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last update:09/08/13  

   image 夢がはじまる時    2009.8.13
 
        〜 学生たちの交流イベント 〜
 
 
  今年の夏はつくば市で若者向けの様々なイベントが開催されました。アジア各国の高校生や大学生にノーベル賞受賞者らが最先端の科学について交流をする「2009アジアサイエンスキャンプ」や、国際物理オリンピックの日本代表を選出する国内予選「物理チャレンジ」など。それぞれのイベントの目的や参加者の顔ぶれは様々ですが、共通しているのは日本の各地から、あるいは世界の各国からつくば市に集まってきた若者たちのキラキラした瞳と、すぐに打ち解けて交流する屈託のない笑顔。KEKがこの夏、主催、共催した様々なイベントについてご紹介しましょう。

アジアの若者に「夢のスタートライン」を

ニュートリノの研究で2002年のノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士が2005年、ドイツのリンダウで開かれたノーベル賞受賞者会議に参加したときのこと。50年以上の伝統を持つこの会議のすばらしさに感嘆するとともに、アジア人学生の数が非常に少ないことが気にかかり、同席していた李遠哲博士(1986年ノーベル化学賞受賞)とともに、アジアでもキャンプを開催することにしよう、と話が進んだそうです。

第1回のアジアサイエンスキャンプは2007年台湾で、第2回は2008年インドネシアで開催され、今年は3回目となりました。志望の動機を英語で綴った応募書類を元に、182名の学生たちがアジアの19の国と地域から選抜されました。8月2日から8日まで一週間にわたって、アジア各地域からつくば国際会議場に集まった若者たちは、アジアのノーベル賞受賞者7名を含む物理学、化学、生物学、天文学など超豪華な講師陣による講義を聴講し、学生同士で英語でディスカッションをしたり、グループに分かれてポスター発表を行いました。さらにその忙しい合間を縫ってつくば市内の研究所や岐阜県のスーパーカミオカンデなどを見学するなど、とても密度の濃い時間を過ごしました。

このキャンプの意義について小柴博士は、「どんなに難しい研究でも、自分が本当にやりたいことであれば、どんな困難でも乗り越えられるもの。若い人たちが、いろいろな人と議論して、いろいろなことを試して、自分のやりたいこと、やれることを見つけて欲しい。夢を抱かなければ何も始まらないのです」と語っています。

若者たちのポスター発表は天皇皇后両陛下もご覧になり、送別パーティでは学生たちとお言葉を交わされました。

日本から世界の舞台へ

アジアサイエンスキャンプと同じ8月2日に、会場も同じつくば国際会議場でスタートしたのが「物理チャレンジ」です。これは全国の高校生・中学生を主な対象として物理の面白さや楽しさを体験してもらうコンテストであり、国際物理オリンピックの日本代表選考も兼ねています。2005年が世界物理年であったことを記念して、日本物理学会、応用物理学会、日本物理教育学会や筑波大学、岡山大学などが実行委員会を結成し、筑波大学と岡山大学で2年ごとに開催しているもので、今年が5回目となります。

全国70カ所で開催された理論問題と実験課題レポートを解く「第1チャレンジ」を突破した100名ほどの中高生が、8月2日から5日までつくば市に集まりました。

つくば国際会議場で開かれた開会式では、小林誠KEK特別栄誉教授が「20世紀の物理学では相対論と量子論が重要な礎となっている。ところがこのふたつはとても相性が悪いのです。みなさんしっかり勉強して、21世紀の物理学を進めてください」と若者たちにメッセージを送りました。その後、高崎史彦KEK理事が、素粒子物理学の進展と、KEKの加速器を使ってどのように小林・益川理論を検証したのかについて解説しました。

翌3日と4日、学生たちは筑波大学の会場で理論と実習のコンテストにチャレンジしました。夜は宿泊会場となったKEKで遅くまでグループディスカッションを行いました。

4日、コンテストを終えた学生たちは、産業技術総合研究所や宇宙航空研究開発機構といったつくば市内の研究所とともにKEKでも巨大な実験施設を見学し、東海村のJ-PARCを使ってニュートリノ振動実験を行うT2K実験などについて、実験グループ代表の小林隆教授から講義を受けました。

その後の懇親会では、ピアノ演奏や大道芸を披露するなど、物理好きの学生たちからは一見想像のつかないような隠し芸が飛び出すなど、若者らしい賑わいを見せました。お互いにすっかり打ち解けた様子で他の学生たちとメールアドレスを交換したり、来年以降の再会を約束したりする様子があちこちで見られました。

イベントが多い夏休み

中学校や高校が夏休みになる7月から8月にかけて、つくば市内の研究機関は大忙しのシーズンとなります。KEKが主催共催する催しの他にも、筑波大で開催の「国際生物学オリンピック」が開催されたり、大きな国際会議が続きました。

KEKでも団体見学や実習の開催が毎日のようにあります。また、KEK主催の催しとして、8月20日から28日にかけて、大学生を対象とした第3回大学生のための素粒子・原子核スクール「サマーチャレンジ」が、9月1日から4日にかけて、加速器について学ぶ「高エネルギー加速器セミナー OHO」が開催される予定です。

学生たちを受け入れる現場の研究者や職員の苦労もあるにはありますが、学生たちのにこやかな笑顔や、活発な質問が飛び交う様子を見ると、疲れも吹き飛びます。

次の世代を担う若者たちの夢が、このようなイベントの中から生まれてくるといいですね。



※もっと詳しい情報をお知りになりたい方へ

→2009 Asian Science Campのwebページ
  http://asc09.kek.jp/(英語)
  http://asc09.kek.jp/ja/(日本語)
→全国物理コンテスト 物理チャレンジのwebページ
  http://www.phys-challenge.jp/
→サマーチャレンジのwebページ
  http://ksc.kek.jp/

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[図1]
ノーベル賞科学者らと2009アジアサイエンスキャンプに参加した学生たち。最前列左から:鈴木厚人氏(KEK機構長)、古在由秀氏(県立ぐんま天文台長)、李遠哲氏(1986年ノーベル化学賞受賞)、田中耕一氏(2002年ノーベル化学賞受賞)、小柴昌俊氏(2002年ノーベル物理学賞受賞)、楊振寧氏(1957年ノーベル物理学賞受賞)、江崎玲於奈氏(1973年ノーベル物理学賞受賞)、小林誠氏(2008年ノーベル物理学賞受賞)、ラジャゴパラ・チダムバラム氏(インド主席科学技術顧問)。
拡大図(117KB)
 
 
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[図2]
アジアサイエンスキャンプで実習中の学生たち。
 
 
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[図3]
アジアサイエンスキャンプ3日め、学生たちは複数のグループに分かれ、岐阜県神岡のスーパーカミオカンデ、つくば市内のKEK、産業技術総合研究所、宇宙航空研究開発機構などをそれぞれ見学した。(上)東京大学宇宙線研究所・神岡宇宙素粒子研究施設(カミオカンデ)(下)KEKのBファクトリー実験KEKB加速器。
拡大図上(99KB)][拡大図下(116KB)
 
 
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[図4]
(上)学生たちによるポスター発表を視察された天皇皇后両陛下、(下)両陛下はその後KEKをご訪問になり、鈴木厚人機構長の案内でBファクトリー実験施設を見学された。
 
 
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[図5]
物理チャレンジで全国から選抜された高校生の前で挨拶する小林誠特別栄誉教授。
拡大図(29KB)
 
 
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[図6]
物理チャレンジで生徒の質問に答える高崎史彦KEK理事。
拡大図(50KB)
 
 
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[図7]
物理チャレンジの懇親会で学生たちと交流するKEK素粒子原子核研究所の西田昌平助教。
拡大図(69KB)
 
 
 
 
 

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