KEKB(一般向け)トップ>初めに

初めに - 衝突型加速器とルミノシティ -


1. ルミノシティとは

KEKB衝突型加速器(Colliding machine)のひとつです。

この型の加速器では、二つのビーム(KEKB の場合は電子のビームと陽電子のビーム)を衝突させて素粒子物理学の実験を行います。実験中にはいろいろな素粒子反応が起きますが、ある特定の反応に注目する時、その反応のおきる度合いは物理法則で決まります。この「反応のおきる度合い」を物理学の言葉で断面積(cross section)と呼びます。多くの教科書ではこの断面積を σ と言うギリシャ文字で表しています。

さて実際の実験の現場では、ある単位時間に注目する素粒子反応がおきる回数 (これをよくYと言う文字で表します) は上に説明した断面積 σ に比例します。この時の比例定数をルミノシティと言い、よく L の文字で表されます。以上のことを式で表すと

= L x σ

となります。ルミノシティは、大雑把に言って、

  1. ビームの中にいくつの粒子が存在するか、
  2. 互いにぶつかるビームがその衝突点でどれだけ細くなっている
で決まります。この式からわかるように、より多くのデータをためて現象を調べるためにはルミノシティは非常に大切なパラメータで、これが如何に大きくできるかで衝突型の加速器の価値が決まると言っても過言ではありません。


2. KEKB のルミノシティ

KEKB のルミノシティの設計値は

Ldesign=1.0 x 1034cm-2s-1

です。この設計値に関して、2005年2月には当初の約1.5倍、2006年秋には約1.7倍と、ルミノシティの最高値を更新しつづけています。

ところで、このような数値は初めてこのルミノシティーという概念に遭遇した方々にはどれだけのものであるかがわかりにくいと思います。参考として、衝突型加速器が実用になってから現在での実績をグラフにしたものを下のグラフに示します。グラフ内に書かれた文字「KEKB」などは加速器の名前を表しています。

このグラフの縦軸は大きな目盛りがひとつ進むと10倍になるように作られていて、広い範囲の数値を示すのに便利なように作られています。このグラフをよく見るとわかるように、KEKB とその好敵手であるアメリカの PEP II のルミノシティはそれまでに建設された衝突型加速器のほぼ一桁上の値に達しています。特に KEKB は 1034 に乗った世界最初の衝突型加速器です。