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Belle II実験で積分ルミノシティが1インバースフェムトバーンを更新

2019年3月11日から始まったBelle II実験の本格的運転において、5月14日に収集したデータ量を表す積分ルミノシティが1インバースフェムトバーンを超えました。インバースフェムトバーン(fb-1)とは、素粒子の衝突の量を表す単位で、Belle II実験においてはB中間子・反B中間子対がどの程度できたかを知る材料となります。Belle II実験では、KEKつくばにあるSuperKEKB加速器で電子と陽電子を衝突させ、大量のB中間子・反B中間子対を生成し、その性質を調べる事でまだ見ぬ新物理の解明を目指しています。

 

KEKの施設では、1つの入射器(線形加速器)で電子と陽電子の2種の粒子を作り、それをSuperKEKB加速器の2つのリングに入射します。これまで、電子を周回させている高エネルギーの電子リング(High Energy Ring: HER)と陽電子を周回させている低エネルギーの陽電子リング(Low Energy Ring: LER)で、電子ビームと陽電子ビームのそれぞれの入射について、ビームの軌道の不安定性などからBelle II測定器にとって大きなバックグランドが観測されていました。これによって、入射中は検出器の高電圧がかけられず、データ収集はビーム入射後に蓄積モードになってから開始されていました。このため、データ収集効率が高くない状態が続いていました。

そこで、KEK加速器グループと協力しながら、ビームの不安定性を小さくするために揺れを研究し、機器の調整を行ってきました。長期に亘る試行錯誤の末、遂にバッググラウンドの影響無く入射しながら運転できる様になりました。さらに、その状態を長期間維持できる様になり、HERとLERのどちらも連続してビームを入射し、衝突させることができる様になりました。その結果、先週に入ってからルミノシティも安定して測定が可能となり、データ取得の効率も上がり、遂に1インバースフェムトバーンを超えたのです。

Belle II実験のプロジェクトマネージャーである後田 裕 教授は「たった1インバースフェムトバーンですが、これからどんどんデータが増えていくポテンシャルを感じているので非常に楽しみです。」とコメントしました。

Belle II測定器の運転責任者である足立 一郎 准教授は「やっとスタート地点に立つ事が出来ました。これからより順調にデータを蓄積し、物理解析に入りたいです。協力して下さった加速器グループやその他の方々に感謝します。」と顔をほころばせていました。

内部検出器を担当している田中 秀治 准教授は「データ量は1%にも満たないですが、ルミノシティをあげる目処が立ちました。問題を解決できる能力が備わった事を実感しています。」とコメントしました。

加速器グループの大西 幸喜 教授は「これまで加速器グループが目標としてきた安定な連続入射を達成できました。ルミノシティの調整もしやすくなるので、加速器向上の足がかりができました。1インバースフェムトバーンは小さな1歩ですが、SuperKEKB加速器、Belle II実験にとっては大きな1歩です。」と嬉しそうに話していました。

Belle II実験では、今後10年弱ほどデータを取り続け、前身となるBelle実験の50倍の積分ルミノシティを得る事を目標としています。データを取りながら同時進行で解析も進め、新物理発見にも挑んでいます。


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