KEKBにおいてビーム・ビーム衝突の観測に成功

 KEKBは、ボトム・クオークにおけるCP不変性の破れを検出するための非対称エネルギー2リング型電子・陽電子衝突型加速器であり、8GeV(80億電子ボルト)の電子を蓄積するリング(HER)と、3.5GeV(35億電子ボルト)の陽電子を蓄積するリング(LER)、これらのリングにビームを供給する電子線形加速器から構成される。電子と陽電子のエネルギーが異なることから非対称エネルギー衝突型加速器といわれる。2つのリングは1ケ所で交差し、そこで、それぞれのリングを反対方向に周回する電子と陽電子が衝突する。衝突点を囲んで、BELLE測定器が設置される予定である。KEKBは、これまでの電子陽電子衝突型加速器の一桁以上の性能を目標としている。

 KEKBの建設は、1994年から開始され、昨年12月1日から、KEKB加速器の総合調整運転が始まっている。それぞれのリングへのビーム蓄積や、電子、陽電子入射切り換えなどの試験を経て、2月4日夜から、電子と陽電子の衝突を試み、2月5日午前7時5分にビーム衝突の観測に成功した。衝突の観測は、電子ビームと陽電子ビームがお互いに相手を蹴る現象により行った。衝突点におけるビームを近づけていくと次第に蹴り角が大きくなり、ビーム間の距離がビームの大きさ程度になったときに最大となる。さらにビーム同士が近づくと、蹴り角は減少を始め、距離0のときは、蹴り角も0となる。ビームが行きすぎて、離れ出すに従い、今度は、逆向きの蹴りを受けるようになり、ビーム間距離がビームの大きさ程度になったとき、最大の逆向きの蹴りを受け、その後次第に蹴りが小さくなる。別に示した図は、左右方向でビームを近づけたときと、垂直方向に近づけたときの、ビーム間距離と蹴りの大きさを示す。

   
 水平方向のビーム偏向
  横軸:±3.3mの領域 
垂直方向のビーム偏向
横軸:±70μmの領域

 今後、設計性能を達成するために蓄積電流を増加させていく予定であるが、すでに、電子リングには26mA、陽電子リングには61mAの電流を蓄積することに成功している。




電子入射部付近及びARES空洞
左右に並べられたKEKBの
電子(左)・陽電子(右)リング
衝突点付近(BEAST測定器・
超伝導収束電磁石)

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