加速器研究施設 職員紹介
新人の技術職員には新人研修として回路実習・放射線・材料力学・磁場測定・真空などのKEKで必要な基本的な技術を技術職員が中心と成って講義や実習が行われます。また、仕事を進める上で必要な知識や技術を深めるため、年間に幾つかの専門研修が行われています。しかし、一番頼りになるのは先輩技術職員であり、教官の方々です。皆さん質問をすれば気さくに丁寧にアドバイスをしてくれます。
先輩職員の声@
東海村にあるJ-PARC線形加速器(リニアック)のビームモニターグループに所属する7年目の職員です。ビームモニターは目で見えないビームを可視化するのに必要な機器です。私は既存のモニター機器の点検・保守、新規モニター機器の校正測定、設置、配線を担当しています。最近の嬉しい出来事は、リニアックのビームエネルギー増強にモニター担当者として関わり目標達成に貢献できたことです。
学生時代はカーボンナノチューブやフラーレンの物性研究をしていました。加速器に関して全く知りませんでしたが、入構してからでも、上司や先輩方から丁寧に教えていただけるので、心配はいりません。
KEKの魅力は世界初の成果を目指し、その目標に向かって最先端の技術を追求できる環境があり、それらに触れることができることです。海外からの研究者との議論も多く、非常に活発な職場です。世界から注目される最先端に触れてみましょう。
先輩職員の声A
私は6年目の技術職員です。採用時に東海キャンパスにあるJ-PARC MRの制御グループに配属されて以来、変わることなく制御グループに所属しています。
加速器は多くの機器が正しく制御されることによって動作しています。加えて多くのデータを時系列で収集し、解析を加えるようなことも必要になっています。加速器における制御グループの役割とは、加速器の各機器を遠隔で監視・操作をするために必要なことを分析・逆算して整備することです。例えばデータを収集・計算・表示するプログラムの開発、制御用LANの整備・配線作業などが主たる業務ですが、機器の設計段階から打合せに参加して制御方法に関して議論することもあります。加速器では現在ほぼ全ての機器が遠隔操作・リアル操作が行えるのが当たり前になっています。将来計画を見据えて色々なことに関れる仕事は、大変なことですがとても楽しいです。
とにかく世界最先端の研究に携わりたい!とお考えの方は、まずは門をたたいてみるのはいかがでしょうか。加速器のことを知らなくても大丈夫、知識は後からついてきます。
先輩職員の声B
KEKBの制御グループに所属する4年目の職員です。制御グループでは周長約3kmの加速器を構成する多種多様な機器を統一的に制御・監視することを目的にしており、私は制御に必要な電子回路やプログラムの開発を行っています。始めは加速器のことはほとんど分かりませんでしたが、数ヶ月間に渡って行われた初任者研修や実際の作業などを通して少しずつ理解できるようになってきました。まだまだ勉強しなければならないことはありますが、周囲の方々がどんな些細な質問にも丁寧に答えてくださるので安心しています。研修プログラムには、入構してからすぐに行われる初任者研修の他にも英語研修や、技術研究会・技術交流会など様々なものがあり、職員が学習することができる環境が用意されています。「興味はあるけれど加速器のことは詳しく知らない」という人でも、入所してから少しずつ加速器を学び、自分の能力を発揮させてみませんか。
先輩職員の声C
KEKB真空グループに所属して6年目の技術職員です。今はSuperKEKBプロジェクトの真空コントロールシステムの構築とビームハローを削るコリメータ関連の開発を行っています。SuperKEKBは、日本唯一の衝突型加速器であり、日本最大の加速器です。主に、私は図面を書いたり、プログラムを書いたり、シミュレーションを行ったり、試験装置を作って測定したりしています。私の大学時代の専攻は土木建設だったので、加速器について何も知らず仕事を始めました。周りの方でも、大学の専攻とは違う方が珍しくありません。そのような環境ですから、今思うと恥ずかしくなるような簡単な質問でも親切に教えてくれます。また、この職場には、気分転換をできる場所(サッカー場・テニスコート・体育館など)があります。私は、ここに入ってからテニスを始めました。最後になりますが大型加速器に興味があるのなら是非KEKに就職して、新しい科学に貢献してみませんか。
先輩職員の声D
加速器第五研究系加速管グループに所属している、4年目の職員です。加速管グループでは入射器の加速管周りのことはなんでもやります。加速管、電磁石、真空、架台…、私はその中でも主に機器のアライメントに携わっています。ビームが加速管の中心を通らないとビームの質は劣化してしまいます。それを防ぐために電磁石などを精密に並べる必要があり、レーザートラッカーという測定器を用いて0.1 mmの精度で並べています。加速器という巨大施設はこういった非常に緻密な技術によって支えられています。ここではいろんな仕事ができる反面、たくさんの知識が必要になってきます。学生時代は全く違う分野の勉強をしていたので、少しずつ勉強している最中です。また、最近では就業時間外に運動をしたり、学会出張で他の県に行くことが密かな楽しみで、近々海外学会にも参加予定です。
先輩職員の声E
2000年に入構以来、電子陽電子入射器の高周波源(RF)グループに所属し、パルス電源の保守、開発等を行ってきました。電子陽電子入射器では、ビームを加速するために、約60台のクライストロンと呼ばれる高周波を増幅する真空管を使用しています。パルス電源は、クライストロンに必要な高電圧のパルス電圧を発生させるものです。現在は、主に電子陽電子入射器のアップグレードのためにパルス電源を小型化する改造や新しい方式のパルス電源の開発のために回路シミュレータ(SPICE)で電気回路のシミュレーション等を行っています。また、今年は、パルス電源開発に関連しての海外出張も多くなりそうです。(英語は苦手だったが、英語研修等のおかげで上達してきたか?)加速器は、特殊な装置も多いですが、研修などで興味のある技術を身につけるチャンスも多くあり、先輩方も親切に教えてくれるので、加速器に関する知識がなくても心配は要りません。
先輩職員の声F
国際リニアコライダー(International Linear Collider; ILC)や、エネルギー回収型ライナック(Energy Recovery Linac; ERL)の成否の鍵である、ニオブ製超伝導加速空洞の研究、技術開発に25年以上携わってきました。ILC計画では、16000台にも及ぶニオブ製9セル超伝導加速空洞で、理論的上限と考えられている40 MV/mに極めて近い高加速電場を発生させなければなりません。研究開発を開始して6年目の2010年12月に実施した超伝導加速空洞12号機の測定において、私達は日本国内初の加速電場40 MV/mを達成し、ILCの実現に1歩踏み出しました。しかしながら克服すべき課題は山積しており、その解決には若い技術者の柔軟な発想と才能が必要不可欠です。研究、技術開発の仕事は結果が出るまで何年も費やす事も多く、また必ずしも成功するとは限りませんが、困難な課題に挑戦した経験は非常に重要な財産になりますし、また克服出来た際の喜びは格別です。意欲ある技術者には、海外の研究機関での研究開発を可能にする制度もあります。技術者の卵である皆さんには、未来への選択枝は無数にありますが、今後の超伝導加速空洞業界を背負って立つ道を選んでみませんか。