Seminar
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有限密度QCDにおけるランダム行列模型の応用と複素ランジュバンシュミュレーション
- PLACE Kennkyu Honkan 3F Meeting Room 322
有限密度QCDの模型としてのカイラルランダム行列(ChRM)模型に対 し、我々は二通りの応用を行った。 第一に、カイラル凝縮とダイクォーク凝縮を秩序変数としたChRM模型を構築 し、有限温度密度相構造を研究した。QCD相互作用のもつ対称性か ら、クォー ク・反クォーク、クォーク・クォーク相互作用の結合定数の比は一意に定まり、 相構造も一意に得られる。3つのクォークフレーバの質量が 同じ時には、低密度 側でカイラル対称性の敗れた相(ChSB)が、高密度側でcolor-flavor locked(CFL) 相が基底状態として得られる。また、udクォークとsクォークの間に質量の非対 称性がある(2+1フレーバ)場合には、udクォー クによるダイクォーク凝縮のみの 存在する2SC相が、ChSB相とCFL相との中間密度領域に現れる。 第二に、格子QCDシミュレーションの方法として提案されている、複素ラン ジュバン方程式を用いた方法を、ChRM模型を用いて試行した。複素 ランジュバ ンシミュレーションは、有限密度QCDにおける符号問題を回避しうる方法として 提案されているが、数学的基礎付けが不十分で、シミュ レーションが正当化で きるかどうか明らかではない。発表では、複素ランジュバンシミュレーションに 対する現状の理解をまとめてレビューし、その 後、ChRM模型の厳密解と数値解 を比較する。複素ランジュバンシミュレーションは、一部の領域で解析解を再現 できないことが発見され、その理由 を、符号問題とあわせて考察する。