世界記録を維持するKEKB加速器
B中間子の生産能力を維持するには強い電子ビームと陽電子ビームの衝突を絶えず続けなければなりません。多数の衝突を維持できる強いビームの能力をルミノシティと呼んでいます。前回、お話したようにB中間子をつかって物質と反物質の「CP対称性の破れ」を調べるには膨大な数のB中間子を生産しなければなりません。BELLE実験では昨年春以来、B中間子生産能力を示すルミノシティで世界最高記録を維持しています。
KEKBの衝突現場、B中間子誕生の場所には、B中間子誕生の現場を克明に記録する何種類もの測定器がバウムクーヘンの輪のように取り巻いています。この
測定施設はBELLEと呼ばれています。対称性の破れが見つけやすいB中間子に含まれるbクオークは英語でビューティあるいはボトムと呼ばれています。ビューティ(美)の性質を探る測定器ということで「美」を表すフランス語BELLEが用いられました。
BELLE実験では、二つの加速器通路で電子と陽電子を逆方向に異なるエネルギーに加速し、通路の交差点で衝突後誕生するB中間子が止まらないようにしています。これによってB中間子と反B中間子の僅かな対称性の破れも測定しやすくなっています。KEKB加速器とBELLE実験装置のこうした巧みな工夫については次の機会に紹介しましょう。