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新しくなったフォトンファクトリー 2005.10.20 |
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〜 リニューアルして運転を再開 〜 |
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タンパク質やフラーレンなどの分子の構造を調べたり、コンピュータのメモリー材料の磁力線を観察したり…このニュースでは、KEKの「光の工場」フォトンファクトリーのさまざまな研究成果をご紹介してきました。そんな働き者のフォトンファクトリーですが、今年の春から夏にかけて性能アップのための大きな改造が行なわれました。そして今週からは、新しくなった加速器からの光を使った実験が再開しています。 フォトンファクトリーの光源加速器 フォトンファクトリーの光源加速器は、高エネルギーの電子が円型の軌道を周回する電子蓄積リングです。フォトンファクトリーには2つの光源加速器があり、ひとつは電子軌道の周長が187mの「PFリング」(PFはPhoton Factory=フォトンファクトリーの略)で紫外線からエックス線領域にいたるまでの広いエネルギー範囲の放射光を利用する数多くの実験が、またもう一方の周長377mの「アドバンストリング(PF-AR)」ではパルス状の光という特徴を生かした実験や、PFリングよりもさらに波長の短いエックス線を利用する実験が行われています。 このうちPFリングでは、2005年の3月から9月までの期間、光の工場としての機能を一時お休みして、大きな改造が行なわれました。改造は、加速器のリングの約3分の2にも及ぶ範囲で、加速器の要である四極電磁石と真空ダクトを一新するという大がかりなものでしたが、当初の予定通り9月20日より改造後の調整運転が行なわれ、10月18日に放射光利用実験が再開されました。 挿入光源で高輝度の光を この改造の主な目的は、アンジュレータなどの挿入光源が設置されるスペースを大幅に増強することでした。挿入光源とは、特殊な配列の磁石によって電子を運動させ、より優れた性質の光を取り出すための装置です。リング型の光源加速器は、電子の軌道を曲げて放射光を取り出すための偏向電磁石が並んでいますが、挿入光源は偏向電磁石の間に、文字どおり「挿入」されています(詳しくはhttp://pfwww.kek.jp/outline/pf/pf2.html参照)。 改造前には図1に緑色の四角で示した場所にいろいろなタイプの挿入光源が7台設置されていました。アンジュレータとは放射光の干渉効果によってエネルギーのそろった高輝度光(細くしぼられた明るい光)を発生する、ウィグラとは主にエックス線領域の広い波長範囲で高輝度光を発生するタイプの挿入光源です。超伝導ウィグラは超伝導磁石の強い磁場を利用して波長の短いエックス線を発生させるウィグラです。 今回の改造では、リングを周回する電子軌道をしぼるための四極電磁石を省スペース化し、配置を変更することによって、新しく挿入光源を設置できる直線部が6か所(図1に黄色い四角で示した場所)増えました。これらは比較的短い直線部なので、短周期アンジュレータ(ミニポールアンジュレータ)という挿入光源によって、X線領域の高輝度光を発生させるために使われます。また、すでに挿入光源が設置されている直線部(緑色の四角)の長さもすべて大きく延長されました。長い直線部にはこれまでより繰り返し周期の多い挿入光源を入れることができ、より高輝度の光を得ることができます。 新しい挿入光源 さっそく今回の改造に合わせてPFリングでは初めての短周期アンジュレータがビームライン#17の光源として新しく設置されました。新しい短周期アンジュレータではこれまでのアンジュレータよりも短い波長の高輝度光を発生します。これを達成するために上下の磁石列間の最小ギャップを4.5mmまで縮めて運転します。10月7日の朝には、このアンジュレータからの放射光が初めて観測されました。蛍光板がまぶしいぐらいに明るく光った瞬間(写真7)、リング改造やビームライン建設に関わったスタッフから歓声がこぼれました。 高輝度、つまり細くしぼられた明るい光、という挿入光源の特徴は、小さな試料でも解析に耐えるデータが得られるので、物質科学や生命科学の研究にはたいへん強力な武器になります。BL-17はこれからタンパク質結晶構造解析ステーションとして整備され、来年の春から実験が開始される予定です。これまでには測定できなかったごく小さな結晶しか得られないタンパク質でも、立体構造を知ることが可能になります。 同種の短周期アンジュレータをリング内に新たに作り出した比較的短い直線部に設置して新しいアンジュレータビームラインを増設していく計画もすすんでいます。また、これまでの挿入光源も、より繰り返し周期の多いものにリニューアルしていく予定です。 2度の大改造で性能アップ PFリングは1982年の運転開始以来、25年近くの間専ら放射光源専用リングとして運転を続けてきましたが、今回のような長期シャットダウンを伴う大改造は、1997年に放射光の高輝度化を目的として行った四極電磁石および真空ダクトの入れ替えに続いて2度目のことでした。2度の大改造を通じて、加速器の構成要素のほとんどが新しいものに入れ替わっています。こうして、放射光の輝度、電子ビームの軌道安定性、蓄積寿命といった性能の向上を図り、後発の高輝度放射光源リングに対する競争力を保つ努力を続けています。
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