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. ● 失われた世界を探る
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* 対称性の破れが支える世界

鏡の中の自分を見つけられますか? 左右反対でも顔の手入れは困りません。でも鏡の中のあなたが鏡の外に出てきたら大変です。 自分に似た人間がいて腹が立つかもしれません。そんな時、ホクロのように対称でない特徴が重要になります。鏡の外の世界も、実は対称性が破れているおかげで安定して存在できるのです。物質世界の根底にある対称性の破れが、昨年以来、国際的に科学の大きな話題になっています。

反物質という言葉を聴いたことがありますか? 皆さんご存知の電子の反物質は陽電子と呼ばれます。電子はマイナスの電気を持ちますが、陽電子は他の性質は全く同じでもプラスの電気を持っています。陽電子なんて生活に関係がないようですが、医療現場では陽電子放射断層撮影法 (PET) として体の精密診断や脳研究に使われています。陽子や中性子の反物質、反陽子や反中性子も存在しています。反陽子と反中性子でできた原子核を回る陽電子の集まりから反原子をつくると、反世界も考えられるのです。でも、反世界が存在すると世界とは外見上区別がつかないだけではなく、一緒になると消えてしまいます。反世界がこの世にあると物質世界の安定は保証できません。

陽電子や反陽子などは加速器の実験では、いくつも発見されますが、幸いなことに宇宙からやって来る粒子を調べてみると反物質が大量に存在する証拠はまだ見つかっていません。

反物質は何故見つからないのか?多くの科学者は物質と反物質の間にある対称性の破れがもとで反物質が宇宙の歴史から失われたと考えています。



 

BELLE 測定器

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* 破れの検出続くBELLE実験

物質と反物質の対称性の破れをさらに細かく調べ、反世界が消えていった正しい理由を見つけることは、宇宙の謎を解明し、物質 の根元を探る科学の重要テーマの一つです。KEKは現在この研究でアメリカにあるスタンフォード線形加速器センターと競いながら世界をリードする実験を続けています。

物質と反物質の対称性の破れは「CP対称性の破れ」と呼ばれています。1964年、僅かながらもそれが中性K中間子で発見されました。KEKの小林 誠教授と京都大学基礎物理学研究所所長の益川 敏英教授は、共に京都大学理学部にいた1973年、「CP対称性の破れ」を未発見だった物質の基本粒子を加えて説明しました。これは小林・益川理論として世界的に知られています。予測された基本粒子はその後全て見つかり、「CP対称性の破れ」が比較的大きいと予測されたB中間子を使った実験が計画されました。

KEKでは、それに必要な加速器を建設し、さらに国際的な科学者チームがBELLEと名づけられた測定器を組み込んで実験を続けています。昨年夏、対称性の破れを解明する見事な実験結果を世界に発表しました。現在、さらに精度を上げ、そこに潜む未知の関係を追求中です。

 

失われた世界を探る(2)



 

BELLE グループ

 

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