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高校生の秋キャンプ 2006.9.21 |
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〜 ベル・プリュスで研究最前線体験 〜 |
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世界最高性能のKEKB加速器で宇宙や素粒子のいろいろな謎に迫るBelle実験グループ。全国から集まった高校生が、本物の測定器や実験データを使って、研究者の仕事の現場を体験した企画「ベル・プリュス」の3日間についてご紹介しましょう。 ほんとうは楽しい?研究生活 宇宙の謎にせまる研究を進める物理学の研究者というと、どのような人物を想像しますか?白衣を着て薄暗い研究室の片隅でぶつぶつとつぶやいている孤高の人物?まじめで気難しい人々がたくさんうろついている怪しげな雰囲気の研究室? 百聞は一見にしかず。実際の研究現場は、巨大で複雑な実験装置と最先端のコンピュータを自在に操りながら、世界各地から集まった同僚たちと一緒に様々な議論を活発に積み重ねながら、誰も知らない自然科学の新しい法則を最初に見つけていこう、という意気込みと活力に満ちあふれています。 Belle実験グループでは、奈良女子大学の片岡佐知子博士研究員を代表者として、高校生を対象とした体験実習「ベル・プリュス」という秋キャンプを企画しました。この企画は、科学技術振興機構の研究者情報発信活動推進モデル事業の一つとして採用され、奈良女子大学主催、KEK共催、科学技術振興機構支援のもとで9月の連休の3日間にわたって開催されました。20名の定員に対して、北は北海道から南は岡山県まで、全国から22名の熱心な高校生が参加しました(図1)。Belle実験グループからは奈良女子大学5名、KEK12名、他大学院生9名、さらに5名の外国人研究者が参加しました。 講義と見学とパーティと プログラム1日目はKEKの阿部和雄教授による素粒子物理学の講義から始まりました。参加者の皆さんはご両親や先生の許可を得て自分でこの企画に申し込んだだけあって、高校の授業では習わないような、かなり高度な話にも目を輝かせて聞き入っていました(図2)。 講義が終わると、Belle測定器とKEKB加速器のトンネルの見学です。巨大な測定器や加速器のトンネルに圧倒されながら幅淳二教授の説明を聞き、真空ポンプの仕組みや加速器の電磁石で電子や陽電子の軌道をどのように制御しているのかなどのかなり専門的な質問が相次いでいました(図3)。 加速器を使った大型実験では国内外のいろいろな研究者と一緒に仕事をしたり、海外の会議で自分の研究成果を発表したりします。そこで日本語はもちろん、英語も駆使して他の人とコミュニケートして仲良くなる能力も重要です。そのようなときにパーティや懇親会で楽しく他人と会話することがとても役立ちます。 全国から集まった高校生たちはこの日が初めての顔合わせでしたが、パーティで自己紹介やクイズなどで遊ぶうちにすっかりうちとけ、ずっと前からの友達のように楽しい時間を過ごしました。 ソフトウェアコースとハードウェアコース 2日目の午前中は、素粒子をつかまえるワイヤーチェンバーを協力して組み立てて、宇宙線を捕まえる実習でした。髪の毛のように細い導線をハンダ付けしてアルミでできた筒の中央に固定します。これに特殊なガスを流して高い電圧をかけると、筒の中を粒子が通過する際に生じる電気信号を観測することができます。 午後はソフトウェアコースとハードウェアコースの2つの班に分かれました。ソフトウェアとはコンピュータの上で用いるプログラムやデータなどのことですが、ここでは「B-Lab(ビーラボ)」という実験データ解析プログラムを用いて、Belle実験の本物のデータを解析し、まだ見つかっていない未知の粒子が隠れていないか探索します。 データの解析には運動量保存の法則という物理学の概念を用いるのですが、その様子を体感するために、人が乗ったホバークラフトを2台使って、お互いに押し合うとどのような運動をするのかを実験で確かめました(図4)。楽しい実験ですが、いろいろな試行錯誤を繰り返すうちに測定精度などについての工夫や考察が理解できたようでした。 ハードウェアコースではBelle測定器の本物を用いて、空から降ってくる宇宙線の速さや角度分布を測定しました。Belle測定器はコンクリートの建物の地下4階に設置されていますが、宇宙線の中に含まれるミュー粒子が地下まで降り注いでいて、Belle測定器でとらえることができます。オシロスコープを使ってBelle測定器から出てくる生の信号を観察して速さを計算したり(図5)、コンピュータのプログラムで処理される軌跡の解析データを整理して、角度の分布を調べたりしました。 研究発表の準備とグループ発表 研究を行ったら、その成果を学会や国際会議で発表することも研究者の日常生活の一つです。自分たちが行った測定はどこまで正しいのか、測定精度はどれくらいか、なにがどのようにわかったのか、などを、どのように伝えれば他の人にも理解してもらえるのか、あれこれと準備をします。研究者にとっては楽しくもあり、時にはつらいこともあるひとときです。 ソフトウェアコースとハードウェアコースでそれぞれ2つずつのグループに分かれ、発表をどのようにまとめるかで楽しい議論を戦わせながら、2日目の夜が更けていきました。 3日目は発表の練習と本番の発表です(図6)。みんな楽しく和気あいあいと、しかし堂々と自分たちのグループが行った実習について発表しました。 この企画を視察された高校の物理の先生は「学校では友達と物理の話題で盛り上がることのできなかった子どもたちが、ここへくると同じ話題で盛り上がることのできる仲間を見つけて、水を得た魚のようだ」と驚いていました。 今回のベル・プリュス企画代表者の片岡佐知子さんは、「自分たちが関わっている素粒子研究の現場の雰囲気や楽しさを高校生にもぜひ味わってほしいと思い、この企画を考えました。思っていた以上に深いところまで理解してもらえたようでよかったです」と語っています。 Belle実験グループでは今後もいろいろな実習企画を行う予定です。KEKホームページのイベント欄などにご注目ください。
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