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KEKB 加速器の概要


大まかな構成

KEKB はエネルギーが 8GeV の電子と 3.5 GeV の陽電子のビームをぶつけて素粒子の実験をするための衝突型加速器である。二つのビームはそれぞれ別々の蓄積型加速器(Storage ring)の中に収められ、リング内一箇所で二つのリングが交差し、ビームが衝突するように作られている。その交叉点を囲むようにして、Belle 測定器が設置されている。また、電子と陽電子は、電子・陽電子線形加速器から供給される。


トンネルの中

下に、地下約10メートルのトンネル内に設置された KEKB 加速器の写真を示す。二つの加速器が並んでいるのが見えるが、右が電子の蓄積リングで 8 GeV の電子を蓄積している。また、左のリングが 3.5 GeV の陽電子の蓄積リングである。電子リングには、「高いエネルギーのリング」と名づけられその英語名を略して HER と呼ばれる。一方陽電子のリングは LER と呼ばれている。


図1 加速器トンネルの中(その1)

さて図1の写真は加速器に一部であるが、このような磁石が並んだ様子が加速器の全てではない。リング内の何箇所かには、ビームを加速するための加速空洞が設置されている。下の写真はその加速空洞のひとつ ARES の設置されている様子を示している。ARES は KEK で開発されて特殊な空洞で、本来の加速空洞と、エネルギーを蓄積させるための空洞と、加速空洞とエネルギー蓄積空洞を繋ぐ結合空洞からなっている。写真の大きな茶色のタンクのようなものがエネルギー蓄積空洞である。

  
図2 加速器トンネルの中(その2)ARES 空洞


加速器を構成する機器

以上ごく大雑把に加速器トンネルの中の様子を紹介したが、加速器は様々の部分から成り立っている。これらをビームに近いもの、遠いものと言う分類で示してみると次のようになる:

  1. ビームのすぐ近くでこれ取り囲むもの
    • 真空パイプ
    • 電磁石
    • 加速空洞
    • 様々なビームモニター装置
    • フィードバックキッカー
  2. ビームから遠いもの
    • 電磁石電源
    • 加速空洞電源
    • 加速制御装置
どの装置もそれぞれ様々な種類があり、これら膨大な機器の複雑な構成体として加速器ができている。

加速器の運転

以上の説明からわかるように、加速器は非常に複雑な機械であり、それを運転するには、多くの遠隔操縦装置が機能しており、また多くのソフトウェアが稼動している。これらを統括制御するため、中央制御室がある。その制御室の中を下の図に示す。

さて、この部屋でどのような操作が行われているのであろうか。そのひとつを紹介しよう。

KEKB 加速器内の電子、陽電子のビームはリングの中に連続的に存在するのではなく、バンチと呼ばれる塊となっており、これが各リング約1930個存在する。バンチ同士の衝突の様子を模式的に表すのが次の図である。

なるべく高い頻度でバンチ内の粒子が衝突反応がおこるようにするため、この図からわかるようにバンチはとても小さなっている。この二つのビームがうまつぶつからないと、衝突実験がうまくいかず、望みの素粒子反応の頻度は下がってしまう。そのようなことにならないようにビーム同士がぶつかるように、ビーム位置モニターの情報をもとに常にビームの位置、角度などがフィードバックされている。しかし、このフィードバック系は複雑な系であり、この動きをチューニングする操作が、高い素粒子反応頻度を保つための重要な仕事である。

素粒子物理の実験

KEKB の加速器で、二つのビームが交叉する部分には、Belle 測定器が設置されている。その模様を撮影した写真をしたに示す。