対称性の破れが支える世界
鏡の中の自分を見つけられますか? 左右反対でも顔の手入れは困りません。でも鏡の中のあなたが鏡の外に出てきたら大変です。
自分に似た人間がいて腹が立つかもしれません。そんな時、ホクロのように対称でない特徴が重要になります。鏡の外の世界も、実は対称性が破れているおかげで安定して存在できるのです。物質世界の根底にある対称性の破れが、昨年以来、国際的に科学の大きな話題になっています。
反物質という言葉を聴いたことがありますか? 皆さんご存知の電子の反物質は陽電子と呼ばれます。電子はマイナスの電気を持ちますが、陽電子は他の性質は全く同じでもプラスの電気を持っています。陽電子なんて生活に関係がないようですが、医療現場では陽電子放射断層撮影法
(PET) として体の精密診断や脳研究に使われています。陽子や中性子の反物質、反陽子や反中性子も存在しています。反陽子と反中性子でできた原子核を回る陽電子の集まりから反原子をつくると、反世界も考えられるのです。でも、反世界が存在すると世界とは外見上区別がつかないだけではなく、一緒になると消えてしまいます。反世界がこの世にあると物質世界の安定は保証できません。
陽電子や反陽子などは加速器の実験では、いくつも発見されますが、幸いなことに宇宙からやって来る粒子を調べてみると反物質が大量に存在する証拠はまだ見つかっていません。
反物質は何故見つからないのか?多くの科学者は物質と反物質の間にある対称性の破れがもとで反物質が宇宙の歴史から失われたと考えています。