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   image 平成13年度KEK技術賞決まる    2002.1.31
 
 
先端的テーマを扱うKEKでは、科学研究を支える技術開発が絶えず必要です。新たな挑戦に答える技術は、これまでにない厳しい環境で、それまで以上の能力を期待されるだけに開発者の努力は並大抵ではありません。そんな技術の中から、特徴がキラリと光る技術、KEKの研究開発に大きく貢献した技術に対し昨年度からKEK技術賞が贈られてきました。1月31日に表彰された平成13年度 KEK技術賞受賞に輝く3つの技術を紹介します。
写真:技術賞のメダル
KEK技術賞のメダル

中性子散乱実験用位置敏感検出器、PSD2Kシステムの開発

KEKでは物質構造を調べる研究は重要なテーマの一つです。そこでは中性子と呼ばれる粒子を使った研究も行われています。中性子を物質に照射し、それが物質内部の構造により、どう振舞うかを探り物質の構造を調べる研究です。その際、物質に衝突した中性子がどのように跳ね返ったり、道筋を変えるかなど中性子の散乱後の位置を検出することがとても重要な技術的課題になります。受賞した技術の一つは、こうした中性子の散乱実験で、中性子の位置を敏感に検出するもので、PSD2Kシステムと呼ばれています。このシステムは中性子を感度良く捉え、測定の効率が長期的に安定です。しかも無調整で低コスト、扱いやすく、世界に通用する計測能力を持つなどの優れた点があり、開発者の努力や姿勢も大いに評価されました。

※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

ドライバー開発
雑誌「トランジスタ技術」記事紹介

 
 
 
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中性子科学研究施設
佐藤節夫氏
拡大写真(68KB)
LHC用強収束超伝導四極電磁石の開発

加速器の中で高いエネルギーの世界を作り出し、 そこで生まれ消滅する素粒子の振る舞いを調べる研究もKEKの大きなテーマです。それは国際協力で進められる巨大な加速器での実験が多く、その建設に関わる技術開発もKEKで進められています。受賞したのは、ジュネーブ近郊にあるCERN(ヨーロッパ核物理研究機構)に建設中のLHCと呼ばれている加速器で使用される超伝導電磁石の開発です。この電磁石は加速器の中の粒子が衝突を起こす点で重要な役目を果たします。粒子は加速器の中を群れになって飛んでいます。群れ同士が衝突する際、群れの塊がコンパクトであるほど、その中の個々の粒子同士が衝突する機会は増えます。LHCのような陽子衝突型加速器では衝突の機会が増えれば増えるほど、高いエネルギーの素粒子の世界を探ることが可能になります。ですから高いエネルギーの世界を加速器の中で効率よく生み出すには、粒子の群れを強く束ねる電磁石の開発が非常に重要です。この電磁石開発では、基本構想実現に向け、実際の構造・精度等に関し、現場の経験や試験結果等を十分生かして問題が解決されました。また、加工組立て作業に関し、メーカへの技術移転が容易になるまでに開発され、図面整理等もしっかりしていること、明白に技術の継承も上手くいっていることも評価されています。
 
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LHC計画 (CERN) [英語]
LHCマグネット開発グループ(KEK)[英語」

 
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工作センター
東 憲男氏    寺島昭男氏
拡大写真(37KB)
BELLE検出器用構造体の開発

「失われた世界を探る」でも紹介したBELLE測定器は写真でも分かりますが、床面から高さ10メートル、横幅7メートル、粒子が走る道筋にそった奥行き8メートル、総重量は1500トンもある大変巨大な構造物です。この中で電子と陽電子を衝突させ、その際に生ずる粒子の振る舞いを検出する多様な測定器を組み込むには構造体の巧みな設計を必要としました。3つめの技術賞はこの構造体設計を進め、それを完成させた技術に対して贈られました。 機械的・電気的な設計において、過去の経験と計算結果を活かし、磁場の影響、配線のバランスや組立て易さなどを考慮した設計を地道に積み重ね、基本構想をまとめ上げたことが評価されています。 また、計画、開発進行段階で発生したトラブルをシミュレーションなどの手段で着実に処理し実現にこぎつけた業務への取り組みや、 自分の方針を堅持した開発者の姿勢、特に今後の開発に必要なツールとして個別技術を修得・維持し、問題点を的確に対処し、 業務の経過を様々な形に記録として残したことなど、この技術開発が今後の開発に貴重な財産となったことも受賞の大きな理由となりました。

※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

BELLE構造体 [英語]
デザインレポートから "Detector Solenoid and Iron Structure" を選択 [英語]
プログレス・レポート [英語]

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    10編の技術報告が支える1編の論文

 
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素粒子原子核研究所
山岡 広氏
拡大写真(70KB)
 
 
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