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Belle II 実験 中央飛跡検出器CDCのインストール完了
2016年10月21日
10月11日から14日にかけて、筑波実験棟にてBelle II 実験の中央飛跡検出器(Central Drift Chamber; CDC)のインストール作業が行われ、無事に据え付けが完了しました。
CDCはBelle II 測定器の中央部分に設置される大きな円筒型のガス検出器です。 Belle II 実験のメイン検出器のひとつで、内部に張られた約56,000本のワイヤーを使って、電荷を持った粒子の符号の識別や運動量を測定します。 また、CDCで得られた信号はBelle II 実験全体のトリガー信号(データ取得のGOサインを出す信号)としても使われます。
現在は、信号を読み出すエレクトロニクスのケーブル取り付け作業を行っています。 その作業の終了後、約1ヶ月ほどかけて信号読み出しの動作試験や宇宙線を使った性能評価試験を行う予定です。
CDCの測定原理の簡単解説
CDCの大きさは、内径約32cm、外径約226cm、長さ約260cmあり、ひと1人が簡単に隠れられるほど大きな円筒形をしています。 その内部には直径30ミクロンの金メッキタングステンを使用したセンスワイヤーが14336本、直径126ミクロンのアルミニウム合金を使用したフィールドワイヤーが42240本張られ、ヘリウムとエタンの混合ガスで満たされています。
荷電粒子が検出器内を通過すると、この混合ガス分子が電子と陽イオンに電離します。 電離した電子は、検出器内に張られたセンスワイヤーに印加された高電圧が作る電場に沿って加速されます。 さらに、この加速された電子が周りの混合ガス分子に衝突し、電離させることで、電離電子の数がネズミ算式に増加。 この過程をガス増幅や雪崩増幅と呼びます。
ガス増幅によってセンスワイヤーに生じる誘起電流を信号として読み出し、荷電粒子がどこを通過かという情報から飛跡を再構成します。 飛跡の曲がり具合から運動量を求めることができ、また、検出器には磁場がかかっているため、曲がる向きから電荷の符号が識別できます。