Seminar
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新奇な量子ホロノミーの幾何学的背景について(in Japanese)
- PLACE Kenkyu Honkan 3F RM 322
断熱準静過程によるサイクル上を物理系が一周しても何の変化も起きないように思われます。しかし、孤立した量子系で始状態を固有状態に準備した場合、断熱サイクルは幾何学的な位相因子(ベリーの位相因子)と呼ばれる非自明な変化を状態ベクトルにもたらします。これはファイバー束のホロノミーとの対応 (Simon 1983)から(位相の)量子ホロノミーとも呼ばれます。Aharonov と Anandan (1997) はサイクルを記述する空間として射影ヒルベルト空間を用いることで、量子ホロノミーの非断熱拡張を与えました。 近年、断熱サイクルは固有エネルギーや固有空間に対しても非自明な変化をもたらすことが報告されてきました。これらを新奇な量子ホロノミーと呼びます (例えば、Yonezawa et al., PRA 87 (2013) 062113 とその引用文献参照)。ここでは、断熱サイクルが複数の固有エネルギーや固有空間達の置換を引きおこします。この現象はパラメーターを持つ量子系の解析全般、例えば、分子のボルン・オッペンハイマー近似、あるいは、固体中の電子のバンド理論と関連するように思われます。 本講演では、新奇な量子ホロノミーを示す物理系をいくつか紹介した後で、新奇な量子ホロノミーの位相幾何学的な背景について報告します。そこで現れる被覆空間の構造と断熱サイクルのホモトピーによる分類の役割を中心にお話しします。これは、幾何学的位相における Simon の定式化や Aharonov-Anandan の非断熱拡張に対応するものです (文献は AT and T. Cheon, arXiv:1409.5211)。