肥山詠美子氏が第33回「猿橋賞」を受賞


最終更新日: 2013年 6月 17日

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猿橋賞授賞式。賞状を手に微笑む肥山詠美子・理化学研究所准主任研究員(右)。左は、一般社団法人女性科学者に明るい未来をの会・米沢富美子会長。

大型シミュレーション研究のユーザである肥山詠美子(ひやま・えみこ)理化学研究所 仁科加速器研究センター 准主任研究員が第33回猿橋賞を受賞し、5月25日に都内の東海大学校友会館にて賞贈呈式と記念講演が行われました。猿橋賞は「女性科学者に明るい未来をの会」が自然科学の諸分野で優れた業績を収めた50歳未満の女性科学者に贈る学術賞で、1981年の創設以来毎年1名が受賞しており、肥山氏で33人目になります。受賞研究題目は「量子少数多体系※1の精密計算法の確立とその展開」です。

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記念講演座長をつとめた田村裕和(たむら・ひろかず)東北大学大学院理学研究科教授は「肥山さんは九州大学の大学院生の時から優秀で活発で原子核の研究者の間では非常に有名でした。修士課程で(受賞研究となる)量子少数多体系の精密計算法を開発し、ハイパー核※2の計算に応用していました。ある日、『私の計算では、リチウムの原子核にラムダ粒子※3を入れると原子核の大きさが20%縮みます。ぜひ実験で測ってください』とお願いされました。それはとても難しい実験で、すでにある実験の計画書を(実験が行われる)KEKに提出した後だったのですが、肥山さんの熱意に押され、計画書のテーマを変更して申請しなおし、実験に臨みました。その結果、本当に20%縮んでいました。これはすごい計算だと実感しました」と、肥山さんの学生時代を振り返り、「肥山さんの計算は画期的でしたが、人を引っ張っていく力も大変なものです。いつの間にか周りは肥山さんに乗せられています。肥山さんは原子核研究の流れを作っていっています」と、肥山さんの人となりを語りました。

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記念講演で肥山氏は「原子核、ハイパー核、超冷却原子などに私たちの計算方法を適応し、その結果から中心となる計算方法をさらに発展させてきました。これらの研究には、実験や理論の研究者との協力が欠かせませんでした」と、多くの研究者との研究協力により研究が展開されてきたことを述べ、今後の目標として「自分が考えたこともない、予想もしない、新しい分野を開拓していけたら非常に楽しいと思います。しかしながら、猿橋賞をいただけたのは、後進の育成を期待されていのことだと伺っております。これまでは私が周りの人を巻き込んで研究を進めてきましたが、これからは若い研究者に新しい分野を分担してもらい、物理の発展につとめていきたいです」と決意を語りました。

※ 原子核にラムダ粒子を注入すると原子核が縮むことは、30年前に元場俊雄氏らによって、すでに指摘されており、新しいことは具体的にリチウムの原子核にラムダ粒子を入れると原子核が縮むことを提案したことである。

用語解説

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※1 量子少数多体系
2つの物体の間に働く力の強さは解析的に計算することができるが、3つ以上の物体に働く力は複雑で、厳密に解くためにはスーパーコンピュータを用いて数値的に求める。

※2 ハイパー核
ラムダ粒子のようなストレンジクォークが含まれる粒子が入った原子核。

※3 ラムダ粒子
すべての物質は素粒子と呼ばれる物質の最小単位から構成されており、原子核を構成する陽子は素粒子であるアップクォーク2個とダウンクォーク1個、中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個からなる。ラムダ粒子はアップクォーク1個、ダウンクォーク1個、ストレンジクォーク1個からできている。地球上には自然に存在しないため、加速器によって作り出し研究が進められている。

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