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   image KEKに見る夏の草花    2002.08.01
 

広い敷地のあるKEKに咲く春の草花の便りを掲載したのは4月11日でした。
あれから早いもので3ヶ月以上経ちました。梅雨が明け、もう子供たちの夏休みが始まりました。今年はKEKの一般公開は夏休み明けの9月1日になり、みんな張り切ってその準備を始めています。一般公開日のメイン会場のひとつが工作センターです。現在、この近くの草地などには、淡いピンク色をした花を付けたコマツナギが見られます。根と茎の繊維が強いのでなかなか切れません。それで馬をつなぐことが出来るのが名の由来だそうです。食堂前や宿舎近くの林床では、ノイチゴが実を付けています。ナワシロイチゴです。水気の多い甘酸っぱい実です。季節が合いませんね。現在では連休頃が田植え時期ですから、苗代ははるかに早く作ってしまっています。この木の白い花の季節が苗代の時期なのでしょうか?
昔、サッカー場脇の溝にはトラノオが群生していました。これにはオカトラノオとヌマトラノオの二種があるそうですが、ここでは恐らくヌマトラノオの方でしょう。白い小さい花を寅の尾状につけます。サッカー場脇の群落は絶滅したのではないかと心配しています。筑波実験棟近くの池の周りには今も見えると思います。この池の周りにはアヤメもきれいに咲くのをご存知でしょう。
 
この頃から、ツユクサ、ドクダミ等が見られます。ツユクサはおしべ・めしべを体にたとえると青い羽を広げた妖精に見えます。ドクダミは、やや暗い日陰の植物ですから、その白さを一層強調する花です。
サッカー場の脇の林床にはコオニユリが咲きます。20年前はこの近辺にコオニユリは見られなかったのですが、気候変化が群落を復活したのではないでしょうか。これは日本南部では一般的な百合なのです。日本中部以北はヤマユリがあります。ヤマユリは、守衛さんが数年前研究所の入り口で見事に咲かせていました。戦前はこれをヨーロッパへ輸出し、「ユリの女王」と言われ珍重されていたそうなのです(講談社「プラント・ハンター」)。所内には自生していませんが、学園都市内に2〜3ヶ所記憶にあります。花屋で売っているカサブランカという花は、このヤマユリを改良したものだそうです。それが輸入されているのです。同じ事情はアジサイにもあります。アジサイも原産は日本なのです。明治初期、日本を訪れたプラントハンター達は、日本の庭園業のホンの数分の一を見て、世界一の規模であると驚いていたそうです。このことから逆にわれわれは、江戸文明の懐の深さを知ることができます
 
万葉集に出てくる花を「万葉の花」といって、こういうタイトルの本も何冊かあります。ヘクソカズラもその一つです。筑波山に4月初旬に咲くカタクリは「カタカゴの花」として、大伴旅人が越後の国で歌を詠んでいます。さて、ヘクソカズラ、茎を手でしごくと匂います。花は直径5mm程度、花心は深い紫、周辺は白い筒状の花です。花期は長い花です。林辺の小木や植木に絡み付いているのが処処に見られます。クサレダマなどは名前で損をしていますが、この花は名実二つの欠点があることと、あまりにも目立たないことで損をしています。

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[ヘクソカズラ]   [キクイモ]
拡大写真(49KB)   拡大写真(34KB)
7月終わり頃、敷地北の端にキクイモが花を付けます。高さ1m以上にもなる大きな草花です。直径4cm程度の橙色に近い黄色い菊科の花。球根にでん粉が溜まります。戦中は食用にしたと聞いています。
8月秋のけはいを感じ始めると、敷地内のあちこちの草地でタヌキマメが花を付けます。花を見ると、漫画のタヌキがひょうきんな顔で立っているという印象の、薄い青色の花です。薄茶の多毛質のガク片がくっついているのも面白い。
この頃、荒れ地にはノアズキの黄色い花を見ることが出来ます。蔓性で、花は彩度が高い黄色、大きさ形ともにアサリの実を思わせます。彩度が高い黄色といえばミヤコグサも印象的です。この季節に工作棟の側や筑波実験棟側の芝生で見ることが出来ます。
 
クズも荒れ地にはいっぱい自生しています。紫色の大きな花は見事です。ただ、フジの花よりは荒々しいというか、脂っこいというか、庭に植えて鑑賞するような余裕を見るものに与えてくれないようです。根からでん粉が採れます。
春の草花が多品種小規模なのに対して、秋のそれらは大規模・少種。荒れ地には、クズの他クサネム、メドハギ、ワレモコウ、カラスウリ等の花がたくましく存在を主張します。ワレモコウは1cm位のボンボリ状の深い紫色の花、万葉の植物です。カラスウリは夜白い花を付けます。潅木によく巻き付いています。ティシューを木の上に置き一雨過ぎた後で見ると、この花に見えるのではないか、というような花です。ユウレイバナという別称があったのではないかと記憶しています。5cm位の芋を付けます。以前は、これから乳児の汗取り・テンカフンを採ったのです。
 
8月末から9月にかけて、食堂前の林床にはアキノキリンソウが咲き始めます。草丈20cm位の黄色い花です。この花は、数年前まで、「秋をつげる高原の花アキノキリンソウが○○高原で咲き始めました」とテレビのニュースになるくらいの花なのです。それが、ここでは身近に観察できるのです。写真は、花冠部をアップにしているので、先ほどのクサレダマ(草連玉)のように見えますが、こちらは葉が対生または輪生だそうです。

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今回の草花の話題も前回お借りした研究者の記録からの紹介です。春から夏へと紹介しなかった季節の草花も気になりますね。それは来年の機会まで残して置くことにして、次は秋の草花をご期待ください。
 

→関連記事:
        四季に見るKEKの草花(春)

 

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[クサネム]
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[トラノオ]
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[ツユクサ]
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[ドクダミ]
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[タヌキマメ]
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[ワレモコウ]
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[アキノキリンソウ]
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