2011年4月26日
4月22日(金)、欧州合同原子核研究機関(CERN:スイス、ジュネーブ)は、大型ハドロンコライダー(LHC)が、ハドロン衝突型加速器として最高のルミノシティを達成したことを発表しました。記録されたルミノシティは4.67×1032cm-2s-1で、米フェルミ国立加速器研究所のテバトロン加速器が2010年に達成した記録を更新するものです。
ルミノシティ(単位:cm-2s-1)とは、ビームとビームの衝突地点において、単位面積あたり毎秒何回ビーム粒子が交差したのかを表す指標で、衝突型加速器の要となるビームの衝突性能に相当します。この値が高ければ、一定の確率でしか起こらない稀な粒子の衝突反応が短時間でたくさん起き、研究にとって有用なデータ量を得ることにつながります。
LHCは、スイス・ジュネーブ郊外にフランスとの国境をまたいで設置されている、地下100m、一周27kmの世界最大の衝突型円型加速器です。CERNを中心とする国際協力で建設されました。衝突点でビームを絞るために用いられる四極超伝導電磁石は、KEKとフェルミ国立加速器研究所の技術開発によって製作されています。
LHCでは、陽子ビームを加速して正面衝突させることで、これまでにない高エネルギーでの素粒子反応を起こし、宇宙誕生直後の状態を再現します。LHCにはこれらの素粒子反応を捉える4台の粒子測定器(ATLAS、CMS、ALICE、LHCb)が設置されています。その中のATLAS測定器は、世界の約3000人の物理学者が協力して作り上げた世界最大の実験装置で、1億チャンネルを越える読み出し電子回路数を誇ります※。ATLAS実験グループには、KEKをはじめ日本の大学からの研究者や学生約100名が参加し、物理解析を進めています。
現在LHCはビームあたり3.5テラ電子ボルト(TeV)のエネルギーで運転されており、今年末まで運転が続けられる予定です。この期間に、新粒子の探索に十分なデータ量を蓄積することができ、質量の起源とされる未発見の素粒子「ヒッグス粒子」の存在を確認することが期待されています。
※日本グループは、超伝導ソレノイドマグネット、前後方ミューオントリガーチェンバー、トリガー回路、シリコン半導体飛跡検出器、ミューオン用TDCチップなどの建設を担当した。