リニアック(Linac)
加速空洞を直線状に並べ、粒子を直線的に加速する加速器の総称で、線形加速器とも呼ばれる。この方式では、定常的にビームを取り出せるので、多くの粒子(大電流)の加速に適している。しかし、粒子は特定の加速空洞を1回しか通らないために、高エネルギーとするには数多くの空洞が必要となり経済的でない。このため、高エネルギーとするには、同じ加速空洞を粒子が何度も通しながら加速することができる円形加速器が用いられる。高エネルギー大電流加速器の設計においては、リニアックと円形加速器をどう組み合わせるかが、工夫のいるところである。
SNS(Spallation Neutron Source = 核破砕中性子源)
米国で建設が進められている大強度中性子源計画。2006年完成予定。
ドリフトチューブ型リニアック(Drift Tube Linac, DTL)
タンクと呼ばれる円筒形の空洞の中に、ドリフトチューブと呼ばれる電極を配置し、タンクに大出力の高周波電力を供給すると、中に時間的に変化する交番電場が発生する。陽子ビームはドリフトチューブの中心を通る。ビームがちょうどドリフトチューブの間に来たときに、加速方向の電場がかるようにすると陽子は加速を受け、反対方向の減速電場のときにはドリフトチューブの中に隠れて電場の力を受けないようにすると、加速のみの力を受けることができる。この原理を利用したリニアックがドリフトチューブリニアックである。
ビームは自分自身での電荷の力で反発し、そのままでは発散してロスしてしまうため、これを防ぐ目的で、ドリフトチューブの中にはビームの収束のための収束磁石(Q磁石)を配置する必要がある。
負水素イオン
原子・分子に電子が余分に付着し、全体として負に帯電したものを一般的に負イオンと言い、特に水素原子の負イオンのことを負水素イオンと呼ぶ。負イオンは特殊な条件下でしか生まれない上に消滅しやすいため、正イオンと比較して大量に生成するのは難しい。
電鋳法とワイヤーカッティング法
加速器ではビームの収束や偏向に電磁石が多く用いられ、その通電電流でビームの状態を最適に調整することができる。磁場強度の高い電磁石には、ホローコンダクターと呼ばれる銅パイプをコイル状に巻いて、その中に冷却水を通して冷やす構造を取るのが一般的である。ところがドリフトチューブに内蔵しなければならないほどの小型の収束電磁石では、冷却水路をつぶさないようにホローコンダクターを曲げることが困難で、これまで製作ができなかった。そこで、銅のブロックを切り出して電流が流れるコイルを形成し、冷却水が通る部分は側溝のように溝を掘り、最後にメッキ法を応用して銅の層で蓋をする、という過程での小型の電磁石製作法を開発し、ドリフトチューブに内蔵することに成功した。
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