KEKの敷地内には四季折々多くの草花が見られます。およそ400種類くらいはあると思われています。コリンズのヨーロッパの草花図鑑で扱われている草花は1200種程度ですから、種類数から言えば、ヨーロッパの1国内で見られる草花の種類数を超えているのではないかと考えられます。ちなみに牧野図鑑の種類数は4000種位です。また、この近辺の植物種類数は、筑波山を含めると、1200種前後だと言う人もいます。これから、KEKで見られる草花を季節ごとに紹介してゆきたいと思います。出来たら、皆さんも写真図鑑を片手に草花鑑賞をしてください。名前を知るとその花が更にきれいに見えてくるのは、名前を知った人を、私たちは一層身近に感じ始めることと同じでしよう。
早春、一番に咲くのは、ホトケノザ、オオイヌノフグリです。これらはどこにでも咲く強い草花です。群れて咲くので、遠くから見ると、前者は赤紫の絨毯、後者は空色のスカーフと見まがうばかりです。冬が終わったと実感できる陽だまりの植物群です。オオイヌノフグリは在来種ではありません。在来種のイヌノフグリは6月頃咲きます。一度だけ南実験棟近くの草むらで見たことがあります。オオイヌノフグリ、とても面白い名前ですね。ルーペで葉っぱの付け根に付く実を観察すると名前の由来に納得できます。最初のオオは、ブグリが大きいのではなく、花がイヌノフグリよりやや大きいことを言っているのでしょう。
春、梅がほころび、桜が待ち遠しい季節、4月の始め頃、スミレのシーズンです。研究棟から食堂までの間に二種類のスミレが見られます。スミレとニオイタチツボスミレです。前者は葉が犬の耳状に長い普通のスミレ、後者は葉が丸い、花の中心部が白くなっているのですぐ分ります。前者は、コンクリートの割れ目から上にスックと立ちあがっているのに、後者は林床を這っているように見えます。所内には、4〜6月の間にタチツボスミレ、ツボスミレ等、4種類以上のスミレが観察できます。筑波研究学園都市内で7種の写真を撮っています。林辺の草地には、このシーズン、ハルリンドウ(或いはフデリンドウというのか?)も各所に見えます。小さい小さいリンドウです。この花は注意しないと見逃してしまうくらいです。
今年は3月終わりには桜の満開も過ぎたようですが、例年では4月10日前後に桜が満開となります。KEK内の話題ではありませんが、平地で桜の満開時期は、筑波山頂及び筑波山中腹にある真壁のキャンプ場近くではカタクリの可憐な花が見られます。それに混じってアズマイチゲ、ユキザサ等が咲いています。
この草花の話題は、長年KEKや周辺地域の草花について記録をしてきた研究者の手記からの紹介です。今後も、季節の移り変わりに合わせて草花の便りを続けて行きます。
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