|
>ホーム >ニュース >News@KEK >この記事 | last update:10/04/02 |
||
アジアとヨーロッパを強い絆で結ぶ 2010.4.1 |
|||||||||||||||||||||||||||||
〜 第1回アジア欧州物理学サミット開催 〜 |
|||||||||||||||||||||||||||||
近代物理学は今から約400年前、イタリアの科学者ガリレオらによって始まったと言えます。それまでは、物体の運動や星の運行といった自然現象は、科学者の頭の中だけで考えられていました。それらの現象を、実際に実験を行ったり、道具を開発して観察することで、あるがままの自然を読み、原理を解明する様々な試みが行われるようになり、「物理学」が誕生したのです。 物理学サミットとは 物理学は、その後発展を続け、環境・エネルギー・食糧・健康・安全といった問題を解決する重要な学問となりました。こうした人類共通で世界規模の課題に今後も物理学が貢献していくためには、アジア・アメリカ・ヨーロッパの3地域が対等にバランスを保って協力し合うことが不可欠です。 これまで、ヨーロッパ・北米間や北米・アジア間に比べ遅れていた、アジア・ヨーロッパ間の協力関係の強化を目的とした、第1回「アジア欧州物理学サミット(ASia-Europe Physics Summit, ASEPS)が、3月23日から26日の4日間、茨城県つくば市の国際会議場で開催されました。この国際会議が「サミット」と呼ばれているのは、出席者が物理学者だけでなく、今後物理学を国際的に推し進めていくうえで欠かせない、政府関係者、科学財団、科学アカデミー、各国の物理学会などの関係者を一堂に会して議論を行う、といった意味が込められています。 サミットが扱う物理学は、宇宙の根源を探る基礎物理学から、生物学や化学、地学、宇宙探査などの他分野の研究に重要な役割を果たす物理分野まで多岐にわたります。同サミットの開催にあたっては、フランス国立科学研究機構(CNRS)と日本学術振興会(JSPS)の提案のもとに、日本側ではKEKを幹事機関として準備が進められてきました。国内では開催趣旨に賛同した日本物理学会と応用物理学会が共催団体として参加しました。また欧州物理学会(EPS)とアジア太平洋物理学会連合(AAPPS)が、それぞれ会長の連名でアジア・ヨーロッパ各国の物理学会への参加を呼びかけました。 呼びかけに応じ、中国、韓国、台湾、ベトナム、インド、マレーシア、インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、ネパールなどのアジア各国・地域や欧州連合(EU)、英国、ドイツ、イタリア、ロシアなどから約200人が参加しました。また、アジア・ヨーロッパ地域を超えアフリカ物理学会からも参加がありました(図1)。 アジア・ヨーロッパでの課題の抽出 サミットでは、それぞれの国や地域における物理学研究への取り組みの紹介や課題の発表がありました。続いてアジア・ヨーロッパ共通の課題として、(1)大規模施設が必要な物理学研究の共同推進、(2)今後15年から20年を見据えた新しい物理学の展開への協力関係の構築、(3)開発途上国や、デジタルギャップがある国々との協力関係、これら3つを中心に、様々な問題に関して議論がおこなわれました。 サミットでは、初日に小林誠特別栄誉教授による基調講演がありKEKが行ってきた国際協力のこれまでと、これからの紹介がありました(図2)。また、「科学イノベーションに向けての物理」と題し、サミットの意義と目指すべきゴールに関してのパネルディスカッションがありました(図3)。 こういった研究の枠組み構築に関する議論のみならず、現在アジア・ヨーロッパで行われている個々のプロジェクトに関しては、100件に及ぶポスターが集まり、ポスターセッションで活発に意見が交わされました(図4)。 今回のサミットの成果のひとつは、AAPPSとEPSの間で交わされた「ASEPSつくば共同宣言」です。これによりアジアとヨーロッパ間で物理学の研究協力を進めるためのタスクフォースを設置することや、国際共同研究の枠組みづくり、若手研究者の教育、実験施設の相互利用などについて協力していくことが確認されました(図5)。 次回は、1年半後にEPSが主催となって、ポーランドのブロツラフで開かれる予定です。
|
|
|
copyright(c) 2010, HIGH ENERGY ACCELERATOR RESEARCH ORGANIZATION, KEK 〒305-0801 茨城県つくば市大穂1-1 |