第24回 令和5年度 高エネルギー加速器研究機構 技術職員シンポジウム | |||||
令和5年3月6日(水) | |||||
No | 講演者 | 所属 | 報告タイトル | 要旨 | |
1 | 大角 義浩 | 鹿児島大学 大学院理工学研究科技術部 |
国立大学の教育研究系高度技術専門職(エンジニア職)と人事システム
参考資料 「「技術職員と技術職員組織に関するアンケート」報告書 |
令和3年3月に閣議決定された科学技術・イノベーション計画では、「・・・エンジニア(大学等におけるあらゆる分野の研究をサポートする技術職員を含む)といった高度な専門職人材等が一体となったチーム型研究体制を構築すべく、これらが魅力的な職となるよう、専門職としての質の担保と処遇の改善
に関する取組を実施する」とある。世界のトップ大学と伍して競争する大学の技術支援体制はどのようなものかという問題意識の基に下記の点を調査した。@国立大学の技術職員の置かれた立場とは何かを共同利用機関との比較、定員削減が進む構造から探るべく文献調査し、A現状の職務・課題を技術部の管理職へのヒアリングおよび各技術部へのアンケートを行い、B今後のあり方の参考として、欧州の技術職員を文献で調査するとともに、沖縄科学技術大学院大学を実地調査した。研究の概要を説明する。 【レジュメ】 |
|
2 | 木村 悟 | 北海道大学 大学院工学研究院 |
機関の枠を超えた取組による持続的な人材育成 〜NMR担当技術職員編〜 |
本活動を開始した令和元年度当時は第5期科学技術基本計画に基づき、全国の大学・公的機関で研究基盤の共用化が進められ、共用体制の継続的な運用に「高度で専門的な知識・技術を保有する技術職員の確保が困難」ということが共通課題の一つとして認識され始めた時期であった。本チーム(NMR Club)は上記課題の解消には「機関の枠を超えて専門的な知識・技術を習得できる環境整備」が急務であると考え、大学連携研究設備ネットワークの支援の下、NMR担当技術職員間のネットワーク構築、セミナー・講習会の企画・共同受講を行ってきた。本発表では上記の活動概要と得られた成果、活動継続により視えてきた課題について紹介する。 | |
3 | 西川 嘉子 | 奈良先端科学技術大学院大学 技術室 |
機関の枠を超えた取組による持続的な人材育成 〜MS担当技術職員編〜 |
質量分析技術者研究会は、大学及び大学共同機関等の技術職員で質量分析に関わっている技術者を中心に、質量分析技術の向上を目指して発足した会である。会員は国内外の初学者からベテランまで幅広く、その専門範囲も物理・化学系から材料系、生物系をフォローしている。具体的には毎年1回から数回の研究会を主催しており、現場の技術者が専門的知識の基礎を繰り返し学習しつつ、経験談を交えてより実践に即した応用技術を学び、さらなるスキルアップを行っている。研究会を通じて実務者や装置等メーカー技術者からのアドバイス、技術開発のための情報を得ることができ、新人育成や相互交流を促進できる場となっている。横のつながりから誰でも相談ができ、特に初学者に馴染みやすくなるよう閾値の低い運営を心掛けている。本発表ではこれまでの活動の成果を報告する。 | |
4 | 中坪 俊一 | 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 | 国立大学等の技術職員との人事交流・技術交流について | 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所先端工作技術グループでは、2016年の発足時より、国立大学等に在籍している技術職員の方々を招聘し宇宙航空に関わる”ものづくり”活動をおこなっている。発足から約8年が経過し、これまで当グループに籍を置いた6大学1機構、計11名の方々によりグループは支えられ、発展してきたと言っても過言ではない。また、任期満了後帰任された8名の方々とは、現在も共同研究や技術協力、情報交換など様々な形で交流が続いている。本発表では、当グループが取り組んでいるこの人事交流活動について紹介をさせていただき、多くの大学で取り組みはじめた技術職員の学外研修(技術交流・人脈形成)の一助になればと思い発表いたします。 | |
5 | 佐々木 茂子 | 岩手大学 技術部 | 他機関の技術者による共用分析機器担当者の技術力強化トレーニング実施報告 | 全学共用分析機器担当者の技術力強化のため、他機関の優秀な技術者によるトレーニングを企画・実施した。同機種のエキスパートを探し、実施内容の検討、日程調整、講師依頼等の手続きを行った。今年度の対象機器は、質量分析計JMS700、固体NMR、単結晶X線構造解析装置、MALDI-TOFMSである。内容は、機器の保守管理・メンテナンス法および基本操作手順の説明と実施が中心であった。トレーニング後は、報告書を基に受講者とのディスカッションを繰り返し、問題点や課題を見出す工夫を施した。今回は、従来の方法の確認や、他機関との比較による最適手法の確立など、大きな収穫を得た。今後は対象装置を増やし、レベルアップを目標に継続していく。 | |
6 | 原槙 稔幸 | 大分大学 理工学部技術部 | 多様性と協調:大分大学理工学部技術部におけるチームワークの促進 | 本講演では,大分大学理工学部技術部のチームワークと連携の取り組みを紹介します。技術部の主要な業務は,学内組織からの長期業務,単発プロジェクトなどの短期業務,及び技術部内のワーキンググループに分けられます。技術部のメンバーは,異なる分野の技術スキルと多様な考え方,モチベーションを持っておりますが,彼らがチームとなり,互いに協調して理工学部や大学への貢献を目指しています。本講演では,世代やスキル,考え方が異なる多様なチームメンバーがどのように連携して業務を遂行しているかをご紹介します。また,組織としての心理的安全性を保つための取り組みや,みんなが幸せに働くための働き方改革への取り組みにも焦点を当てます。 | |
7 | 古海 弘康 | 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 | 昭和オヤジ課長が語る「情念」の組織論ことはじめ | 『組織は「生きもの」ゆえ、いつでもどこでも万能な制度や仕組みは存在せず、想定外のことも起きるのが常だ。組織という、ヒトとヒトとの情念の化学反応が織りなす一種の生態系において、このメカニズムを味わい理解しようと努力することは徒労なのだろうか?』(2023年度第46回生理学技術研究会予稿(古海)より。) 技術職員が職場で直面する「感情・心理面」に切り込む組織論。 「技官の悲哀」、「ルサンチマン」を乗り越えるべく自己と闘う組織論。 技術職員の技術職員による技術職員のための組織論。 その意味で、ヨソとは一線を画すワレワレの組織論。 マニュアル類など何の役にも立たない、組織で起こる情念の化学反応に対峙すべく、昭和オヤジ課長は今日も行く。 | |
8 | 小菅 隆 | 高エネルギー加速器研究機構 | KEK技術職員のパートナーシップ | 昨年のこのシンポジウムでは、KEKには技術部がないこと、KEKの技術職員は、教員・研究者の強力なパートナーとしての技術の専門家であること、を述べました。今回はこのパートナーシップについて考えてみたいと思います。KEKの技術職員は、装置を作ることができる・運用できる専門的な技術者です。KEKの推進する加速器科学は、研究も技術も、そして装置も複合的で多様化しています。技術の連携、技術者のパートナーシップがとても大切です。今回の報告では、技術部のないKEKではどのように委員会などの活動を自主的に展開できているのか、そして研修やセミナーを中心としてKEK内だけでなく広く他機関との連携を推進していることをお話しします。最後に、これからの実践的な連携を目指してKEKの考えていることにも触れたいと思います。 |