ハイライト

2010年 第4回アジアサイエンスキャンプ

2010年9月30日

インド、ムンバイ市で2010年8月17日から8月21日に物理、化学、生物分野の科学に興味を持つ、高等学校、高等専門学校、大学、大学校の学生を対象とした、第4回アジアサイエンスキャンプが開催されました(図1)。


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図1 インド、ムンバイ市で開かれたアジアサイエンスキャンプの参加者

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より


アジアサイエンスキャンプはノーベル賞学者や世界のトップレベルの研究者による講演、講演者がリードするディスカッションセッションなどにより、アジアからの参加学生が直接科学の面白さを体験し、また学生同士の交流を深める場です。2005年のリンダウ会議の際、小柴昌俊博士(2002年ノーベル物理学賞受賞者)とYuan T. Lee 博士(1986年ノーベル化学賞受賞者)の間で、アジアの若者のためにトップレベルの学者と若い学生の交流プログラムをはじめたいと発案されました。これまで、台北(2007年)、バリ島(2008年)、つくば(2009年)で開催されました。

今年のキャンプには、開催国であるインド、また中国からそれぞれ約30名が、日本からは12名(男子8名、女子4名)の参加で、アジアの17の国と地域より総勢で198名の参加がありました。KEK(高エネルギー加速器研究機構)は日本の対応機関として、日本からの派遣学生の募集、選抜、インドの2010アジアサイエンスキャンプ組織委員会への学生の推薦を行いました。また、素粒子原子核研究所理論センターの岡田安弘教授と野尻美保子教授がムンバイに学生を引率しました。

プログラムは、2008年のノーベル物理学賞受賞の小林 誠KEK特別栄誉教授(図2)と、2001年のノーベル化学賞受賞のリヒャルト・R・エルンスト教授(図3)を含む10名の物理、化学、生命の専門家による講演と、学生たちがテーマ毎に4~5名のチームに分かれて議論をし、ポスターを製作し競い合う、「キャンプ」と称されるディスカッションセッションから成りました。ポスター製作のためのチームは出身国や地域が混じり合い、その場で相手を見つけての国際共同チームです。「その場でのチーム分け方式」は昨年のつくばでのキャンプから取り入れられたものです。


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図2 講演を行う小林 誠KEK特別栄誉教授

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より



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図3 講演を行うエルンスト教授

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より


講演では幅広い科学の話題が取り上げられました。ポリヤコフ教授の「Green chemistry and supercritical fluids(環境に優しい化学と超臨界流体)」や、C.N.R.ラオ教授による「Nanoworld(ナノワールド)」、バラスブラマイアン教授の「Cells and stem cells(細胞と胚性幹細胞)」、また、Y.ラオ教授による「Genetics and behavior(遺伝と行動)」といった様々な研究分野の魅力を紹介する講演がありました。また、小林教授やT.V.ラマクリシュナン教授、ジャイネンドラ・ジャン教授たちによる、理論の講演もあり、その歴史的な経緯や、教授たち自身が直面した問題についての話がありました。高分解能NMRの開発に貢献したリヒャルト・エルンスト教授や、ポール・マツダイラ教授は、科学の研究における技術や道具の開発の重要性について講演をおこないました。ポリヤコフ教授とエルンスト教授は科学の研究が及ぼす社会への影響や社会の持続可能性について取り上げました。物理、化学、生物といった学問の領域を超え、それぞれの専門分野を取り入れて、広く科学を進めていくといった点が議論されました。

こうした講演や、ディスカッションセッションでの講義をもとにして、3日目から各チームはポスター制作を行いました(図4)。学生によってとりあげられたテーマも多種多様。講演に刺激を受け、エネルギー問題や、気候変動、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーといった応用研究分野を選んだチームもあれば、対称性や、素粒子物理学といった理論物理学を選んだチームもありました。 


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図4 ポスター作製中の学生たち

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より


期間中にはツアーが組まれ、タタ基礎研究所を訪れました。大学院生が各施設の見学や、実験のデモ、研究紹介を行いました(図5)。この研究所では、一般公開などにも力を入れており、普段から大学院生による研究の紹介に力を入れているということです。またネールプラネタリウムにも立ち寄り、インドの宇宙開発プログラムが織り込まれた太陽系に関する教育映像を鑑賞しました。(図6)


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図5 タタ基礎科学研究所を訪れ大学院生による研究の紹介を受ける学生たち

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より



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図6 ネールプラネタリウムにて

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より


キャンプの最終日となる5日目、全部で35のチームのポスターの中から7人の審査員が口頭発表を行う9つのポスターを選び、口頭発表の後、最終的にメダル授与の対象の5つが選ばれました。

金賞は、「The transformers - Trap to kill AIDS」(図7)と題したウイルスの変異に関しての研究をまとめたチームが勝ちとりました。銀賞は「Water Greenification」(図8)と「Don't be fools. Use Biofuel」(図9)が、銅賞は、「Cancer saves」(図10)と「Photo-chemiosmotic Cell-Gren Energy Redefined」(図11)が受賞しました。


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図7 金賞を取った
「The transformers - Trap to kill AIDS」

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より

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図8 銀賞の
「Water Greenification」

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より

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図9 銀賞の
「Don't be fools. Use Biofuel」

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より

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図10 銅賞の「Cancer saves」

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より

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図11 銅賞の
「Photo-chemiosmotic Cell-Gren Energy Redefined」

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より


閉会式では、参加学生に、今後リーダーとしてアジアを引っ張り、分野を越えて社会貢献となる科学を推進して行って欲しいという期待のメッセージが送られました。そして、インドはダンスの国、第4回サイエンスキャンプはインド舞踊(図12)で締めくくられました。来年のアジアサイエンスキャンプは韓国で開催される予定です。

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図12 閉会式で披露されたダンス

画像提供:アジアサイエンスキャンプインド事務局より



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