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水素原子に電子が1個ついた負水素イオンを作り75万ボルトの電圧で光速の4%まで加速する。
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陽子加速器では、陽子は最初に負の電荷を帯びた水素の形で加速される。水素原子は陽子と電子からなる中性粒子であるが、これに電子を1つ付けたものが負水素イオンである。電気を帯びているので、電気力によって加速することができる。イオン源で作られた負水素は次に前段加速器によって75万電子ボルトまで加速される。この時、負水素の速度は光の速度の4%になる。さらに線形加速器(リニアック)に入り、200メガヘルツの高周波電波により加速されて4000万電子ボルトのエネルギーに達する。この時速度は光の速度の28%となる。 |
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リニアックで加速された負水素イオンは、小型のシンクロトロン「ブースター」に打ち込まれる。この時、イオンをごく薄い炭素の膜を通すと、まわりの電子が剥ぎ取られて陽子に変換される。この方法によると、ほとんど100%に近い効率で入射することができる。陽子は電磁石の働きによって円形の軌道に沿って回る。入射から最高エネルギーに達するまでに約3000kmの距離を走る。電磁石は、陽子に対して集束レンズとして働くように、特殊な磁場分布をもつよう作られており、陽子は円形軌道を回る間に高周波加速装置で加速される仕組みになっており、約8万回まわって5億電子ボルトに加速される。このとき、陽子の速さは光速度の75%になる。 |
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ブースターから取り出された陽子は、直径108mの主リングでさらに加速される。主リングの円形軌道上には、陽子の軌道を曲げる偏向電磁石、陽子の発散を防ぐ集束用の四極電磁石などが並んでいる。高周波加速装置では、そこを通過する陽子に同期して加速するので、高周波電波の周波数は陽子の速度に合わせて高くする。また、陽子は加速されると運動量が増加するので磁場の力で曲がりにくくなるが、電磁石の磁場を加速とともに強くすることによって、陽子を一定の円形軌道に保つ。最高エネルギー120億電子ボルトに達するまでに、陽子は軌道をやく50万回回る。これは距離15万km(地球約4周)に相当する。
主リングで加速されたビームは、「速い取り出しの方法」、「遅い取り出しの方法」及び「内部ターゲットによる二次粒子発生の方法」によって取り出される。「速い取り出しの方法」で取り出されたビームは、ニュートリノ振動実験に使われる。「遅い取り出しの方法」によって取り出されたビームは、東カウンターホール及び北カウンターホールにおいて素粒子・原子核実験に使用される。
すべての陽子が外に取り出されたのち、磁場はもとの値に戻され、前段加速器から新たに加速を始める。このような過程が4秒に一回ずつ行われる。
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