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新粒子を発見しよう! 2004.7.22 |
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〜 世界初! 粒子探索プログラム B-Lab 〜 |
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新しい粒子を自分自身が作ったプログラムで発見してみたい! そんなことを考えたことはありませんか? 「でも素粒子のプログラムなんて難しそう」「実験データって公開されてるの?」 そんな疑問に「B-Lab」という粒子探索プログラムが答えてくれます。今日はBelle実験グループが開発したこの「B-Lab」についてご紹介しましょう。 あなたもできる新粒子の発見? 昨年11月、Belleグループが発見した新粒子 X(3872) をご記憶でしょうか?クォーク4個の組み合わせでできていると思われる、新しい種類の中間子です。 太陽系は長い間、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、という9つの惑星で構成される、と考えられてきました。今でもそれは正しいのですが、9つの惑星の他にも様々な軌道を持つ無数の小惑星や彗星などの天体があり、これらの天体は従来考えられてきた以上にダイナミックな太陽系像を私たちに与えてくれるようになりました。 天文学の世界で新天体の発見にアマチュアが貢献しているように、素粒子の世界でも、これまで専門家がほとんど研究してこなかった領域で、誰も予想していなかったような新発見が生まれる可能性があります。 Belle実験グループでは、高校の科学クラブの生徒などを対象として実験データの一部を公開し、新粒子の探索を行なう「B-Lab」というプログラムを始めました。高エネルギー実験の分野でこのように本物の実験データが一般に公開されて粒子探索に参加できるようになったのは世界でも初めての試みです。 公開授業 7月8日、Belleグループは茨城県つくば市の竹園高校で科学クラブ物理班のメンバーを対象に「B-Lab」の公開授業を行ないました(図1)。 授業を担当したのはBelleグループに属する奈良女子大学の大学院生の片岡佐知子(かたおか さちこ)さんと井本絢子(いもとあやこ)さんです(図4)。まず、素粒子の種類や加速器を使った素粒子の実験の説明などから始まり、これまでに見つかっている粒子の種類や発見の歴史を解説し、実際にどうやってプログラムをパソコンに設定して解析するようにできるかの実演がありました。 その後、Belleグループが準備した「ホバークラフト」2台に、体重の違う生徒が乗って、静止した状態から押し合って離れていく時の速度を測定し、運動量保存の法則を体験しました(図3)。 運動量保存の法則を体験してもらうのは、この概念がB-Labのプログラムを理解する上でひとつの重要なステップとなるからです。 Belle実験のデータでは、B中間子と呼ばれる粒子が数百通りの壊れ方(崩壊)をします。データの中で実際に観測することができるのは、何段階かの崩壊の過程をくぐり抜けてきた数十種類の粒子なのですが、その中から運動量保存の法則などを使ってもとの粒子がどのような崩壊をしたかの組み合わせを考えていくと、数百通りにも数千通りにもなります。 その中には、世界のまだ誰も見たことが無い新粒子が含まれているかもしれない、というわけです。 B-Labを動かしてみる プログラムはまず、rootと呼ばれるコマンドを入力するところから始まります(図5)。参加者はこのrootの内部でさらにいろいろな解析プログラムを実行させて、新粒子を探索する訳ですが、B-Labではいくつかの例題プログラムが提供されていて、例えば1974年の「11月革命」としてチャームクォークの発見で有名になったJ/ψ(ジェイ・プサイ)という粒子をBelle実験のデータの中から見つけ出すことができます(図6)。 新粒子を探索するための「ルール」はほとんど無限に考えられるので、ちょうど小惑星や彗星をアマチュア天文家の方が発見するのと同じように、専門家では思いもよらなかった手法で新粒子が見つかることがあるかもしれません。 素粒子研究の潮流をもしかしたら若い世代の生徒達が完全に塗り替えてくれるかもしれない。そんなB-Labにあなたもチャレンジしてみませんか?
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