KEK 高エネルギー加速器研究機構 共通基盤研究施設
我々は,極冷ミューオンビームを用いたミューオン異常磁気能率(g-2)と電気双極子能率(EDM)の精密測定実験を計画している.この実験に望まれる精度を実現するには,直径約600 mm,高さ約750 mmの陽電子飛跡検出器をμmの精度で組み立て,数ヶ月以上の間,それが変動しないことを保証する必要がある.そのためここでは,光周波数コムが持つ高精度高安定なパルス間隔に基づく,絶対測長干渉計の複数の測長路からなる測長網を,評価対象の検出器上に張り巡らせ,それらの測長値をもとに検出器の3次元的な変形を逐次連続的に導出し,監視する. 測長基準となる光周波数コムのパルス間隔は,評価対象となる検出器の大きさに合わせて,エタロンにより圧縮される.このとき得られる光周波数コムのパルス間隔に対し,エタロンが支配的に影響することが,これまでのシミュレーションにより示された.本検討では,このシミュレーション結果を検証するため,エタロンで圧縮された光周波数コムのパルス間隔を実測した.
タンパク質結晶化の可能性を推定し,結晶を効率よく生成する手法である「すぐ見る法」の自動化を行う.「すぐ見る法」では,タンパク質溶液と結晶化試薬の混合時に生じる沈殿量の変化から結晶化可能性を推測し,効率良くスクリーニングする.現在は人力に依っている判定を画像処理で自動化すれば,溶液作成及び判定を並列化でき,高速化が可能になる.このために,沈殿の発生・消失過程の沈殿量を数値化し,その変化を検出する.
We consider adopting a gyro for large scale (larger than 100 m) accurate (better than 1 mm) profile evaluation. A gyro can evaluate profiles without any restrictions neither in span nor in direction; however, angles detected by a gyro consequently profiles to be evaluated usually fluctuate unacceptably. We demonstrated that periodical reversal measurement by flipping a gyro and obtaining the difference between the angular signals for each flipping phase is effective for reducing the fluctuation. Then, we improved the method by rotating a gyro continuously around an axis perpendicular to its sensitive axis and obtaining the second-order differences of the gyro’s angular signals, where the direction of the gyro’s rotating axis against the earth’s rotating axis could be derived from the signals of two gyros rotating in counter directions with each other without being affected by the gyros’ signal fluctuations. Here, we devise a new method by using two pairs of two gyros rotating in counter directions, where their rotating axes are perpendicular with each other on a horizontal plane. It has an advantage which are not affected by neither the gyros’ rotating rates nor the earth rotating rate, as well as the gyros’ scale factors.
Cost reduction for cavity fabrication is currently main issue to realize international linear collider. Cavity fabrication facility (CFF) in KEK is approaching this issue from a point of view of materials for cavities. CFF had fabricated SRF elliptical cavities made by two types of niobium; one is high tantalum contained and low RRR (< 100) fine grain niobium, and the other is high tantalum contained and RRR < 300 large grain (LG) niobium. Former was melted two times (normally five times) which results RRR recovery up to around 300, and used for cell parts. Two 3-cell cavities were fabricated for each material respectively and vertical tested. One of these cavity made by LG achieved accelerator gradients of more than 40 MV/m. In this report, cavity materials and vertical test results are presented in detail.
我々は,レーザ解離法により生成した超冷ミューオンビームを用いて,高強度(3 T)高均一度(1 ppm)のコンパクト(半径33.3 cm)蓄積リング磁場中において周期運動するミューオンの崩壊陽電子の飛跡を求めることで,ミューオンにおける異常磁気能率(g-2)を0.1 ppm の精度で測定し,電気双極子能率(EDM) をdμ = 10^-21e・cm の感度で 確定する実験を計画している.このとき用いる飛跡検出器は,ベーンと呼ばれる40枚の板状センサアレイが放射状に並べられ,それぞれのベーンでは,動径方向と軸方向についてそれぞれ8枚のシリコンストリップセンサ(SSD)が配置され,これらにより陽電子の飛跡が検出される. これまでの検討より,目標とするEDM の探索には,測定が行われる数ヶ月以上の間,磁場に対するベーンの姿勢を10μrad よりも良い精度で保持する必要があると見込まれる.これを加工精度や組立精度で保証することは困難であり,ベーンの姿勢を監視しながら検出器を組み立て,検出器の動作中にそれらが変化しないことを監視し保証するのが,有効と考えられる. 我々はそのために,複数の絶対測長干渉計の測長路を対象物に張り巡らせることで,その3次元的な変形を逐次連続的に検出し監視する,アライメントモニターの実現を目指し,その基本要素となる,光周波数コムに基づく絶対測長干渉計を用いた検討を行っている.本報告では,当該干渉計における測長基準となる,光周波数コムから得られる周期パルス光のパルス間隔圧縮に用いられる,エタロンフィルタの効果について述べる.
現在ILC計画実現の為、建設コストの削減が求められている。KEKの空洞製造技術開発施設(CFF)ではILCに用いる超伝導加速空洞を製造しており、空洞材料の面からコスト削減の問題に取り組んでいる。CFFでは2種類の低コストのニオブ材を用いて3セルの空洞をそれぞれ2台ずつ製造し、その性能評価を行った。1種類目の材料は低RRR、高Ta含有のニオブ材を2回溶解した後(通常は5回程度)、鍛造・圧延したものでこれをセル部分に用いた。もう一種類はRRR<300、高Ta含有のニオブインゴットから直接スライスしたニオブ板(Large Grain材:LG材)をセル部分に用いた。完成した空洞の性能評価を行った結果、LG材を用いた一つの空洞は40MV/mを超える加速勾配を達成し、Q値もILCの要求値を満たすことが出来た。本発表では、使用した材料の詳細及び性能測定結果に関して詳細を報告する。
角速度を検出するセンサの総称であるジャイロは,他の角度検出器では不可能な角度基準無しでの角度検出が可能であることから,測定方向や測定範囲の制限の無い自由度の高い角度測定と,それらに基づく自由度の高い形状評価や測位を可能とする.その一方で,ジャイロを用いた角度検出では,ジャイロ角度信号の時間変化であるレートオフセットに代表されるジャイロ起因の誤差を,いかに除去するのかが課題となる. 我々は,粒子加速器に代表される100 mを超える大型の対象物の,mmを切る高精度なアライメント評価への適用を目指して,連続的な反転測定を適用することによりジャイロ起因の誤差を除去する検討を行っている. ここでは,従来の装置に代わる,より小型で高精度な角度検出の実現が期待される,新たな角度検出装置に用いる,ジャイロ角速度信号に基づく角度導出方法について,シミュレーションに基づく検討を行った.
Materials Chemistry Group of Institute of Materials Structure Science, KEK, researches to clarify irreversible reaction processes such as structural change of materials induced by laser shock, temperature and so on. We have developed an experimental system using DXAFS[2] and a laser to observe these processes in real time. Destruction or phase transition is triggered by the laser synchronized with an X-ray pulse. We developed and used a simple sample exchanger that could load only about 50 samples. For more efficient experiments, a new sample exchange robot that can load about 3,000 samples has been developed. Furthermore, in order to prevent oxidation of samples, we have developed a large chamber for an oxygen-free atmosphere. The robot, the laser system and an infrared thermometer are implemented in the chamber. The developed experimental system was installed at PF-AR-NW2A beamline in November, 2017 and we could confirm effectiveness of the new robot in the DXAFS experiments. This work was supported by Council for Science, Technology and Innovation (CSTI), Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program (SIP), “Structural Materials for Innovation” (D66 unit) (Funding agency: JST).
We have developed and operated sample exchange system on the macromolecular crystallography beamlines at the Photon Factory for high-throughput experiments, remote operation and automated experiments. The automated data collection experiments are carried out according to sample data description files. In order to prevent human error when preparing the samples and the files, each cassette and each cryo-pin have to be given an ID. We implemented a bar code reader on the sample exchanger for identifying a commercially available pin with 2-D bar code. The bar code can be read after the robot removes the pin from a liquid nitrogen Dewar. However, several pins could not be identified because of frost growth on the bar code. To realize completely identification, we are developing a sample tracking system with an IC tag. The small IC tag is fixed on the base of cryo-pin and a reader is fixed on the tip of sample rotation axis (Fig.1). As a result of preliminary test, no error was confirmed.
高エネルギー加速器研究機構(KEK)・物質構造科学研究所・物質化学グループでは,不可逆な反応過程を明らかにする研究を展開している. 不可逆反応には,物質が破壊されるプロセス[1],鉄の温度誘起構造相転移(代表的なものは鋼の焼入れ)等があるが,これらの過程を実時間で観察した例はほとんどない. 我々は,KEKフォトンファクトリーPF-AR NW2Aビームラインにおいて,DXAFS(分散型XAFS)とレーザーを用いたナノ秒~サブナノ秒の時間分解能を有するシステムの開発を行っている. 物質(試料)の破壊もしくは昇温のためのトリガーにはレーザーを用い,レーザー照射後の試料の状態変化をDXAFSによって時分割で測定することによって, 得られたスペクトルの時間発展を速度論的に解釈し,不可逆過程を解明することを目的としている. レーザー照射後の試料の状態変化を観察するには,同様の試料を交換し,ある一定以上の実験結果を積算する必要がある. 従来は一度に試料を約50個搭載可能な円盤型の試料交換システムを製作し実験に用いていたが,さらに効率的かつ位置再現性良い試料交換ロボットの開発を行っている. 本論文では試料交換ロボットの開発の着手から実際にDXAFS実験に供する社会実装に至るまでを述べる.
機械工学センターでは、放射光におけるロボットの開発の支援を行っている。 また、KEK研究支援戦略推進部のサポートの下、企業と共に中小企業向けの外部資金を獲得し、 共同研究によってロボットの開発を行っている。 本発表ではこれらの取り組みについて紹介する。
KEK-PF BL-1Aにはヘリウムチャンバー対応のタンパク質結晶交換システムPAM-HCを、BL-5A、BL-17A、AR-NW12A、AR-NE3Aには結晶交換システムPAMを設置している。PAMの元になっているSAM(SSRLで開発された結晶交換システム)の液体窒素デュワーには自動開閉できる蓋が取り付けられており、液体窒素の蒸発や霜の発生を抑制するために役立っている。一方、PAMは高速化のためにダブルトングを開発し、待機中にはトングが液体窒素に浸かっている必要があるため、蓋を取り外していた。霜の発生を抑えるために、液体窒素デュワー上部にヒーターを設置する等していたが、液体窒素供給パイプ周辺が凍りつき、霜が発生するため、やはり蓋があった方が良いという結論に達し、現在、蓋の開発を行っている。 PAMはダブルトングを開発したことで、約10秒での試料交換を達成したが、これは回折実験と試料交換の作業の一部を並行して行うことで実現している。データ測定を高速に行うことができるようになり、ロボットによる試料交換、結晶のセンタリング、回折計上のコンポーネントの移動等が律速になってきつつある。そこで、高速・大容量化を目指してPAMに変わる新たな試料交換システムの開発に着手した。特に高速化に関してはSPring-8の協力を得て開発を行っている。 タンパク質結晶交換システムの開発は主にPDIS(創薬等支援技術基盤プラットフォーム)およびBINDS(創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業)によるものである。 現在、全ビームラインで試料交換ロボットが稼働し、ロボットのユーザー数も増えてきている。そこで、結晶をループですくった後、Uni-puckに入れる作業を支援するための試料準備協働ロボットの開発を行っている。試作機を用いてテスト実験を行った結果、問題なく構造解析できることを確認した。試作機の開発には、ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金を活用した。
KEK物質構造科学研究所・物質化学グループでは、不可逆な反応過程を明らかにする研究を展開している。不可逆反応には例えば物質が破壊されるプロセスや、鋼の焼入れに代表される鉄の温度誘起構造相転移などがあるが、これらの過程を実時間で観察した例はほとんど無い。我々はこのような不可逆反応を実時間で直接観察し、そのプロセスを解明するため、PF-AR NW2Aビームラインにおいて分散型XAFS(DXAFS)とレーザーを用いたナノ秒~サブナノ秒の時間分解能を持ったシステムの開発を行っている。物質(試料)を破壊もしくは昇温するためのトリガーにはレーザーを用い、レーザー照射後の試料の状態変化をDXAFSによって時分割で測定することによって、得られたスペクトルの時間発展を速度論的に解釈し、不可逆過程を解明することを目的としている。 レーザー照射による試料の破壊過程を観察するには、試料を交換して、ある一定以上の実験結果を積算する必要がある。さらにX線パルスとレーザーとを同期した実験のため、試料の設置位置をμm単位で再現する必要がある。従来は一度に約50個マウント可能な円盤型の手動サンプルチェンジャーを用いていたが、さらに効率的かつ位置精度の再現を容易にするために試料交換ロボットの開発に着手した。試料交換ロボットの大まかな仕様は以下の通りである。 現有の実験装置に搭載、約3,000個の試料を連続して交換、無酸素雰囲気で実験が可能。 この装置開発により従来のサンプルチェンジャーを用いた測定に比べ5倍以上スループットが向上し、限られたビームタイムを有効活用できる。 本研究は、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム・革新的構造材料ユニットD66(SIP-IMASM)の一環として実施した。
角度検出器を用いた形状評価は,形状基準を用いることなく,高精度な評価が可能であることから,形状基準を用意することの難しい,大型対象物の高精度な形状評価に有効と考えられる.なかでも,水準器やオートコリメータのように角度基準として用いる重力や光軸に起因する制限を受けることのない,ジャイロを用いることで,より自由度の高い形状評価が可能と期待される. しかし,ジャイロは一般的に検出角度の安定性が劣るため,その影響を解消することが,ジャイロを用いて高精度な形状評価を実現するための課題となる.我々は,これまでの検討において,その角度検出軸と直交する軸周りにジャイロを回転させ,得られる角度信号を用いることで,ジャイロに起因する角速度オフセット,ランダムウォーク,スケールファクターなどの誤差要因の影響が取り除かれ,角度検出性能が向上することを示している. ここでは,ジャイロを用いた角度検出性能の更なる向上をめざして,ジャイロ回転に伴うアライメント誤差の影響を,シミュレーションにより評価した.
タンパク質X線結晶構造解析を行うためには,タンパク質結晶をクライオピンで捕捉し,液体窒素で凍結し, カセットに格納するという準備作業が必要である.本発表では,試料準備作業を行う協働ロボットの開発について, 「ニーズの把握」,「サービスの開発と改善」,「社会に導入してみる」,「本物の評価をもらう」という 社会実装プロジェクト教育の4つのステップに則って紹介する.
Sample exchange robots are installed at macromolecular crystallography beamlines of Photon Factory (PF), to achieve fully automated data collection in high-throughput X-ray experiments, high efficient sample exchange and/or remote-controlled experiments. In addition, an off-lined sample exchange robot is available for preparing sample cassettes before user's beam-time. PAM (PF Automated Mounter) was based on the robot SAM developed by SSRL macromolecular crystallography group, but the PAM has double tongs for rapid sample exchange. The PAM has been installed at beamlines BL-5A, BL-17A, AR-NW12A and AR-NE3A. We also have installed the PAM at beamline BL-1A. The BL-1A was built for low energy experiments and operated since 2010. For effective lower energy experiments, we covered whole diffractometer with a helium chamber recently. In parallel with development of the helium chamber, we developed a new sample exchange robot in order to minimize a leak of helium gas, named PAM-HC (PAM for Helium Chamber). The PAM waits while grasping a new sample and can exchange samples just after finishing diffraction experiment due to the double dongs. Therefore, the tongs exists in the liquid nitrogen Dewar during almost of the user’s experiments. It is necessary to dry the tongs once per several hours to avoid freezing the tongs by frost. Currently it takes 8 minutes for drying the tongs. We are now developing a new tong-drying system using hot water instead of hot wind to reduce the time required for drying. The developed system and results of preliminary experiments will be described in this presentation. Automated liquid nitrogen filling systems are installed at above five beamlines. If a liquid level sensor breaks down, a trouble at which supplying liquid nitrogen does not stop is expected. Safety measures of the filling system also will be presented.
超伝導加速空洞について、現在主流である電子ビーム溶接を用いる製造方法に対して、液圧成形を用いる製造技術の開発を行っている。大幅なコスト低減と信頼性向上を期待している。本開発のためには、『成形性が優れた高品質なシームレスニオブパイプの入手』と『液圧成形技術の高度化』が必要である。これまでに、米国ATI Wah Chang社製とアルバック社製のシームレスパイプを使って、1セル空洞3セル空洞の製造を行った。これらの製造方法の詳細と、たて測定結果を紹介する。また、今後の研究の展望についても述べる。
KEKでは従来、機械工学センターにて超伝導加速空洞の試作を行っていたが、ILC計画に向けて製造技術研究を加速するために、空洞製造技術開発施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)を整備し、2011年7月に竣工した。ここには大型のEBW機,プレス機,化学処理室などが整備されている.これらは19 m×14 mのクラス100,000のクリーンルームにコンパクトに配置されている.従来から有る機械工学センターの工作機械と合わせれば,空洞をKEK所内で全て製造することができる.これらの設備を用いて、大量生産に向けた効率的な生産技術と空洞の性能を維持しながらコスト低減を図ることを主眼として研究を行っている。これまでに3台の1.3 GHz TESLA-like 9セル空洞と7種類の研究用1又は3セル空洞を製造し、空洞製造の経験を蓄えている。LG材を用いた9セル空洞のKEK-2号機は最大加速勾配38 MV/mに達し、ILC仕様を満たした。製造に必要な治具等も自前で開発している。施設の現状と最新の研究成果について紹介する。
ILC実現のためには、コスト低減が必須の課題であり、様々な取り組みがなされている。ILCのTDR(技術設計報告書)では、空洞用材料とRRR>300の純ニオブ材を使うことが規定されている。RRRを上げるためには、ニオブインゴットの電子ビーム溶解を繰り返す必要がありコスト上昇の主要因となっている。TDRに規定された最大加速勾配35MV/mを維持しつつ、ニオブ材料コストの低減を図る研究を行っている。Taの含有量が多く、RRRが100〜200程度の材料を用いて、3セル空洞を製造し、ILC仕様を満たすかを検討している。また、空洞の部位ごとに材料のグレードを使い分け、空洞全体として性能を得つつ、コスト低減を図る方法も検討した。さらに、ニオブインゴットを板やパイプ形状にする二次加工のコスト低減についても検討した。
KEKでは液圧成形による楕円形状の超伝導加速空洞の製造研究を行っている。通常、楕円形状空洞のセル間にはLorentz Force Detuningによる空洞の変形を抑えるため、強め輪と呼ばれるリング状の板をはめ込むが、液圧成形による空洞の場合はこれをつけていない。この強め輪のついていない3セルの液圧成形空洞の性能評価を行った結果、加速勾配当たりの周波数変化量が通常の強め輪を用いた同形状の空洞より小さかった。この結果は、空洞製造時に強め輪を省略することによってコストを削減できる可能性を秘めている。性能評価では空洞両端は固定されているため、空洞の伸縮よりも空洞形状自体の変形がこの結果に影響していると考えられる。本研究では、どの様な条件でこの様な結果が得られるのかシミュレーションを用いて調査を行い、強め輪を省略できる可能性を探った。
We are developing the manufacturing method for superconducting radio frequency (SRF) cavities by using a hydroforming instead of using conventional electron beam welding. We expect higher reliability and reduced cost with hydroforming. For successful hydroforming, high-purity seamless niobium tubes with good formability as well as advancing the hydroforming technique are necessary. Using a seamless niobium tube from ATI Wah Chang, we were able to successfully hydroform a 1.3 GHz three-cell TESLA-like cavity and obtained an Eacc of 32 MV/m. Moreover, KEK and ULVAC are collaborating the development of seamless niobium tube in Japan. Using a prototype seamless niobium tube from ULVAC, we were able to successfully hydroform a 1.3 GHz one-cell TESLA-like cavity and obtained an Eacc of 40 MV/m.
This R&D project involves cavity fabrication preparation in order to achieve a cavity performance satisfying the ILC specifications presented in the TDR. We propose to optimize the ingot purity to obtain a lower residual resistivity ratio (RRR), while accepting some specific residual content, such as tantalum (Ta). We also propose to simplify the manufacturing process, e.g., the forging, rolling, slicing, and tube forming, to minimize contamination. We have a plan to manufacture two types of 3-cell cavity: “High-Ta medium-RRR (100−200) material” cavities and “High-Ta high-RRR (200−300) material” cavities. KEK will then evaluate the performance of these cavities and select the preferred material. We will introduce the detail of fabrication process of “High-Ta medium-RRR cavity” made by KEK-CFF and result of vertical
Using Large Grain (LG) Nb for SRF cavity has possibility to reach higher Q0 than using Fine Grain Nb, which reduces heat load to 2K Helium. The first SRF 9-cell elliptical cavity made of LG has been fabricated at Cavity Fabrication Facility in KEK. This 9-cell cavity is then vertical tested via several surface treatment process. Since, a small defect which causes quench at the vertical test was found at the curve region where the local grinding machine investigated in KEK in the past cannot be used, new type of grinding machine is investigated. This small defect was removed with this new grinding machine, the cavity then finally reached to 38 MV/m and maximum Q0 of 3.8e10 which is about twice higher than one of FG. In this report, summary of this 9-cell cavity which consists of fabrication process, surface treatment process and several vertical test results are presented in detail.
高エネルギー加速器研究機構では、タンパク質X線結晶構造解析用装置の開発・共用を行っている。 本発表では実験の効率化のための試料交換ロボットおよびユーザー支援のための試料準備協働ロボットについて述べる。
角度検出器を用いた形状評価法は,大型対象物の高精度な評価に有効と考えられ,我々は,角度検出にジャイロを用いる方法について検討している.前報までに,角度検出軸と直交する軸周りに回転するジャイロから得られる角度信号を用いることで,ジャイロを用いた角度検出における主な誤差要因となる,角速度オフセットやスケールファクターなどの影響を除去した上で,角度導出が可能であることを示した.本報告では,上記の角度導出過程において新たに考案した,近似値を用いない角度導出法と,シミュレーションに基づく当該角度導出法の評価について述べる.
KEK-PFのBL-1A、5A、17A、AR-NW12A、AR-NE3Aの5本のタンパク質結晶構造解析ビームラインには、 効率的な試料交換、遠隔実験、全自動実験を実現するために、試料交換システムが設置されている。 さらに、ビームタイム前に試料の準備を行うためのオフラインの試料交換システムも準備されている。 我々は試料交換の時間を短縮するために、ダブルトングシステムを開発し、 現在はBL-1Aを除くビームラインで運用を行っている。 ダブルトングシステムは次にマウントする試料をロボットが把持したまま液体窒素デュワー内で待機し、 回折実験終了後ただちに試料を交換することで実験の効率化を図っている。 そのためロボットアーム(トング)はほとんどの時間液体窒素デュワーに浸かっており、 付着した霜が原因でトングが開閉できなくなる恐れがある。 そこで約2~3時間に1回トングを乾燥させる必要があるが、水滴が残らないよう完全に乾燥させるために 8分も要している。本発表では熱風による乾燥ではなく、温水と冷風による乾燥方法を実現するための 装置の開発と実験結果について述べる。 上記5本のビームラインには、液体窒素デュワーの液面を保持するために全自動液体窒素供給システムが 設置されているが、例えば液面センサが故障した場合に液体窒素が供給され続けるといった トラブルが予想される。本発表では、液体窒素供給システムの安全対策についても述べる。
本研究ではタンパク質結晶解析の高速化のためのスクリーニング法を開発する.この手法は結晶化溶液作製時の沈殿の変化に着目する.前報でフレーム間差分を用いた沈殿検出の有効性を示した.しかし,液境界でうねりが生じ沈殿と誤検出される試料が見られた.本報では,機械学習を用い沈殿とうねりの分離を行う.
Although X-ray crystallography is one of the most powerful techniques for protein crystal structural analysis, crystallization process remains one of the bottlenecks. In order to screen thousands of crystallization conditions automatically, we have developed fully-automated large-scale protein crystallization and monitoring system named PXS. The PXS consists of sitting drop method dispensing system, plate handling robot, incubators, imaging system and storage server. We have operated the PXS for more ten years and we are now upgrading to realize more efficient crystallization, especially a dispensing system and an imaging system. The dispensing system of the PXS was special ordered for high-throughput crystallization, but new dispensing system was developed using commercially available devices mainly for easier maintenance. Liquid handling device Mosquito LCP (ttplabtech) for making droplets, dispensing device BIOTEQUE (MS-Technos) for dispensing crystallization solution, microplate sealer PS (micronix) and a special designed consumables supplying device are placed around plate handling robot MOTOMAN (Yasukawa). We replaced imaging system to RockImager2 (Formulatrix) for frequently imaging and SONICC (Formulatrix) for special UV and SHG imaging. The new dispensing and imaging systems are combined with the plate handling robot of the PXS and the crystallization plates are carried to the incubators of the PXS. In addition, we developed incubator that includes the imaging device RockImager2. This new incubator is also combined with the plate handling robot of the PXS and used for low temperature crystallization.
Profile shape evaluation by detecting tangential angles of the profile is competent for large objects, because it inherently requires no shape references, which become difficult to be defined enough accurate (better than 1 mm) as the object becomes large (larger than 100 m).We use a gyro for detecting the angles. It does not need geoid as an angle reference and can be applied for detecting angles in a horizontal plane, which cannot be detected by inclinometers. Moreover, there is no limitation in its measurement range, while those of autocollimators are limited to around 100 m at longest by their beam ranges. However, an angle detected by a gyro is not so stable, which is the major issue to be resolved.Here, we adopted reversal measurement for eliminating the fluctuation by making the gyro rotate continuously around an axis perpendicular to its sensitive axis. An analysis showed that a direction of the rotating axis against an axis of the Earth’s rotation can be derived without affected by the gyro’s rate offset, which is the major factor for the angle fluctuation. The experimental results agreed well with the theoretical values obtained from the analysis by substituting experimental conditions.
In the muon g-2/EDM experiment at J-PARC, 48 pieces of rectangular platy parts called a vane, which are aligned radially and configure our positron tracking detector, should be aligned with accuracies better than 10 urad. We consider adopting a length measurement grid which consists of fiber-introduced absolute interferometers for monitoring the alignment. It has two technical features, the one is to use an optical frequency comb as its light source and the other is to use ball lenses as its target reflectors. Here, the features are experimentally confirmed.
我々は,傾斜計やオートコリメータなどを用いて古来,高精度形状評価に適用されてきた角度検出に基づく形状評価法が持つ,形状基準を不要とする特長を活かすことで,形状基準を定義することが困難な,大型対象物の高精度形状評価の実現を目指している.本研究では,傾斜計では検出できない水平面内や,オートコリメータでは評価できない100 mを超える大型対象物の評価が可能な,ジャイロを角度検出に用いる方法を検討している.ジャイロを用いた角度検出では,角度信号の時間変動が問題となる.前報までに,ジャイロをその角度検出軸と直交する軸周りに回転し,得られる角度信号の2階差分値をとることで,時間変動の影響が除去できること,さらに,互いに反対方向に回転するジャイロを用いることで, 地球自転軸を基準としたジャイロ回転軸の方位角が検出できることを示し,実際に方位角を求めた.ここでは,ジャイロ回転軸の方向が90°(π/2)異なる測定条件下での測定結果を組み合わせることで,方位角検出式に含まれるパラメータをキャンセルし,方位角検出精度を向上した.
傾斜計やオートコリメータなどに代表される角度検出器を用いた形状評価は,高精度な形状基準を用いることなく,平易,かつ高精度な評価が可能であることから,定盤や光学面などに望まれる高精度形状評価に古来用いられるとともに,形状基準を用意することの難しい大型対象物の形状評価に対しても有効と考えられる.我々は,傾斜計では評価できない,水平面内の形状評価が可能であり,オートコリメータでは評価できない,100 mを超えるような大型の対象物に適用可能な,ジャイロを角度検出器に用いた形状評価の実現を目指し,検討を行っている. ここでは,ジャイロをその角度検出軸に対して直交する軸周りに回転させながら,得られる角度信号の2階差分値を得ることで,連続的な反転測定を実現し,ジャイロを用いた角度検出における最大の問題と考えられる,角度信号の時間変化の影響を除去した.さらに,互いに反対方向に回転する2台のジャイロから得られる角度信号の2階差分値をもとに,ジャイロ回転軸の地球自転軸に対する方位角を導出する角度検出法を考案し,実際に方位角を導出した.
Synchrotron X-ray crystallography is one of the most powerful techniques to determine protein crystal structures. However, crystallization process remains one of the bottlenecks in crystallographic analysis. In order to screen thousands of crystallization conditions automatically, we have developed fully-automated large-scale protein crystallization and monitoring system named PXS [1]. The PXS consists of sitting drop method dispensing system, plate handling robot, incubators, imaging system and storage server. We have operated the PXS for more ten years and we are now upgrading to realize more efficient crystallization, especially a dispensing system and an imaging system. Although the dispensing system of PXS was special ordered for high-throughput crystallization, new dispensing system was developed using commercially available devices for reduction in development period and easier maintenance. Liquid handling device Mosquito LCP (ttplabtech), dispensing device BIOTEQUE (MS-Technos), microplate sealer PS micronix) and a special designed consumables supplying device are placed around plate handling robot MOTOMAN (Yasukawa). We replaced imaging system to RockImager2 (Formulatrix) for frequently imaging and SONICC (Formulatrix) for special UV and SHG imaging. The new dispensing and imaging systems are connected to the plate handling robot of PXS and the crystallization plates are carried to the incubators of PXS. In addition, we developed incubator that includes the imaging device RockImager2. This new incubator is also connected to the plate handling robot of PXS and mainly used for low temperature crystallization.
超伝導加速空洞について、現在主流である電子ビーム溶接を用いる製造方法に対して、液圧成形を用いる製造技術の開発を行っている。大幅なコスト低減と信頼性向上を期待している。本開発のためには、『成形性が優れた高品質なシームレスニオブパイプの入手』と『液圧成形技術の高度化』が必要である。これまでに、米国ATI Wah Chang社製とアルバック社製のシームレスパイプを使って、1セル空洞の製造を行った。今回、米国ATI Wah Chang社製のシームレスニオブパイプ(外径130 mm×長さ800 mm)を用いて、液圧成形による1.3 GHz TESLA-like 3セル空洞の製造に成功した。たて測定の結果、最大加速勾配は32 MV/mに達した。成形後の内面は肌荒れしたので、前回の1セル空洞の際にはバレル研磨を行い平滑化した。今回は、工程をより簡単化するためにバレル研磨を行わず、電解研磨のみを行った。たて測定は非常に粗い内面のまま実施した。非常に興味深く、驚きの結果を得た。
超伝導加速空洞のセル部の製造には、ニオブインゴットを鍛造・圧延して結晶粒を微細化した板材(Fine Grainと呼んでいる)を用いるのが一般的である。これに対して、円柱状のニオブインゴットを2~3 mmの厚さに切断して板材として用いる方法がある。電子ビーム溶解で製造されたインゴットの中央部は150 mm角程度の巨大結晶となり、周辺部は10~50 mm程度の結晶が見られる。これをLarge Grainと呼んでいる。切断には、半導体用シリコンを切断するのと同じく、マルチワイヤーソーにて一気に複数毎の切断を行う。ニオブは活性であり、鍛造時に1000℃近くまで加熱するため表面が酸化する。これを圧延前に除去するため歩留まりが悪い。Large Grain材は低コストの特徴がある。また、空洞の表面抵抗の低減に有効という報告もある。さらに本研究では、低RRRの安価なインゴットを採用して、更なるコストダウンの可能性を探求した。KEK/CFFにおいて、上記の材料を用いて1.3 GHz TESLA-like 1セル空洞を製造した。たて測定の結果、最大加速勾配は31 MV/mに達した。高RRRのLG材、FG材を用いた同形状の空洞も製造して、性能比較を行った。LG材は異方性があり、製造しにくい問題点もある。また、今回の低RRR材では、ILC仕様には到達していない。総合的に評価した結果について報告する。
ILC計画実現に向けたKEKにおける超伝導加速空洞の製造技術研究
KEKでは従来、機械工学センターにて超伝導加速空洞の試作を行っていたが、ILC計画に向けて製造技術研究を加速するために、空洞製造技術開発施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)を整備し、2011年7月に竣工した。ここには大型のEBW機,プレス機,化学処理室などが整備されている.これらは19 m×14 mのクラス100,000のクリーンルームにコンパクトに配置されている.従来から有る機械工学センターの工作機械と合わせれば,空洞をKEK所内で全て製造することができる.これらの設備を用いて、大量生産に向けた効率的な生産技術と空洞の性能を維持しながらコスト低減を図ることを主眼として研究を行っている。これまでに3台の1.3 GHz TESLA-like 9セル空洞と5種類の研究用1又は3セル空洞を製造し、空洞製造の経験を蓄えている。9セル空洞のKEK-1号機は最大加速勾配36 MV/mに達し、ILC仕様を満たした。製造に必要な治具等も自前で開発している。これまでの取り組みについて紹介する。さらに、いくつかの産学協同研究を行っている。新たに超伝導加速空洞用の高純度ニオブ材の製造を実現した例と塑性加工を高度化して、空洞部品の製造に適用した例についても紹介する。
Large Grainニオブを用いた9セル超伝導加速空洞の製造と評価
超伝導加速空洞の開発に於いて、空洞表面の発熱を抑えることは一つの重要な課題である。特に無変調連続波を扱う空洞では、空洞表面での発熱が冷凍機システムに与える負荷が大きいため、これを抑えることが冷凍機システムの規模及び運転コストの軽減につながる。この空洞表面での発熱を抑える手段の一つとして、空洞の素材にLarge Grain(LG)材と呼ばれる大きな結晶を持ったニオブ材を用いる方法がある。LG材を用いることによって高いQ0値が得られ、結果として空洞表面での発熱を抑えることが出来ると期待されている。 KEKの空洞製造技術開発施設では2013年にLG材を用いた1セル空洞をニオブの板材をプレスする工程から電子ビーム溶接まですべてを施設内のみで行い完成させた。その後の縦測定では高いQ0値を得ている。この結果を受け、2015年にはLG材を用いた9セル空洞の製造を開始し、2016年2月に完成した。その後、空洞内部の表面処理を行い、縦測定を行った結果、通常の材質を用いた9セル空洞より高いQ0値を得る事が出来た。 本研究ではこのLG材を用いた9セル空洞の製造過程及び縦測定の結果に関して発表を行う。
実験の高効率化・省力化のためにタンパク質結晶構造解析の様々なプロセスで自動化が進められている。結晶化においてはデスクトップ小型分注器から、分注だけでなく自動観察を行うような統合システムまで様々なシステムが開発されているし、結晶をループですくうロボットも開発されている。中でも放射光施設において試料を交換するロボットは、ほとんど全てのビームラインに設置されていると言っても良いくらい一般的になってきており、単に試料を交換するだけでなく、リモート実験、全自動実験の要素の一つでもある。CCD検出器の設置に伴ってX線回折実験に要する時間が短くなると、相対的に試料交換に要する時間の割合が多くなる。そこで効率的に試料を交換するために試料交換ロボットの開発が始まり、2000年代前半には利用が開始されている。世界各国で始まったハイスループットプロジェクトによって試料交換ロボットが広く利用されるようになり、また一方で高速化、大容量化のためのアップグレードが行われてきた。講演では、各放射光施設で用いられている試料交換ロボットの現状について整理し、今後進むべき方向性について議論したい。
We are developing the manufacturing method for superconducting radio frequency (SRF) cavities by using a hydroforming instead of using conventional electron beam welding. We expect higher reliability and reduced cost with hydroforming. For successful hydroforming, high-purity seamless niobium tubes with good formability as well as advancing the hydroforming technique are necessary. Using a seamless niobium tube from ATI Wah Chang, we were able to successfully hydroform a 1.3 GHz three-cell TESLA-like cavity and obtained an Eacc of 32 MV/m. A barrel polishing process was omitted after the hydroforming. The vertical test was carried out with very rough inside surface. We got amazing and interesting result.
The construction of new facility for the fabrication of superconducting radio frequency (SRF) cavity at KEK was completed in 2011. It is a class 10000 clean room equipped with the following machines; an electron-beam welding (EBW) machine, a servo press forming machine and a CNC vertical lathe. A chemical etching apparatus is also equipped. The study on the fabrication of 9-cell cavity for the International Linear Collier (ILC) has been started from 2009 using this facility. The study is focusing on the development efficient manufacturing technique for cavity mass-production and the cost reduction with keeping high performance of cavity. Now, all processes of producing niobium SRF cavities, from fabrication to evaluation, can be conducted on the KEK site. Until now, three 9-cell TESLA-like cavities and five kinds of single or three cell cavities for R&D works were fabricated in CFF. We gain enough experiences in the production of SRF cavities. The acceleration gradient of the 9-cell cavity named KEK-1 attained 36 MV/m to satisfy the ILC specification. We developed some jigs and devices for manufacturing by ourselves.
For CW operation of superconducting cavity, reduction of heat load at cavity surface is one of important topics, since generated heat load is much higher than that of pulse wave. Using Large Grain (LG) Nb for superconducting cavity has possibility to reach higher Q0 than using Fine Grain Nb, which reduces heat load to 2K Helium. KEK Cavity Fabrication Facility(CFF) group had successfully produced superconducting 1-cell cavity made of LG Nb in 2013, and reached high Q0 at the vertical test (maximum field of 45 MV/m). Then,KEK CFF group started producing first superconducting 9-cell LG cavity in 2015, which will be completed in the end of December 2015. Whole processes of producing this cavity from sliced Nb are done in KEK. In this report, process flow and strategies of producing 9-cell cavity and results of vertical test will be presented in detail.
我々は,形状基準を不要とすることから長尺対象物の高精度な形状評価に有効と考えられる,角度検出器を用いる形状評価法において,傾斜計では検出できない水平面内を含むあらゆる方位角が検出可能な,ジャイロを用いた方法について検討している.ここでは,角度検出方向と直交方向に回転するジャイロから得られる角度信号をもとに,地球自転軸を基準としてジャイロ回転軸の方位角を求める方法について,検討を行った.
フォトンファクトリーの構造生物ビームラインに設置されている試料交換ロボットの現状について述べる。BL-1Aは、ヘリウムチャンバーに対応した新試料交換システムPAM-HCを開発し、2014年からユーザー運転に供している。2015年夏にキャリブレーション法を見直し、安定運転を実現した。BL-17Aでは、ビームラインの大改造に伴い、試料交換システムの配置の検討と改造を行った。Cabin01には、ビームタイム前の準備に使用できるオフラインの試料交換システムを準備した。全システムに共通した点は、トング乾燥時間短縮のための新たな乾燥システムの開発を進めている。
タンパク質結晶を効率よく生成するための手法として,「すぐ見る法」がある.「すぐ見る法」は,結晶化直後のドロップを観察するスクリーニング手法である.タンパク質溶液と結晶化試薬の混合時,下図のようにドロップ中に一旦沈殿が生じ,結晶化試薬の拡散に従い沈殿が減少していく現象が見られる事があるため、これを観察することで結晶化の可能性を推測し,効率良くスクリーニングを進めることができる.現状は人間が沈殿の発生・変化を観察し,結晶化可能性を判定しているが,この判定を機械的に可能にすれば,専門家を要しない自動判定や,溶液作成及び判定の並列化による高速化が可能になる.そこで,機械的な結晶化期待値判定によるスクリーニングを目指す.このためには,沈殿が生じてから消えていく過程の沈殿量の数値化が要求される.そこで,時間差のある3枚の画像の差分から沈殿を検出する手法を提案し,溶液混合時の映像から沈殿部分を抽出できることを示した.
試料交換ロボットPAMでは力覚センサを用いて液体窒素デュワー内のキャリブレーションを自動で行っていたが、PAM-HCには力覚センサがないため、キャリブレーションは手動で行っていた。そのため担当者によってキャリブレーション結果が大きく異なり、ピンが掴めないなど動作が不安定であった。そこで、Z方向に変位センサを取り付けることで、Z方向の接触の検出ができるようにし、キャリブレーションの半自動化を行えるようにした。これにより、液体窒素内の試料の位置を0.25mm以下の繰り返し精度で求めることができるようになった。さらに、キャリブレーション専用のピンを開発し、0.1mm以下の繰り返し精度を実現した。
タンパク質結晶解析の高速化の画像処理手法を開発する.タンパク質の結晶解析を効率的に進めるためには,結晶化条件の高速な探索が必要である.複数条件の溶液から,結晶ができるかどうかをスクリーニングする必要がある.溶液の沈殿状態の変化から自動スクリーニングをおこなう画像処理手法の開発をおこなう.本報では差分を用いた沈殿の検出を行った.
The authors are developing the manufacturing method for super conducting radio frequency (SRF) cavities by using a hydroforming instead of an electron beam welding, which is the major manufacturing method. We expect a cost reduction by hiring the hydroforming. To realize this development, getting a high-purity seamless niobium tube with good forming ability and an advancement of hydroforming technique are necessary. We got the seamless niobium tube made by ATI Wah Chang with the cooperation of Fermilab, and succeeded to manufacture the 1-cell cavity by hydroforming. The accelerating gradient attained to 36 MV/m, and we confirmed it was available to use as the SRF cavity.
我々は,長尺対象物の高精度な形状評価の実現を目指して,水平面内を含むあらゆる方位角の検出が可能な,ジャイロを用いた方法を検討している.これまでに,ジャイロを用いた角度検出において最大の誤差要因になると考えられる, ジャイロの角速度(レート)オフセットを,連続的な反転測定により除去する方法を考案し,その有効性を示した.ここでは,回転機構を用いた連続的な反転測定時に得られるジャイロ角度信号の妥当性について,地球自転の角速度を用いて検証した.
大学共同利用機関法人の業務の一つに,施設及び設備等を同一の研究に従事するものの利用に供することが定められている.高エネルギー加速器研究機構では自ら研究を行う一方で,大学,研究所が個別に持つことが難しい巨大な加速器を用いた実験装置を研究者に提供するというミッションを有している.本発表では,蛋白質X線結晶構造解析ビームラインにおいて開発した結晶交換システムについて,「使える」実験装置にするまでの社会実装プロセスについて述べる.
The Structural Biology Research Center at the Photon Factory (PF) has developed sample exchange robots PAM (PF Automated Mounter) to achieve fully automated data collection in high-throughput X-ray experiments and/or remote experiments. The PAM was based on the robots SAM developed by SSRL macromolecular crystallography group, but the PAM has double tongs for rapid sample exchanging. The PAM has been installed at the PF macromolecular crystallography beamlines BL-5A, BL-17A, AR-NW12A and AR-NE3A. A beamline BL-1A was built for low energy experiments and operated since 2010. We have firstly installed the PAM modified to fit the BL-1A. For effective lower energy experiments, we covered whole diffractometer with a helium chamber recently. In parallel with development of the helium chamber, we developed a new sample exchange robot in order to minimize a leak of helium gas, named PAM-HC (PAM for Helium Chamber). Cryo-pins are grasped by a collet chuck that is placed on a tip of a slim robot arm. The PAM-HC can access a sample rotation axis of the diffractometer in the helium chamber through a tunnel in a side of the chamber. In addition, we are now developing an offline sample storing system based on PAM, which can automatically store the flash-cooled samples into the cassettes. Current status of the PAM and the PAM-HC will be presented.
シームレスニオブパイプを用いた液圧成形による超伝導加速空洞の製造
超伝導加速空洞について、現在主流である電子ビーム溶接を用いる製造方法に対して、大幅なコスト低減が期待される液圧成形を用いる製造技術の開発を行っている。 本開発のためには,『成形性が優れた高品質なシームレスニオブパイプの入手』と『液圧成形技術の高度化』が必要である.Fermilabの協力により,米国ATI Wah Chang社製のシームレスニオブパイプを入手し,液圧成形による1セル空洞の製造に成功した.たて測定の結果,最大加速勾配は36 MV/mに達し,加速空洞として使用できることを確認した.空洞の赤道部(大径部)は,約φ210ミリである.一方,アイリス部(小径部)は,φ70ミリである.φ70ミリのパイプをφ210ミリまで膨らませるには,200%程度の伸びが必要である.ニオブの伸びは50~60%であるため,これは困難である.そこで,φ130ミリのパイプを用いて,まずくびれ加工(Necking)でアイリス部を成形し,次に液圧成形(Hydroforming)で赤道部を成形した.液圧成形は,2段階にて実施し,中間に焼きならしを入れて,伸びの回復を図った.くびれ加工機,液圧成形機はKEK機械工学センターにて開発した.成形後の内面は肌荒れしたので,バレル研磨を行い平滑化した(FNALで実施).
異なる材質と工法で製造された超伝導加速空洞の性能評価
高エネルギー加速器研究機構において現在行っている、試験空洞の製作とその評価の取り組みについて報告する。Nb材を用いた超電導加速空洞の製作においては、純度の目安となる残留抵抗比が高く(>250)、細粒と呼ばれる小さい結晶粒(50~150um)を持つNb材を、電子ビーム溶接機を用いた溶接によって組み上げる手法が一般的である。KEKでは、空洞製作用に導入された電子ビーム溶接機と、機械工学センターが所有する他の工作機器を用いる事によって、上述の方法に則ったTESLA-like型9-cell空洞の製作に成功しているが、空洞開発技術の更なる高度化を目指して、用いるNbの材質や、作製方法の異なる5種類の試験空洞について、縦測定による性能評価までを含めた開発研究を行っている。現在開発と評価を進めている空洞を具体的に挙げると、電子ビーム溶接によるセルの整形に頼らず、液圧整形法によって形状を製作する空洞と、電子ビーム溶接法を用いるが、主にNb材の特徴の比較に主眼を置いた4種類の空洞に大別される。4本の空洞のそれぞれの目的としては、高RRRであり且つ大粒(~10cm)のNb材を使った空洞製作、供給元が異なる細粒・高RRR材を使った比較、大粒ではあるがRRRの値が低い(~100)Nb材を使った空洞製作となっている。これらの空洞作製についての詳細を、これまでに得られた縦測定からの結果を交えて報告する。
Straightness evaluations by detecting tangential angles of the straightness are considered to be advantageous for evaluating large objects. Among them, a method using a gyro can be applied in a horizontal plane and has no limitation for its evaluation distance. However, even the most stable gyro has considerable fluctuation called a gyro rate offset in its angular signal and it becomes a dominant error source. We had demonstrated that the gyro rate offset can be eliminated by periodical reversal measurement by using a conventional fiber optic gyro (FOG) unit. Here, we adopted a rotating mechanism with a rotating rate up to several revolutions per second for performing faster reversal measurement in order to eliminate faster fluctuations in the gyro rate offset. Analysis and experiment show that the gyro rate offset can be derived and eliminated together with an alignment error of the gyro direction. Finally, we derive an angular signal to be detected for our straightness evaluation with a reasonable signal waveform.
我々は,長尺対象物の高精度な形状評価の実現を目指して,水平面内を含むあらゆ る方位角の検出が可能な,ジャイロを用いた方法を検討している.ここでは,ジャ イロの角度オフセット,レート(角速度)オフセット,設置角のずれの影響を受けな い,回転機構を用いた反転測定に基づく評価方法を考案した. さらに,地球自転の影響を補正した上で,角度検出を行った.
KEK構造生物学研究センターでは,BL-1A,5A,17A,AR-NW12AおよびNE3Aの5本の構造生物学ビームラインの運用を行っており、試料交換の時間短縮,遠隔操作,全自動実験のために,全てのビームラインに試料交換システムPAMを設置した.BL-1Aにおいては低エネルギーX線結晶構造解析を安定に行うために,試料周辺から検出器までをヘリウム雰囲気にするためのチャンバーを設置することになり,ヘリウムチャンバーに対応した試料交換システムPAM-HCの開発を行った.本発表では,PAM-HCの概要,2014年10~12月のビームタイムでの使用実績,今後の開発予定について述べる.
高エネ機構・構造生物学研究センターでは、5本のタンパク質結晶構造解析ビームラインの運用を行っており、全てのビームラインに試料交換ロボットを設置している。運用当初は同じ形式のロボットを設置していたが、ビームライン毎に特色を持たせる運用方針に従って、試料交換ロボットも変更を行っている。AR-NE3Aでは、大規模な全自動実験を行うために液体窒素デュワーを大型化し、一度にセットできる試料の数を288個から576個に倍増させている。BL-1Aでは、低エネルギー実験を安定に行うためのヘリウムチャンバーを設置したため、従来のロボットが使用できなくなった。そこで、ヘリウムガスの消費を抑えるために、ヘリウムチャンバー側面のバルブ付きの穴から試料を出し入れできるロボットを開発し、設置した。本発表では、特に上記のビームラインを中心に、試料交換ロボットの現状を述べる。
我々は,長尺対象物の高精度な形状評価の実現を目指して,水平面内を含むあらゆる方位角の検出が可能な,ジャイロを用いる方法について検討を行っている.ここでは,連続回転するジャイロから得られる角度信号をもとに,ジャイロドリフトの原因となるジャイロレートオフセットを除去する方法について,モデルを用いた解析と実験的な検証を行った.
高エネルギー加速器研究機構・構造生物学研究センターでは,蛋白質X線結晶構造解析のための構造生物学ビームラインにおいて,実験の効率化のために結晶を自動的に交換する試料交換システムの開発・運用を行っている.低エネルギーX線回折実験のためにヘリウムチャンバーを設置し,それに対応した新たな試料交換システムの開発とテスト実験を行った.本発表では,構造生物学ビームラインおよび試料交換システムの概要説明とテスト実験結果について述べる.
Straightness evaluation using 3-point method has an advantage for evaluating large objects being not affected by straightness references; however, error introduced by each measurement and propagating to the derived straightness should also be taken into account for evaluating large objects. In this paper, errors propagated to the straightness derived by 3-point method were estimated analytically based on error propagating models and the estimated errors were evaluated by experiments. The results show that each longitudinal positioning error for the straightness detector should be considered for evaluating large object as well as error in each measurement. The error estimation which considers the positioning error shows existence of optimum sampling interval which minimizes error in the derived straightness. Then the estimated optimum sampling interval is compared with experiment. Finally, error for the straightness evaluation with the evaluation distance of 1 km was estimated and its optimum sampling interval was also derived.
We are now developing inner shape measurement system for superconducting accelerator cavities. An acceleration cavity is shaped like bellows which have some cells. Inner shape of a cavity influences accelerating efficiency of particles. To improve and inspect accelerator cavities, we are now developing a system which can measure inner 3D shape. This system scan inner surface by inserting and rotating a laser displacement sensor unit attached to the end of the pole. This system is simple and useful not only for an accelerator cavity but also for a long pipe and a deep hole on an industrial part. We proposed calibration method for such a system. We simulated and analyzed the proposed calibration method and shows availability of cylindrical artifact calibration method.
cERL周回部電磁石のアライメント
エネルギー回収型Linac(ERL)は,従来の蓄積リング型光源では到達不可能な,超高輝度,短パルスの放射光源を実現するものと期待されている.コンパクトERL(cERL)は,ERLに必要とされる加速器技術の確立と,低エミッタンスかつ大電流の電子ビームの生成,加速,ビーム周回の実証のための試験施設として建設され,運転されている. cERL周回部の建設では,周長約90mのビームラインを,既設のビームラインに精度良く接続する必要があった.ここでは,主にレーザトラッカT3とティルティングレベルN3を用いて,加速器室壁面上に設置した測量基準座に対して,±0.1mmの位置精度と,±0.1mradの方位精度で,周回部ビームラインの骨格となる電磁石を設置した.これらの電磁石は限られた工期に集中する他工程との干渉を避けながら,それらに先立って設置完了する必要があった.ここではある程度の変動を許容した上で,その設置当初に電磁石を精密アライメントすることで全体の工期を短縮した. 最終測量により,設置した電磁石では,±0.5mm程度の位置精度,±0.2mrad程度の水平精度,1mrad未満の水平面内方位精度が得られていることが確認された.ずれ量の拡大は,電磁石割戻し時の再現性のずれ,ベーキング時の熱による変動などによると考えられるが,これまでのcERLの運転において,これらによる問題は発生していない.
共振器用鏡の形状制御実験
加速器を用いたX線やγ線の生成に使われる光共振器には、非常に高価な鏡が用いられるが、これらの鏡に対しては高反射率である事と共にその形状に関しても厳しい制限が課せられる。一般的な作成方法は、合成石英基板を研磨加工により仕様の曲率半径を持たせる為の整形を行い、その後誘電体多層膜を蒸着する為に、一度仕上がった鏡の形状は修正が出来ない。つまり光共振器の構成は、最終的には用いる鏡の仕上がり形状に合わせて修正されなければならない事になる。この状況に対し、光共振器の構成をより簡単化し、且つ高い共振器性能を引き出し易くする為の工夫として、用いる全ての鏡を単純な平面鏡から機械的な曲げ加工を用いて作成する事を目的とした開発を行っている。これまでに円筒型鏡及び球状凹面鏡の作成を行っており、円筒鏡は実際に加速器実験にも適用しX線の生成に成功している。この手法を更に発展させて、光共振器にレーザーを蓄積した状態から鏡の曲率半径を外部電子制御によって調整する為の方法やより複雑な表面形状を持つトロイダルミラーの作成を行うために準備実験を続けている。今回の発表ではこれまでの成果をポスターによって報告する。
We aim to realize straightness evaluation based on angle detection without being affected by gravity using a gyro for large objects. Here, we investigate for eliminating drift of the gyro, which is considered to be the major error factor of gyros, based on reversal measurement. We used a fiber optical gyro (FOG) unit, which has fairly high performance (3 deg/h-rms of drift) and is relatively small (size, 65 × 130 × 85 mm3; mass, < 1.5 kg). The drift of the gyro was estimated to be several mrad/h from the angle signal stability of the gyro. It shows that angle detection with the resolution better than 10 μrad can be realized by continual reversal measurement with the time interval around 1 s. We performed reversal measurements with the time interval of 60 s and derived the effect of the globe rotation and the gyro rate offset. As a result, the angle of the object was derived with the standard deviation of 0.4 mrad for the 1 h of repetition measurements. It shows that the reversal measurement was fairly effective in reducing the effect of the gyro drift.
We evaluated a slidejack tuner adopted as compact ERL Main Linac tuner. The frequency of cavity is disturbed by not only its Lorenz detuning but also michrophinics come from the outerditurbance. KEK tuner compensates the frequency by extending a cavity. Tuning is driven by two system, piezo and slidejack system. Slide-jack mechanism with long stroke drives coarsely piezo adjust precisely and fast. We tested performance of the tuners on operation.
光共振器内に蓄積されたレーザー光と加速器から供給される電子線を使ったX線生成実験が広く行われているが、光共振器の安定性の向上や生成X線の収量向上に向けた種々の改良が試みられている。我々は特に鏡形状に着目し、従来の研磨で成形された凹面鏡の代わりに、平面鏡から任意の曲率半径の凹面を作成し光共振器に応用する事を目指して基礎開発研究を行っている。この講演ではこれまでの開発の経緯と今後の展望を述べる。
我々は,長尺対象物の高精度な形状評価の実現を目指して,水平面内を含むあらゆる方向の方位角が検出可能なジャイロを用いた検討を行っている.高精度な光方式のジャイロでは,ドリフトが最大の誤差要因になるものと見込まれるが,前報までに反転測定により除去,緩和する方法を考案し,効果を見積もった.ここでは,比較的小型かつ高精度な光ファイバジャイロのドリフト特性を評価し,反転測定によるドリフト低減効果を検証した.
KEK構造生物学研究センターでは、試料交換システムPAMの開発を行い運用を行っている。特に創薬研究に最適化されたビームラインAR-NE3Aでは、前もって決めておいた実験条件に基づいた全自動データ測定が頻繁に行われている。そこで液体窒素デュワー内に設置できるカセットの数を3個から6個に増やすことでより効率的に実験が行えるようにPAMの改良を行った。また液体窒素デュワー内のカセットの台も改良を行いキャリブレーションの簡略化につながっている。
KEKでは、既存の蓄積リング型光源では到達不可能な超高輝度・短パルス光源を実現するための次世代の放射光源として、エネルギー回収型線形加速器(ERL)の建設が計画されている。コンパクトERL(cERL)は、ERLの建設に必要とされる加速器技術の確立と、低エミッタンスかつ大電流の電子ビームの生成、加速、ビーム周回の実証のための試験施設として建設され、現在ビーム周回、および、エネルギー回収運転実験に向け、コミッショニングが行われている。2013年7月から11月にかけて行われたcERL周回部の建設では、それに先駆けて建設・運転された入射ビームラインと主空洞に、新たに建設される周長約90 mの周回部ビームラインを精度良く接続し、設計通りの高品質な加速電子ビームを得るために、ビームラインを構成する電磁石を、既存の機器と設計値に対して精度良く据付ける必要があった。ここでは、主としてレーザトラッカと呼ばれる光学式の精密測距測角器T3(API; 測定範囲半径,20 m; 3次元位置精度, 5 ppm)と、ティルティングレベルN3(Wild; 1 km往復差,±0.2 mm)を用いて、電磁石に取り付けた測量基準座の位置と方位を、加速器室内壁面の約40カ所に設置した測量基準座に対して、±0.1 mm、±0.1 mrad以内とすることを目標として、79台の電磁石とそれらを搭載する49台の架台の精密設置を行った。今回の建設において電磁石設置に許された工期は短期間かつ限定的であったため、電磁石設置当初に精密設置を済ませ、その後にビームパイプのインストールのための電磁石の半割り、戻し作業と、ビームパイプのベーキング作業を行うといった、変則的な工程を採用した。それにもかかわらず、電磁石のアライメント評価のために最終的に行われた測量では、±0.5 mm以下の位置精度と、±0.2 mrad未満の方位精度が得られていることが示され、これまでのコミッショニングにおいても、電磁石のミスアライメントによる問題は発生していない。本報告では、cERL周回部電磁石の精密設置とそれらのアライメント評価結果について述べる。
KEK構造生物学研究センターでは、結晶交換システムPAMの開発を行い、BL-1A、BL-5A、BL-17A、AR-NW12A、AR-NE3Aの5本のビームラインで運用を行っている。PAMの液体窒素デュワーには、最大3個のカセットを設置できるようになっているが、過去の使用履歴によると1回のビームタイムで最大7個のカセットが使われていることが分かった。そこで、液体窒素デュワーを大型化し一度に設置できるカセットの数を増やすための開発を行った。
The construction of new facility for the fabrication of superconducting RF cavity at KEK was completed in 2011. It is equipped with the following machines; an electron-beam welding (EBW) machine, a servo press machine and a CNC vertical lathe. A chemical etching apparatus is also equipped. The study on the fabrication of 9-cell cavity for International Linear Collier (ILC) has been started from 2009 using this facility. The study is focusing on the cost reduction with keeping high performance of cavity, and the goal is the establishment of mass-production procedure for ILC.
我々はこれまでに,傾斜計を用いた形状評価法を直線型粒子加速器の最長206 mのアライメント評価に適用することで,角度検出に基づく形状評価法が長尺対象物の高精度な形状評価に対して有効であることを示した.ここではさらに,当該手法を水平面内の形状評価に拡張し適用するため,角度検出にジャイロを用いた形状評価方法の実現を目指して,ジャイロにおける最大の誤差要因と考えられるドリフトの除去に関する基礎的な検討を行った.
測定網を用いたアライメント評価における誤差見積り
加速器のアライメント評価では、その取扱いの容易さからレーザトラッカなどの光学式測量機が広く用いられている。これらの測量機の中には数100 mの測定可能範囲を持つものもあるが、実際の加速器のアライメント評価では、空気揺らぎや反射ターゲットの取扱いの問題、さらに、加速器の形状や障害物などにより、評価可能な範囲が数10 m程度に制限されることが多い。そのため、100 mを超える規模の大型加速器のアライメント評価では、部分的に重なり合う数10 m程度の複数の領域からなる測量網を作り、共通する領域の測量値をもとに、得られた測量結果をつなぎ合わせるような手法が用いられている。我々は、このような手法において、部分的に重なり合う複数の測量結果をつなぎ合わせる操作が、複数の形状をつなぎ合わせることで、より大きな形状評価を可能とするスティッチングによる形状連結に相当するものと考え、スティッチングにおける誤差伝播モデルを適用することで、アライメント評価における誤差を解析的に見積もった。ここでは、分割された一回の測量範囲、測量点間隔、重なり部分の割合をパラメータとして、測定長に比例する誤差成分や環閉差の振り分けを考慮することで、より高精度な誤差見積もりの実現を目指した。
ERL Main Linac 実機用チューナの低温特性試験
現在,ERL(3GeVクラス)の要素技術・測定技術を獲得するため,compact ERL( 35~200MeV)の開発が進められている.その一環として,我々は1.3GHz超伝導空洞からなるcompact ERL Main Linac のクライオモジュール製作に向けてR&Dを進めている.本報ではその構成部品の一つであるKEKスライドジャッキチューナの低温特性試験をおこなった.本チューナはスライドジャッキによるメカニカルな粗動とピエゾによる微動により周波数チューニングする機構を持つ.特性試験用のモデルチューナを用いて,駆動に関して基本的な要求仕様を満たしている事と いくつかの改善点を確認した.これらの結果を元に,実機用チューナではcompact ERLでの使用に適応した装置改善をおこなった.実機用チューナの基本特性試験及びモジュールに組み付けての低温実験をおこない,目標周波数1.3GHzにチューニング可能であることを確認した.
超伝導加速空洞ダンベルの非接触形状測定
現在,KEKはCFF(Cavity Fabrication Facility,空洞製造技術開発施設)において,性能を高めつつより製造コストを抑えた9セル超伝導加速空洞の製造方法に関する研究開発を進めている.その一環として,超伝導加速管のハーフセルやダンベルといった部品の三次元形状の非接触測定装置の開発を進めている. 加速管の性能を保証する上で,その形状の測定は重要な課題となる.現在,加速空洞の作製の工程において形状測定が必要な箇所は多い.ハーフセルのプレス時のデザイン形状との誤差測定,ダンベル作成時にアイリス溶接による歪み量測定,それを伸ばして形状を戻す時のモニタ等の測定が必要となる.現在この作業には三次元測定機(CMM)を使用しているが,CMMには,装置が大型である,測定時間がかかる,専門の人間が必要,測定痕がついてしまう等の問題点がある.そこで,ラインレーザを使用して三次元形状を非接触で高速測定する装置を開発して,0.1mmの精度で化学研磨されたダンベル形状を測定することに成功した.
量子ビーム基盤技術開発プログラムにおけるSTF加速器でのX線生成実験報告
量子ビーム基盤技術開発プログラムに基づく「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」として昨年度までKEK-STFにおいて行われたX線生成実験結果を報告する。この開発プログラムでは、KEK-STF棟内に建設された、L-band 9-cell の超伝導加速空洞を含む直線型電子加速器で40MeVにまで加速された電子ビームと、laser 蓄積装置内で高強度化されたlaser pulseとを正面衝突させる事により、数十keV程度の軟X線を毎秒1010個(10% Bandwidth)程度生成する事を目標とした実験である。加速器としては、近い将来に建設が始まる事が期待されるILCにおいて用いられる超伝導空洞をDRFSドライブ方式により電子ビーム加速に成功(40MeV / 1ms bunch length / 5Hz operation)し、日本におけるILC実現に必要とされる加速器建設技術の実証がなされた。又、逆Compton散乱を介したX線生成に必要となる衝突用レーザーに対しても、これまで用いられてきた2枚鏡の光共振器に替えて、平面状に4枚の鏡を配置した共振器形状を採用した結果として、生成される線量を増加させるべく電子線との衝突角度を0度にした正面衝突を実現させる事が出来た。これらのレーザー蓄積技術も、ILCにおけるオプションである光子・光子衝突器への応用に役立つものと期待されている。この発表ではSTF加速器を使った衝突実験で得られた結果を、加速器設備とレーザー蓄積装置の開発・運転の状況と併せて報告する予定である。