理論センター

土手 昭伸

土手 昭伸DOTE, Akinobu

  • 所属グループ:ハドロン・原子核
  • 役職:研究機関講師
    Associate Professor
  • 居室番号:310・東海224
  • eメールアドレス:dote-AT-post.kek.jp

研究内容

原子核は陽子・中性子からなる有限量子多体系です。たった二種の粒子からなるのですが、特に軽い原子核では多彩な構造が現れます。陽子・中性子数の変化に伴い、球形から楕円形に変形したりまたは小さな塊に分かれる(クラスター構造)など、調べていて面白いものです。このような軽い原子核にストレンジネス・クォークを持つ粒子(ハイペロンΛ,ΣやK−中間子)が加わった原子核に私は関心があります。そこではこれまでの原子核では見られなかった現象が現れると考えられています。

特にK−中間子が加わったK中間子原子核は大変興味深い存在です。K−中間子と陽子や中性子の間には非常に強い引力が働くので、その周りに陽子や中性子が引き寄せられます。その結果、普通の原子核には現れない奇妙な構造が現れたり、また非常に密度の高い状態が形成されると考えられます。

ほとんどの安定な原子核では、その内部の密度は通常核密度ρ0=0.16fm^-3であることが知られていますが、K中間子原子核の内部ではその数倍に達する高密度状態になる可能性があります。数倍のρ0といった高密度状態はもちろん地球上には存在せず、唯一その可能性があるのは宇宙にある中性子星です。中性子星は太陽以上の重い質量がその巨大な重力によって、コンパクトに束縛した物質です。中性子星内部に匹敵する状態が、K-中間子を原子核に加えることで本当に実現するのでしょうか?

K中間子原子核はこのように非常に知的好奇心を刺激する存在ですが、
理論的研究を進めるには様々な困難があります:
1.基本となるK中間子と核子の間の相互作用(KbarN相互作用)が
  完全には決まっていない。
2.K中間子原子核は単純な束縛状態ではなく、有限の時間で
  崩壊する共鳴状態。
3.K中間子と核子は相互作用し、π中間子とハイペロンに転化する。
  (KbarN-πYの結合チャネル系)

こういった困難を克服すべく、原子核物理が培ってきた多体問題を解く技術と、ハドロン物理の知識を用いて、K中間子原子核の性質の解明を目指しているところです。


【参考文献】
1)"High-density K nuclear systems with isovector deformation"
Akinobu Dote, Hisashi Horiuchi, Yoshinori Akaishi and Toshimitsu Yamazaki
Phys. Lett. B590, 51 (2004)

2)"Kaonic nuclei studied based on a new framework of
  Antisymmetrized Molecular Dynamics"
Akinobu Dote, Hisashi Horiuchi, Yoshinori Akaishi and Toshimitsu Yamazaki
Phys. Rev. C70, 044313 (2004)

3)"Variational calculation of the ppK- system based
on chiral SU(3) dynamics"
Akinobu Dote, Testuo Hyodo, Wolfram Weise
Phys. Rev. C79, 014003 (2009)