11メートル、KEKのフォトンファクトリーは地上に設置されています。
Q4:加速器は危険なものですか?
加速器は停電になると粒子の加速が止まるので、爆発するようなことはありません。

加速器の運転中は放射線を発生するので、遮蔽を設置してモニターするとともに、人間が運転中に誤って近寄らないようにするための様々な安全措置が施されています。他にも高電圧や超低温の装置などが稼働しているので、見学の際には関係者の指示に従っていただく必要があります。
Q5:加速器を見学することはできますか?
はい。ご見学頂けます。
加速器の運転中は加速器そのものを見ることはできませんが、巨大な測定器が設置されている実験ホールなどは事前予約(10名様以上の団体)によりご覧いただくことができます。

KEKでは毎年8月末か9月上旬の日曜日に一般公開を行っており、この日には本物の加速器をご覧になることができます。

詳しくは

見学するには
http://www.kek.jp/ja/event/kengaku.html
一般公開のお知らせ
http://www.kek.jp/openhouse/

をご覧ください。
三宅崇史監督
Q6:加速器でどんな研究を行っているのですか?
撮影風景 撮影風景 KEKの最大の加速器であるKEKB加速器では、電子と陽電子の衝突によって宇宙誕生直後に似た状態を作り出して、宇宙には物質があるのに、その対となる反物質が存在しない対称性の破れなどの研究を行っています。

また、295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にあるスーパーカミオカンデにニュートリノと呼ばれる素粒子の一種を打ち込んで、途中でその種類が変わる「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象を研究したり、原子核の詳しい性質を調べる研究も行っています。

KEKの研究者も参加しているスイス・ジュネーブ郊外にあるLHC加速器では、物質の質量の根源となるヒッグス粒子の探索がこの夏から行われます。

加速器によって作り出される放射光や中性子、ミュオンなどのビームを使って物質のいろいろな性質を調べる研究も行われています。タンパク質の立体構造を調べて、病気の仕組みや薬の開発を行ったり、軟骨や心臓を鮮明に診断するための基礎研究を行ったり、リチウム電池や燃料電池などの産業応用に役立つ研究なども進められています。
Q7:運転中の加速器は光るんですか?
加速された粒子も加速のための電磁波も目に見えません。
Q8:ひも理論やM理論って本当にあるんですか?
素粒子理論では、すべての粒子をひもの振動と考える超弦理論や、その1つの仮説としてのM理論が研究の対象となっています。

詳しくは

ひもで考える宇宙
〜 ブレーンの組み替えと超光速粒子 〜
http://www.kek.jp/newskek/2008/mayjun/SuperstringTheory.html

などをご覧ください。
撮影風景
Q9:「ルミノシティ」って何ですか?
電子と陽電子の衝突などのように、粒子と粒子をぶつけて実験を行う場合の衝突頻度(明るさ)をあらわす量で、毎秒どれだけの粒子と粒子が衝突するかという頻度を意味します。
Q10:「クエンチ」って何ですか?
液体ヘリウムなどで冷却された超伝導の機器が超伝導が破れて大量の熱を発生する現象です。
Q11:「クロストロン」ってどんな加速器ですか?
「クロストロン」は、原作者の機本伸司氏が命名した加速器なので、現実には存在しません。加速器の種類には、サイクロトロン、シンクロトロンなどがあります。KEKB加速器はシンクロトロンを用いた電子陽電子衝突型加速器です。
Q12:ロケに使われたのはどんな加速器ですか?
KEKでは、KEKB加速器とBelle測定器が撮影に使われました。KEKB加速器は、電子・陽電子の衝突により大量のB中間子や反B中間子が作り出されるので、「Bファクトリー(Bの工場)」とも呼ばれています。KEKBは世界最高の性能を誇る加速器で、様々な成果を上げています。
Bell測定器は素粒子の反応を調べる7種類の検出器を組み合わせて、B中間子や反B中間子の性質を精密に測定する、縦横高さが7メートルの大型実験装置です。

KEKB加速器、Belle測定器につきましては、詳しい説明がこちらにありますのでご覧ください。


KEKB加速器:http://www.kek.jp/ja/activity/accl/kekb.html
Belle測定器: http://www.kek.jp/ja/activity/ipns/bell.html


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