放射光科学研究施設の研究成果(1)

 

分子の電子構造
原子の等方的な電子軌道からの光電子放出は図1のような分布になる。一方、配向した分子の場合は局所的に見れば等方的な電子軌道であっても、そこからの光電子放出は非等方的な分子ポテンシャルを反映して図2のような複雑な分布になる。このような分子の光電離に関する詳細な研究によって、分子の電子構造が明らかにされていく。

 

図1.s軌道からの光電子放出の角度分布

図2.窒素分子の1sδ軌道からの光電子の角度分布
  EXAFSを用いた分子構造解析
EXAFS(エクサフス)は物質によるX線の吸収スペクトルからX線を吸収した原子の周囲の構造を決定する手法である。結晶でない溶液、ガラス状試料、触媒や生体試料、結晶を作製することの困難な新物質の構造を微量 の試料から求められるという特徴を持っている。左図は、EXAFSスペクトルから解析されたサッカーボール型分子に類似のC82にランタン原子が内包されたLa@C82の構造図で ある。
 

軌道秩序の直接的観測
層状ペロブスカイト型マンガン酸化物La0.5Sr1.5MnO4の低温相での、電荷・スピン・軌道の秩序状態が示されている。この系の物性はこの3つの自由度により支配されている。放射光X線の特徴である大強度・エネルギー可変性・偏向特性を利用することにより、電荷・軌道の秩序状態を、中性子磁気回折により、スピンの秩序状態を直接観測することができる。


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